今年度も農場HACCP指導員研修が開催されています。
弊所でご支援した農場もこの研修に参加されており、認証取得へ向けて動いており、昔はメリットなしと言う思い込みから、人が畜産を支えているという本来の目的を思い出しこの認証制度を活用しようという意識が見られるようになったなと感じるようになりました。
農場HACCP認証があるから畜産物価格に有利に働くという、相手(供給先や消費者)が認知していない制度から価格交渉ができるという思い込みが当初見られました。
案の定そうならないわけですが、近年はHACCP認証があるからバイヤー等は法令を満たした飼養をしていると認識し、その畜産物に対し安全性の維持がなされているという信用を得るひとつの物差しとして見るようになったと感じます。
ある農場は、近隣が認証を取得したのでうちも2年かけて構築し取得したというところがあります。
当然認証されても近隣はそのことを知りません。
取引先にも「うちHACCP取ったよ」と話しますが、
そうですか、それは良いことですね。
という返事はありますが、それ以上の話へ弾むような会話にはならなかったと言います。
取引先にも「うちHACCP取ったよ」と話しますが、
そうですか、それは良いことですね。
という返事はありますが、それ以上の話へ弾むような会話にはならなかったと言います。
それから月日がたち、昨年あたりから取引先から農場の衛生管理状況を確認させてくださいという話がやってきます。
当初は珍しいな、必要な書類を毎年見せていて何も言わないのに。
と相手の思惑を探ります。
と相手の思惑を探ります。
今年は珍しいですねと言いますと、いやーたまたま近くの農場さんの書類点検があって、○○さんの農場もご挨拶を兼ねて伺いたいと思っていたのですよ。
と言います。
と言います。
それはそれはと返しましたが、なんだろうなという疑惑が大きくなります。
一通り書類点検が終わり、毎年同様「しっかりと管理をされているから、弊社は安心して畜産物をお客様にお届けできます。
本当にありがとうございます」と言う決めセリフがあり終わるのですが、今年は少し違います。
本当にありがとうございます」と言う決めセリフがあり終わるのですが、今年は少し違います。
「作業マニュアルありますか?」
「ん? 作業マニュアル?」
「はい、安全に作った畜産物には作業マニュアルはありますか? 一度拝見したいと思っていたのですよ」
なるほど、それが目的なのか。
やっと相手の思惑がわかります。
「当然守秘義務がありますから、同業に話すことはありませんから、是非見せてください」
このような文書点検から法令を満たす安全性があるのかを今年は再確認しているという相手の思惑がわかります。
その理由は最後に書きますが、このような事例が1農場ではなく、弊所がご指導している農場いくつもあります。
さて、このような場面に皆さんの農場が訪れた時、どのように返事ができるでしょうか。
多くの農場では、作業を行ったことを書く日誌は備え付けているでしょう。
ないと答える農場もあると思います。
それには理由があり、備えないことに対し指摘を受ける機会がないからという答えをされると思いますし、そもそも記入し保管する必要性がないのが本音ではないでしょうか。
ですが、日誌の保管を指摘されたり、作業内容を確認できる資料の有無を確認されたりと、だいぶ昔とは違う指摘を受けたと感じる方もいると思います。
農場によってはバイヤーが来る農場でもないという所もあると思いますので、すべてではありませんが畜産物に対して「安全性の担保」をだいぶ意識しているように思います。
その安全と言う言葉、昔から聞かれている言葉ですが、いまいちピントがずれているではありませんが、当たり前の作業をして育てるという中に自然に埋め込まれている安全を、第三者に可視化させるということに戸惑いを感じているというお話を聞きます。
その例えとして今の事例をお示ししましたが、皆さんの農場では安全と言う言葉の可視化にどのように備えているでしょうか。
皆さんの農場には、多くの従業員が大切な家畜の生産や畜産物の収穫作業に従事されていると思います。
その作業には長年にわたり繰り返されている手法があり、それにより畜産物や家畜の事故がなく毎日を繰り返し、それが安全性の確保という時間経過での信頼がありました。
ですから記録してどうのこうのという必要性がなく、長い時間がこれを証明しているというのが当たり前でした。
そうも言えない時代になります。
農場での生産活動は毎日が同じで繰り返しと言われます。
その通りに見えますが、実際は異なります。
例えば人。
その人は確かに毎日同じ作業を繰り返しているように見えますが、その人は未来永劫その農場にいるとは限りません。
その人は確かに毎日同じ作業を繰り返しているように見えますが、その人は未来永劫その農場にいるとは限りません。
この先10年、100年先まで同じ作業をしているというのが前提条件で、毎日同じ作業をしているという言葉になります。
実際畜産業での人材確保は少しづつ難しくなっているようです。
人が退職されると、補充できるものの作業性が落ちるというお話も聞きます。
理由は様々ですが、採用する人が社会経験が少ないという方、仕事の進め方がわかるまで時間を要する方等教えて仕事をお願いするまで時間がかかり、指導手の作業拘束が長くなり、結果手が回らず作業性が落ちていき、生産性等経営に直結する下降減少を止めることができず、それを補う上級職の畜種に対する理解度の不足やそのサポートも上手ではなく更に生産収益が下がっていくということも多々あり、同じ作業を繰り返すことの難しさを感じる方も多くいます。
そして、安全性の可視化という見えないからこそある意味適当で良かった事柄が、見えるように見せるという難しさがこの数年表面化し、取引が止まるということはないものの説明がしどろもどろになるという事例もあるようです。
農場HACCP認証がとても良く万人向きであるとは言いませんが、その安全と言う可視化にはとても優れている制度であると言えます。
確かに、畜産現場で必要なのかという意見はあります。
そこまで食品企業のような仕組みが馴染むのかという意見もあります。
そこまで食品企業のような仕組みが馴染むのかという意見もあります。
しかし時代が変わり、昔のように時間軸の安全性担保では消費サイドが納得しているわけではないということを知っておくと、昔は良かった、昔はうるさく無かったからこそその制度は馴染まない・間違っていると片付けるリスクがあることを今日感じていただければと思います。
冒頭お話しした作業マニュアルですが、農場HACCP認証では作成が必須の文章です。
作業分析シートとも呼ばれますが、そこには作業方法が書かれており方法がまとめられています。
作業分析シートとも呼ばれますが、そこには作業方法が書かれており方法がまとめられています。
作業方法が紙にされているということは、教える側の効率と呼ばれる作業の簡略化から自己流という時間短縮による弊害を防ぐことができます。
安全はお金という物差しで測ると、多くの場合事故を呼びます。
畜産業では、牛であれば1名で搾乳させるという作業で牛に蹴られたり、挟まれたりしてなくなるというリスクもありますし、滑りやすい床面に足をとられて転倒し流血することもあるでしょう。
ではなぜ1名でなければならないのかと言えば、人がいない、分担作業した方が効率化できている等お金の物差しで測り実行しているわけです。
製品に影響がないと言われますが、今の時代製品に影響があること自体がその農場の信用がないと言うことであり当たり前です。
大事なのは、安全な畜産物を作るのに安全な方法が確立化されているのかというその先のことを言っています。
行き当たりばったりで安全性が担保できるとは見ていないのです。
行き当たりばったりで安全性が担保できるとは見ていないのです。
自己流で行っているとマニュアルに書いて見せてもいいでしょう。
でも第三者はそれを見て、マニュアルありますね。
十分ですと言うでしょうか。
十分ですと言うでしょうか。
だって、その時その時に方法が変わり作業方法は統一していないと言っているようなものです。
時間軸では事故は発生していないと説明しているだけです。
昔はそれでよかったのですが、継続してこの先もできるのかということを供給先は知りたいのです。
でも方法はないしその場で決定すればよい「臨機応変」であれば良いでは無責任のように理解します。
供給側はリスクがない原料を仕入れたいのです。
そのためにはそれを裏付けるデータや方法論を確認したいわけです。
そのためにはそれを裏付けるデータや方法論を確認したいわけです。
農場HACCPであれば、作業分析シートが作業マニュアルになり説明できます。
そして作業方法には危害要因を洗い出し防ぐ方法を確立させ、作業方法の安全性に客観的な評価をさせています。
そして作業方法には危害要因を洗い出し防ぐ方法を確立させ、作業方法の安全性に客観的な評価をさせています。
もちろんこれで100%安全な畜産物とは言いませんが、作業方法がありその作業にはリスク評価がされていて出来るだけのリスクを排除しているということを第三者が知れば、何もないよ臨機応変でやっていると言われるより説得力があり、納得してくれます。
時間軸の安全性評価は長い時代それで良かった方法でした。
でも時に間違いを起こすことも知っています。
鶏卵の腐敗卵は、農場段階で1個残らず鶏舎から回収できれば時間経過による腐敗が進むことはありません。
ですが不可能です。
午後まで鶏卵が生まれているのに午前から午後の早い段階で集卵が終われば鶏舎に残ります。
大抵は翌朝回収されるわけですが、問題は自動集卵である時代1個も残らず回収できるのかというお金と言う物差しで見ていることである日被害が生まれます。
午後まで鶏卵が生まれているのに午前から午後の早い段階で集卵が終われば鶏舎に残ります。
大抵は翌朝回収されるわけですが、問題は自動集卵である時代1個も残らず回収できるのかというお金と言う物差しで見ていることである日被害が生まれます。
バタリーゲージは経年劣化したり作業時破損させることが多くあるはずです。
そうなる場合通常は自動集卵でエッグベルトから集卵場へ移動していく鶏卵は勾配が生まれ移動できない、鶏卵が途中で引っ掛かり長い時間滞留したりと予期せぬ事態が生まれます。
大抵は農場現場の自己判断で回収や修繕をしていきますが、事故が生まれる場合その滞留させていることがリスクと言う認識はありません。
それは、鶏卵の外見では見た目による劣化が判断できないからです。
確かに良く見ると、殻がくすんでいる(エッグベルトが擦れてくすむ、鶏糞の汚れが多い鶏卵等)など見た目で判断できる人もいますが、それは養鶏を長く見ている人しかわからないはずです。
そうして、夏季の暑さから腐敗が進みパッキングされ流通されていき、消費者が割卵すると黄身が黒いという典型的な腐敗卵流通が発生します。
最近は見なくなった事例ですが、でも数年前にこのような事例で納め先店舗から流通停止処分を受けるところもあります。
農場HACCPを構築する際、特に採卵鶏や乳用牛はこのように外見から異常である製品を目視程度で確認できることができないからこそ必要と認識されていますし、弊所も採卵鶏農場産をご指導する際はこの点をしっかりお話ししています。
今の事例では時間軸では発生はなく安泰であったものの、特別気を付ける方法がないことから、ある日事故として表面化されることがあるのに、その考えだけで相手先は満足するでしょうか。
作業マニュアルは、方法を破り自己流を開発する踏み台であるという人もいます。
そんな1から10まで手順通りやっていたら時間ばかりかかり作業員が何人いても足りないと言います。
これもおかしい説明で、「そもそも今の作業をベースに構築する」のに10までかかると言えてしまうのか、ということです。
作業は確かに簡略化した方が良い。その通りです。
しかし、簡略化はお金を物差しで測り決定する活動です。
安全性と言う視点で見た時10まで要らないにしろ、6までは必要等最低限必要な方法は存在しています。
それすらできないのであれば、最初から作業しないほうが一番の簡略化です。でもそれはできないのです。
必要な作業と自身が認識しているからです。
では、その作業を行う上で安全性まで取り入れたらどうするのか、
と言う視点を入れてみてください。
と言う視点を入れてみてください。
そうすると、10までの作業項目はいらないはずです。
要は視野を変えて見るということです。
作業マニュアルを見たいという販路先は、法令順守を見ているということを知っておくと良いでしょう。
農場は法令順守が求められていることは皆さん知っています。
代表例は飼養衛生管理基準ですが、令和2年に改正(移行期間が満了し令和4年から完全移行されています)があり今運用されていることを知っていると思いますが、その細部まで知っているという方は多くありません。
家保さんの研修から知るということもありますが、多くは概要でそれはわかるというでしょう。
概要は変更点を抜き出しお話しされているわけですから、特に大事という意味です。
その中で、作業マニュアルを整備しなさいと言われたはずです。
令和3年秋から施行されている事項ですが、作業方法を文書にして保管し見える状態にしなさいと言う意味ですが、まだこれがないという農場もあります。
そう考えると、マニュアルなんてできるか、そんな意味ない者があるのかと言っている方は法令順守できていないということになるのです。
今まで大丈夫、これからも大丈夫という時間軸安全理論はもう終わっているのに、まだすがっているという状態になっているということです。
今まで大丈夫、これからも大丈夫という時間軸安全理論はもう終わっているのに、まだすがっているという状態になっているということです。
そう考えると、それでも俺はこの農場の長であり何ぴたりとも異論は言うなと言うことでしょうか。
長は、従事者の長であり最大権力を持つわけですからそういう思考になるのかもしれません。
でも農場は第三者から見ればただのその辺の1農場でしかありません。
特筆すべき優良農場でもないのです。
特筆すべき優良農場でもないのです。
なければ国が滅びてしまうというほどの物でもないのです。
それは畜産生産サイドには大手が存在していないと言うことでもありますが、大きいシェアがない世界であり、
僅か数パーセントかそれ以下のシェアで国内や世界へ供給されていることでコンマ幾つかの生産農場が撤退や新規参入しても大きな変化がないからです。
僅か数パーセントかそれ以下のシェアで国内や世界へ供給されていることでコンマ幾つかの生産農場が撤退や新規参入しても大きな変化がないからです。
だから世間は長であるといっても関心がなく法令順守を求めるわけです。
あとはそれに農場側が異論を唱えるのか、理解して今に合わせた生産活動をしていくのかの二択になるのです。
あとはそれに農場側が異論を唱えるのか、理解して今に合わせた生産活動をしていくのかの二択になるのです。
安全性を大事であると認識し始めたのは昔からあることです。
でも大きな動きは正直なかったように感じます。
それは畜産生産サイドの落ち度ではなく、供給先の不手際がクローズアップされていたからです。
それは畜産生産サイドの落ち度ではなく、供給先の不手際がクローズアップされていたからです。
品質不良の乳製品出荷、国産偽装の食肉、食肉の不適切な取扱いによる食中毒外食店等がその事例です。
いずれも生産者側の落ち度ではありませんでした。
しかし時代は変わりそのような供給側の信頼低下をおこさないための方法が確立でき、ではそのためにはその仕入れ原料はどうなのかと言う視点に変わってきているということです。
しかし時代は変わりそのような供給側の信頼低下をおこさないための方法が確立でき、ではそのためにはその仕入れ原料はどうなのかと言う視点に変わってきているということです。
そのために改めて安全性が高い畜産物を作るために飼養衛生管理基準の改正があり、それよりも高い意識を持ち生産活動をしていく農場HACCP認証、JGAP畜産があり、
それがあることで少なくとも供給先の安心と言う信頼を得ることができる(必要になる)ようになってきたのかなと感じます。
それがあることで少なくとも供給先の安心と言う信頼を得ることができる(必要になる)ようになってきたのかなと感じます。
今日の話から、皆さんの農場の安全な畜産物とは何を持って安全であると言えたのか、
考えて見ると農場生産現場の考え方も変わり、それが意識向上という言葉で表されるようになるのではないかと思います。
考えて見ると農場生産現場の考え方も変わり、それが意識向上という言葉で表されるようになるのではないかと思います。