nogutikusanの畜産ブログ のぐ畜産認証支援部公式ブログ

認証を支援しているのぐ地久三事務所 認証部署「のぐ畜産事務所」が皆様の認証への理解やメリット・そうでないものあらゆる視点でお話ししています。これから認証を活用したと考えている方や既に取り組みをしていて感じる疑問をこのブログから発信しています。

畜産物の認証を専門にしている事務所から、感じること・思うことをブログにしてお届けしています。2023年8月からはのぐ畜産事務所が皆様の疑問や行動している課題にお応えしていきます。

今年度も農場HACCP指導員研修が開催されています。
弊所でご支援した農場もこの研修に参加されており、認証取得へ向けて動いており、昔はメリットなしと言う思い込みから、人が畜産を支えているという本来の目的を思い出しこの認証制度を活用しようという意識が見られるようになったなと感じるようになりました。

農場HACCP認証があるから畜産物価格に有利に働くという、相手(供給先や消費者)が認知していない制度から価格交渉ができるという思い込みが当初見られました。

案の定そうならないわけですが、近年はHACCP認証があるからバイヤー等は法令を満たした飼養をしていると認識し、その畜産物に対し安全性の維持がなされているという信用を得るひとつの物差しとして見るようになったと感じます。

ある農場は、近隣が認証を取得したのでうちも2年かけて構築し取得したというところがあります。
当然認証されても近隣はそのことを知りません。
取引先にも「うちHACCP取ったよ」と話しますが、
そうですか、それは良いことですね。
という返事はありますが、それ以上の話へ弾むような会話にはならなかったと言います。

それから月日がたち、昨年あたりから取引先から農場の衛生管理状況を確認させてくださいという話がやってきます。

当初は珍しいな、必要な書類を毎年見せていて何も言わないのに。
と相手の思惑を探ります。

今年は珍しいですねと言いますと、いやーたまたま近くの農場さんの書類点検があって、○○さんの農場もご挨拶を兼ねて伺いたいと思っていたのですよ。
と言います。

それはそれはと返しましたが、なんだろうなという疑惑が大きくなります。

一通り書類点検が終わり、毎年同様「しっかりと管理をされているから、弊社は安心して畜産物をお客様にお届けできます。
本当にありがとうございます」と言う決めセリフがあり終わるのですが、今年は少し違います。

「作業マニュアルありますか?」
「ん? 作業マニュアル?」
「はい、安全に作った畜産物には作業マニュアルはありますか? 一度拝見したいと思っていたのですよ」

なるほど、それが目的なのか。

やっと相手の思惑がわかります。

「当然守秘義務がありますから、同業に話すことはありませんから、是非見せてください」
このような文書点検から法令を満たす安全性があるのかを今年は再確認しているという相手の思惑がわかります。

その理由は最後に書きますが、このような事例が1農場ではなく、弊所がご指導している農場いくつもあります。

さて、このような場面に皆さんの農場が訪れた時、どのように返事ができるでしょうか。
多くの農場では、作業を行ったことを書く日誌は備え付けているでしょう。

ないと答える農場もあると思います。
それには理由があり、備えないことに対し指摘を受ける機会がないからという答えをされると思いますし、そもそも記入し保管する必要性がないのが本音ではないでしょうか。

ですが、日誌の保管を指摘されたり、作業内容を確認できる資料の有無を確認されたりと、だいぶ昔とは違う指摘を受けたと感じる方もいると思います。

農場によってはバイヤーが来る農場でもないという所もあると思いますので、すべてではありませんが畜産物に対して「安全性の担保」をだいぶ意識しているように思います。

その安全と言う言葉、昔から聞かれている言葉ですが、いまいちピントがずれているではありませんが、当たり前の作業をして育てるという中に自然に埋め込まれている安全を、第三者に可視化させるということに戸惑いを感じているというお話を聞きます。

その例えとして今の事例をお示ししましたが、皆さんの農場では安全と言う言葉の可視化にどのように備えているでしょうか。


皆さんの農場には、多くの従業員が大切な家畜の生産や畜産物の収穫作業に従事されていると思います。
その作業には長年にわたり繰り返されている手法があり、それにより畜産物や家畜の事故がなく毎日を繰り返し、それが安全性の確保という時間経過での信頼がありました。
ですから記録してどうのこうのという必要性がなく、長い時間がこれを証明しているというのが当たり前でした。

そうも言えない時代になります。

農場での生産活動は毎日が同じで繰り返しと言われます。
その通りに見えますが、実際は異なります。

例えば人。
その人は確かに毎日同じ作業を繰り返しているように見えますが、その人は未来永劫その農場にいるとは限りません。
この先10年、100年先まで同じ作業をしているというのが前提条件で、毎日同じ作業をしているという言葉になります。

実際畜産業での人材確保は少しづつ難しくなっているようです。
人が退職されると、補充できるものの作業性が落ちるというお話も聞きます。

理由は様々ですが、採用する人が社会経験が少ないという方、仕事の進め方がわかるまで時間を要する方等教えて仕事をお願いするまで時間がかかり、指導手の作業拘束が長くなり、結果手が回らず作業性が落ちていき、生産性等経営に直結する下降減少を止めることができず、それを補う上級職の畜種に対する理解度の不足やそのサポートも上手ではなく更に生産収益が下がっていくということも多々あり、同じ作業を繰り返すことの難しさを感じる方も多くいます。

そして、安全性の可視化という見えないからこそある意味適当で良かった事柄が、見えるように見せるという難しさがこの数年表面化し、取引が止まるということはないものの説明がしどろもどろになるという事例もあるようです。

農場HACCP認証がとても良く万人向きであるとは言いませんが、その安全と言う可視化にはとても優れている制度であると言えます。

確かに、畜産現場で必要なのかという意見はあります。
そこまで食品企業のような仕組みが馴染むのかという意見もあります。

しかし時代が変わり、昔のように時間軸の安全性担保では消費サイドが納得しているわけではないということを知っておくと、昔は良かった、昔はうるさく無かったからこそその制度は馴染まない・間違っていると片付けるリスクがあることを今日感じていただければと思います。

冒頭お話しした作業マニュアルですが、農場HACCP認証では作成が必須の文章です。
作業分析シートとも呼ばれますが、そこには作業方法が書かれており方法がまとめられています。
作業方法が紙にされているということは、教える側の効率と呼ばれる作業の簡略化から自己流という時間短縮による弊害を防ぐことができます。

安全はお金という物差しで測ると、多くの場合事故を呼びます。

畜産業では、牛であれば1名で搾乳させるという作業で牛に蹴られたり、挟まれたりしてなくなるというリスクもありますし、滑りやすい床面に足をとられて転倒し流血することもあるでしょう。
ではなぜ1名でなければならないのかと言えば、人がいない、分担作業した方が効率化できている等お金の物差しで測り実行しているわけです。

製品に影響がないと言われますが、今の時代製品に影響があること自体がその農場の信用がないと言うことであり当たり前です。

大事なのは、安全な畜産物を作るのに安全な方法が確立化されているのかというその先のことを言っています。
行き当たりばったりで安全性が担保できるとは見ていないのです。

自己流で行っているとマニュアルに書いて見せてもいいでしょう。

でも第三者はそれを見て、マニュアルありますね。
十分ですと言うでしょうか。

だって、その時その時に方法が変わり作業方法は統一していないと言っているようなものです。
時間軸では事故は発生していないと説明しているだけです。

昔はそれでよかったのですが、継続してこの先もできるのかということを供給先は知りたいのです。
でも方法はないしその場で決定すればよい「臨機応変」であれば良いでは無責任のように理解します。

供給側はリスクがない原料を仕入れたいのです。
そのためにはそれを裏付けるデータや方法論を確認したいわけです。

農場HACCPであれば、作業分析シートが作業マニュアルになり説明できます。
そして作業方法には危害要因を洗い出し防ぐ方法を確立させ、作業方法の安全性に客観的な評価をさせています。

もちろんこれで100%安全な畜産物とは言いませんが、作業方法がありその作業にはリスク評価がされていて出来るだけのリスクを排除しているということを第三者が知れば、何もないよ臨機応変でやっていると言われるより説得力があり、納得してくれます。

時間軸の安全性評価は長い時代それで良かった方法でした。
でも時に間違いを起こすことも知っています。
鶏卵の腐敗卵は、農場段階で1個残らず鶏舎から回収できれば時間経過による腐敗が進むことはありません。

ですが不可能です。
午後まで鶏卵が生まれているのに午前から午後の早い段階で集卵が終われば鶏舎に残ります。
大抵は翌朝回収されるわけですが、問題は自動集卵である時代1個も残らず回収できるのかというお金と言う物差しで見ていることである日被害が生まれます。

バタリーゲージは経年劣化したり作業時破損させることが多くあるはずです。
そうなる場合通常は自動集卵でエッグベルトから集卵場へ移動していく鶏卵は勾配が生まれ移動できない、鶏卵が途中で引っ掛かり長い時間滞留したりと予期せぬ事態が生まれます。

大抵は農場現場の自己判断で回収や修繕をしていきますが、事故が生まれる場合その滞留させていることがリスクと言う認識はありません。

それは、鶏卵の外見では見た目による劣化が判断できないからです。

確かに良く見ると、殻がくすんでいる(エッグベルトが擦れてくすむ、鶏糞の汚れが多い鶏卵等)など見た目で判断できる人もいますが、それは養鶏を長く見ている人しかわからないはずです。

そうして、夏季の暑さから腐敗が進みパッキングされ流通されていき、消費者が割卵すると黄身が黒いという典型的な腐敗卵流通が発生します。
最近は見なくなった事例ですが、でも数年前にこのような事例で納め先店舗から流通停止処分を受けるところもあります。

農場HACCPを構築する際、特に採卵鶏や乳用牛はこのように外見から異常である製品を目視程度で確認できることができないからこそ必要と認識されていますし、弊所も採卵鶏農場産をご指導する際はこの点をしっかりお話ししています。

今の事例では時間軸では発生はなく安泰であったものの、特別気を付ける方法がないことから、ある日事故として表面化されることがあるのに、その考えだけで相手先は満足するでしょうか。

作業マニュアルは、方法を破り自己流を開発する踏み台であるという人もいます。

そんな1から10まで手順通りやっていたら時間ばかりかかり作業員が何人いても足りないと言います。
これもおかしい説明で、「そもそも今の作業をベースに構築する」のに10までかかると言えてしまうのか、ということです。

作業は確かに簡略化した方が良い。その通りです。

しかし、簡略化はお金を物差しで測り決定する活動です。
安全性と言う視点で見た時10まで要らないにしろ、6までは必要等最低限必要な方法は存在しています。
それすらできないのであれば、最初から作業しないほうが一番の簡略化です。でもそれはできないのです。
必要な作業と自身が認識しているからです。

では、その作業を行う上で安全性まで取り入れたらどうするのか、
と言う視点を入れてみてください。
そうすると、10までの作業項目はいらないはずです。

要は視野を変えて見るということです。

作業マニュアルを見たいという販路先は、法令順守を見ているということを知っておくと良いでしょう。

農場は法令順守が求められていることは皆さん知っています。
代表例は飼養衛生管理基準ですが、令和2年に改正(移行期間が満了し令和4年から完全移行されています)があり今運用されていることを知っていると思いますが、その細部まで知っているという方は多くありません。

家保さんの研修から知るということもありますが、多くは概要でそれはわかるというでしょう。

概要は変更点を抜き出しお話しされているわけですから、特に大事という意味です。

その中で、作業マニュアルを整備しなさいと言われたはずです。
令和3年秋から施行されている事項ですが、作業方法を文書にして保管し見える状態にしなさいと言う意味ですが、まだこれがないという農場もあります。

そう考えると、マニュアルなんてできるか、そんな意味ない者があるのかと言っている方は法令順守できていないということになるのです。
今まで大丈夫、これからも大丈夫という時間軸安全理論はもう終わっているのに、まだすがっているという状態になっているということです。

そう考えると、それでも俺はこの農場の長であり何ぴたりとも異論は言うなと言うことでしょうか。
長は、従事者の長であり最大権力を持つわけですからそういう思考になるのかもしれません。

でも農場は第三者から見ればただのその辺の1農場でしかありません。
特筆すべき優良農場でもないのです。
なければ国が滅びてしまうというほどの物でもないのです。

それは畜産生産サイドには大手が存在していないと言うことでもありますが、大きいシェアがない世界であり、
僅か数パーセントかそれ以下のシェアで国内や世界へ供給されていることでコンマ幾つかの生産農場が撤退や新規参入しても大きな変化がないからです。

だから世間は長であるといっても関心がなく法令順守を求めるわけです。
あとはそれに農場側が異論を唱えるのか、理解して今に合わせた生産活動をしていくのかの二択になるのです。

安全性を大事であると認識し始めたのは昔からあることです。
でも大きな動きは正直なかったように感じます。
それは畜産生産サイドの落ち度ではなく、供給先の不手際がクローズアップされていたからです。

品質不良の乳製品出荷、国産偽装の食肉、食肉の不適切な取扱いによる食中毒外食店等がその事例です。

いずれも生産者側の落ち度ではありませんでした。
しかし時代は変わりそのような供給側の信頼低下をおこさないための方法が確立でき、ではそのためにはその仕入れ原料はどうなのかと言う視点に変わってきているということです。

そのために改めて安全性が高い畜産物を作るために飼養衛生管理基準の改正があり、それよりも高い意識を持ち生産活動をしていく農場HACCP認証、JGAP畜産があり、
それがあることで少なくとも供給先の安心と言う信頼を得ることができる(必要になる)ようになってきたのかなと感じます。

今日の話から、皆さんの農場の安全な畜産物とは何を持って安全であると言えたのか、

考えて見ると農場生産現場の考え方も変わり、それが意識向上という言葉で表されるようになるのではないかと思います。

12日午後3時前兵庫県佐用町のにある養鶏場で、作業していた50歳台の男性従業員がフォークリフトの下敷きになり現場で死亡が確認されました。

報道によれば、事故は12日午後2時50分ごろ養鶏場で作業していた作業員が大きな音を聞き確認したところ50代の男性作業員がフォークリフトの下敷きになり倒れていることを確認しました。

事故を起こした男性作業員は、ヒヨコの寝床用おがくずを移動する作業を行っており、高さ4メートルの のり面に作業員が投げ出され、その直後フォークリフトが転倒し下敷きになったというものです。
警察は重機の転倒原因を調べています。

さて、重機による死亡事故は毎年発生しており本年も被害が発生しています。

多くは、重機からの転落による重機の下敷きと言う無事では済まされないケースも散見されます。
今回の事故原因はわかりませんが、のり面に作業員が投げ出されたというキーワードから推察されるのは、のり面を高く積み上げる作業をしていたのかもしれません。

一般的におがくずを纏めたり、散らかす場合の多くはフォークリフトよりショベルローダーの方が適しており作業性が増します。

このため、スキッドステアローダーのように、豊富なアタッチメントがある重機であれば、ある時はフォークのツメを取り付ける、ある時は鶏糞等をすくうため、バケットを取り付けたりと自在で、小型で畜産業では良く見るものではないかと思います。
本体価格も安く、重量物を持ち上げたり移動したりと畜産業では必須の重機の1つかもしれません。

スキッドステアローダーは、機動戦士物のようにモビルスーツに乗る操縦者のように正面から乗り操縦席に着席します。
一般的なローダーは横から乗車するタイプで、前後左右の視界を妨げるような構造になっていません。
この手の重機と違い視界に難点がある性質があります。
特にバケット等を大きく持ち上げた状態で、移動したり、走行するとバランスを崩し横転することもあります。

また無理な斜面の上り下りでは、本体の小型化による弊害としてバランスを崩すというデメリットもあります。

これは、本体が小型化しているため持ち上げる等によりバランスを崩し横転したりと思わぬ事故を発生させることもあります。
また後退することを想定していない重機であるという変わった特徴を持ちます。
ユンボと同じ発想になりますが、ユンボの後退は一般的に見ることはありません。その場で転回をして進んだり、後退したりしますので、このような操作はしません。
その場所で転回し移動できるという操作性があるからです。
その理由は、周囲の安全確認がローダーと違い優れていないこともあり、無理に下がることで、バランスを崩してしまうというリスクを避ける目的もあります。

ショベルローダーのような操作性とは異なり、さながらユンボのような左右レバーで走行、移動、持ち上げと特徴ある操作を必要とします。
このためこのような重機では狭い場所で作業できる操作性、旋回、小回りと鶏舎内作業や周辺作業に大きな力を発揮します。
そして、比較的安価な本体価格、アタッチメントの豊富さから複数の専用重機を必要としないコスト性もあり畜産業では人気の車種です。

しかし、ショベルローダーでもバケットを持ち上げた状態で走行してハンドルを切るとバランスを崩しますし、車両を斜面横から走行してもバランスを崩します。
ですが、ショベルローダーは、フォークリフト同様、正面の重量物に対しては持ち上げても車両本体が重いことで安定した持ち上げ、移動作業ができるという安心感があります。

今回の事故では何をして転倒したのかという点を調べていますが、いずれにしてもショベルローダーの安全教育を受けていれば重機の特性、支点と力点ではありませんが、転倒限界点を知る事ができます。

でも有料で、操作性の教習という、簡単な操作性であえてお金を払い教習するという点を無駄と感じる農場もまた多いと思います。
JGAPのように操作する者には安全講習、免許と言った資格を取得させることを必須化したような認証もあります。

また本来は安全講習等を受けさせる義務が農場にはあります。

でも交通取り締まりのように、農場に視察があり取り締まりを受けるということはありません。
多くは事故なく毎日の作業に従事されていると思います。

でも事故を起こした時、この無講習体質や資格取得がないという無知が農場に災いとしてふりかかります。

今回はわかりませんが、このような畜産農場での事故の多くは、講習すら受けさせず、操作が簡単で伝承させれば運転・移動・片付けといった業務に従事できることで、この大事な点を疎かにして、ある日事故に至り結果従事者は大けがや死亡に至り、農場や責任者、経営者は労働安全衛生法違反により書類送検され、最終的に罰金刑に科せられるという流れになります。

重機の特性を知り、リスクを想定するという習慣を持たない農場でこのような事故が発生し話題になります。
もっと早く知っていれば、違う未来があったと事故を起こした農場は後になって後悔します。

周辺でも変死者が出た農場としばらく話題になり、農場に対するイメージは思いのほか深刻なダメージを受けています。
でも面と向かって、お前の農場は悪質でどうしようもない、それぐらいわからないのかとあえて言う人はいません。
それより、噂してそれが狭い集落、町内に囁かれ続けるという地味に長いイメージダウンが付きまとうことが多いと感じます。

屋号で呼ぶの○○の鳥屋、死亡事故出したってよ、亡くなったのは地域名○○の△△さんだってよ、可哀そうに・・・こうなります。

事あるごとに研修でお話ていますが「農場の常識は世間の非常識」という言葉をもう一度復唱してみてください。

きっと、至らない点、時代はこのような事故でも寛容に流してくれるような時代ではないということに気づくでしょう。

以下によく観察される事故事例を書きます。
皆さん農場ではどのような想定がありますか?
危害要因分析と言う視点で机上演習してみてください。

・鶏舎見回り時に、ホッパーのチェーンが緩い事に気づいたためテンションを張る作業中に、タイマーによりホッパーが動き出し、チェーンに指を挟まれた。 自動運転の設定になっていて、タイマーで停止していたが、電源を切らないまま作業し、タイマーの時間がきて動き出した。
事故は、幸い切断まで行くような事例に至らず全治5日程度の事故であった。

・鶏卵エレベータの清掃を本来電源を落として行うところ、落とさずに腕を入れたため、集卵場で動作スイッチが押されて、チェーンに巻き込まれ左腕を負傷した。

・ナイアガラと呼ばれる部分のベアリングを、ブレーカーを落として交換に入った際、ベアリングの取り付けが終わり、正常に動くか確認のため電源を入れモーターを動かす際に、修理したベアリングの部分とは違う足元にあるシャフトに右手を巻き込まれる。
回転は遅いが、力が強く右腕の裾から絡まり、右腕がシャフトに巻き込まれる形で肋骨までシャフトに引っ張られて骨折した。従業員は重体となり重大な事故と認定された。

皆さんも事故の事例から、ご自身の農場で防ぐ手立てを見つけて、事故ないように想定し指導してください。

23年9月に宮崎県西都市にある種鶏農場で、40代の従業員がショベルを操作し付近の道を均していたところ、路肩から転落し、車体の下敷きになり従業員が死亡した事件で、宮崎労働基準監督署は9日、この養鶏場の会長(80歳代)と会社を書類送検しています。

事故は、昨年9月西都市の養鶏場で発生し、トラクターショベルを操作していた当時40代の男性従業員が、道をならす作業をしていたところ、路肩から2メートル下に転落し重機の下敷きにより死亡しています。

労働基準監督署は、事故は労働安全衛生法第21条事業者の講ずべき措置等に違反したとして、80歳台の事業所会長と、法人である同県日向市に所在する養鶏場が法律に従った安全対策を怠ったとして宮崎労働基準監督署が同法違反の疑いで書類送検としました。

さて養鶏場での事故と言えば重機の事故が多く、多くの方は事故は自己責任であり、転落なんかしないだろうと考える古風な方が多いと思います。

しかし、時代は変わりそんな昭和感を出している農場は少なくなっています。

いくつか事故事例を取り上げていますが、JGAP認証では労働安全に関する事項があり、このような事故事例から気づくような研修をしていますが、
関心がない方々には事故事例は正直関心があるようには見えません。

ブログからヒントを得て真剣に自社で防ぐ方法を模索される農場もありますし、農場を管理する企業が研修用資料に使い学ぶところもあります。

今の時代、企業(農場)は、従業員の労働安全の義務があり、機械に巻き込まれて窒息する従業員や、鶏舎の屋根を補修した従業員が転落し亡くなる、堆肥製造機のスクリューに腕が巻き込まれ切断という被害も、昭和であれば仕方がない、民間保険で手厚い補償で煙に巻くということもできたと思います。

ですが、今の時代労働安全の義務を企業が背負っているということを知らない経営者が残念ながら少なからず存在します。

特に外国人技能実習生を雇用している農場では、実習生が死亡するまたは重傷を負うような事故は多くの場合、実習停止になり5年間の喪(新規採用ができず、既存の実習は廃止しおとなしくしている期間)となることを知る人もいません。

採用する手法は知っていますが、多くは事故による問題まで知っているというという人は本当に少ないと感じます。

事故は、防げるものです。

でも偶発であり防ぐことはできない。
だから自己責任で気を付けてほしいという経営者や農場責任者(農場長)もいます。

ですが、事故は必ず要因があり、それに気づき防ぐ手法を作ることで、少なくても無知の農場より事故リスクは低くなるのです。

でも事故は毎日発生はしない、発生頻度が低いからこそ民間保険で備えればよい。
事故は従事者の見通しの甘さが原因であり、企業側に責任はなく、少なくとも責任比率は小さいと本気で信じていて発言するところもあります。

このブログを読まれている方は、そのような方ではありません。

そもそも見通しが甘いといっている時点で、外からの情報を仕入れるということをする人を筆者は見たことがありません。

だからいつまでたっても、昭和の時代、自己責任論が当たり前、世間が変わっていると知る機会がない、そもそも世間に興味がなく、農場の収入しか興味がなく、いかに修理等コストを削り、従業員に修理をさせて修理メーカー修理の費用を浮かせるという発想になるという悪循環になるところも散見されます。

今回の事故は農場作業としては一般的な内容ではないかと感じます。
ショベルを使用した道の修繕、草が生えたことで、均し次いでの除草、のり面が雨等で流れ、砂利を入れる修繕をするため近づき滑落するということも想像できます。

いずれにしても、操縦者の技量により事故を起こすのかどうかという点に違いはありません。

JGAP畜産は、ショベルを運転する場合、操作する者は安全講習を受講し、操作や重機の特性を学び、安全な操作をするきっかけを授業から学びます。
ですが、有料であり数万円の費用を負担することに意味を感じないという方もいるでしょう。

JGAPでは審査事項に必要な技量を持たせるために講習や免許の取得を求めています。でも認証を必要としない農場では必須ではありません。
だから、操作はできれば十分であるとなるのでしょう。

でも安全と言う視点は完全に抜け落ちています。
安全ほど無駄なコストと言われるのは、安全対策をしないと高確率で発生するということではないからではないかと感じます。
費用対効果という言葉を使い、確率が低い物は気を付けるという声かけというコストで十分であるとなるのでしょう。
お金を投じるものではないということです。

それにより、今日は大丈夫だった、明日も大丈夫だろう、来月、来年は・・となるとわかりません。
でもそれだけ時間が経過したら、多くの場合そんなコストと言う概念すらないでしょう。
多くの方に問いますが、一昨日の晩御飯を思い出せますか?

この質問と同じです。
昨日、数時間前であれば事の大事さは記憶するでしょう。
でも興味がない、お金をかけるほどの物ではないとなれば、記憶に留めないはずですし、そのように気にする方を見たことはありません。

そして、事故が起きて、従事者が重症になる、場合により死亡するという大惨事になります。
あの時、こうすればよかったと後悔するより、なんでこんな簡単なことすらできないのだ。
そう考えてしまうのです。

そうです。
事の重大性やそうならないように対策を講じるという自身の責任を痛感できないのです。
他人が悪い、重機が悪い、揚句には監督署が悪いと責任転嫁してしまうのです。

視野が狭いのです。

皆さんの農場では、どのような安全対策を講じているでしょうか。
そもそも安全とは何でしょうか。
気を付けることを伝えることが安全でしょうか。

そうではありません。

安全は、事故の要因を排除しそれを起因する事柄を防ぐことで担保されるものです。
今回のように重機が路肩に近づき落下するということは想定できるはずです。
重機が吸い込まれるわけではありません。

であれば、路肩から2メートル以上の低地があるのであれば、落下したらどうなるのかということも想像できるはずです。
重機は1トンそれ以上ということも珍しくありません。
その下敷きであれば無事ではすみません。

であれば、どうするのか。

重機には安全の囲いが設置されることが一般的です。
シートベルトがあり、締めることで放り出されるリスクは小さくなります。
そして安全な囲い(多くは屋根だけということもあるでしょう)が操作者の安全空間になるはずです。

安全講習を受けていればわかるはずですが、安全な囲いは落石があっても容易に変形しない丈夫な構造であることを知っているはずです。
シートベルトと囲いで高確率で下敷きは防げたはずです。

でも、その囲いすら納品後取り外すという農場もあります。
これは違法改造です。

でも認識を持つ人はいません。
知っていれば最初からしないのです。

でも行うということは、世間の常識を知らないからこそできるのです。
自身が無知であることを知らないだけなのです。

人が亡くなり初めて事の重大さを知る人もいます。
でも後の祭りです。

ご自身が築いた会社、そして責任者であるご自身両方の信用がこの瞬間失墜します。

今回、労働基準監督署は「現場には転落を防ぐための誘導員の配置が行われなかったこと」を理由に挙げています。
転落を防ぐには、誘導員は必要です。
でも農場にそんな余剰人員はないというのが実情でしょうし、日本語による意思疎通が難しいという人材に誘導をさせるのも難しいということもあるでしょう。

でれば、少なくても安全とは何かと言う視点で最初から想定すべきでした。

安全に作業させるには、路肩に近づけず土を削るだけ等路肩からの転落を防ぐ内容で指示すべきでした。

こう考えていくと、安全とはお金を出して解決できるものではなく、危害をできるだけ想定し回避できる方法を未然に探し実施方法としておくことが重要です。

そう考えると、JGAP畜産のようにうるさい物、生産性に寄与しないものと揶揄されますが、でも本質には労働者の労働安全の考え方を取り入れておけばまた違う未来があったように感じます。

毎年畜産業では何らかの事故があります。
その多くは、未然に防げるものも多くありました。
後は農場が知っていたのか、無知だったのかという違いで事故が発生したり、未然に防げたりと言う分かれ道で事故が起こるように感じます。

この先、梅雨時期になり雨による道の崩落や修繕による重機の出動はあると思います。
その時今日のような事故を農場ではどのように回避できるのか。

それは不可抗力だったといえるのか。

考えてみてください。
安全は、無駄なことなのか。
安全ほどコストの無駄なことなのか。
代用はいくらでもあるのか。

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