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認証を支援しているのぐ地久三事務所 認証部署「のぐ畜産事務所」が皆様の認証への理解やメリット・そうでないものあらゆる視点でお話ししています。これから認証を活用したと考えている方や既に取り組みをしていて感じる疑問をこのブログから発信しています。

カテゴリ: 人材教育

現在、農場HACCP認証を取得している農場は456農場(令和6年1月25日時点)となります。
農場や、農業学校、試験場等様々畜産に携わる方々が認証を受けており、それぞれの目的を持ち農場や家畜の管理をされているのでしょう。

その農場HACCP認証ですが、最近は農業学校等次世代の方々がこの認証を取り入れた農場経営や管理の参考にして良い農場がこの先開かれていくのだと思います。

では、農場HACCP認証の価値を知ると様々な点でメリットがあると感じます。
皆さんの農場でも取り入れる価値があるかもしれません。
認証を受けることのメリットは、第三者が基準を満たしているというお墨付きがあるということで、取り入れて農場に展開することで、衛生意識、農場の思考力の変化、行動の自主性といった様々な変化が見られます。

弊所はご指導し、認証に対するポイント、農場に展開し前に進むための補助を行っています。

ご縁があり認証を維持するために数年農場の方とお話しすると、農場の考え方が変わった、衛生意識から工夫というするという風土が生まれた、何ができるのかという考えが生まれ自立する力が芽生えだしている等前向きな姿勢に変わる農場もあります。

一方で、認証する内容と農場の仕組みや作業は全く異なり、認証を維持するため文書の体裁は担当者に丸投げし、作業は従来と異なり進化するというよりその時々により変化し臨機応変というより行き当たりばったりの作業を行い、効率化と名乗りながら、安全性を犠牲にしたある意味非効率化に進んでいき、課題解決力の劣化、作業従事者の負荷のばらつき、欠勤や遅刻といったモラルの低下に至る農場もあります。

畜産物は農場HACCPの有無により売り上げに左右はされないことが弊所から見て多く、正しくは、生産が下がる要因を畜産側の要因と真っ先に考え、原因究明を従来の考えから脱却できない(異なるアプローチからの分析ができない)ことが要因で、一般的に生産成績としてはそんなものという程度になることが多いと感じます。

でも、今の生産が本当に最高のパフォーマンスなのかという視点で見れば、実はまだ途上であったということはよくあることです。
農場HACCP認証は取得することで、もれなく農場が成長していくということは経験から見てありません。

大事なことは、このシステムを活用して農場が考えるきっかけを作ることが一番の農場の収穫になると感じます。
ですが、畜産物の優劣に差がなく収益に貢献しないといった費用対効果から見て意味を持たないという考えも一定数あります。

本当に費用対効果から見て意味がないのかということは農場が判断することですが、農場自身が考える力をもっていることが、衛生面の意識、家畜の健康状態を見るという意識、それが畜産物の収量増加へ導くことができるのですが、認証からそのようなイメージを持つのが難しく、費用がかかるからこそ回収できているという実感できないというのもあるでしょう。

農場には農場のノウハウがあり、そんな認証から得る物がないというのもあると感じると思いますが、そのノウハウは昔からの方法で正しいと違うアプローチから見ていないというのも理由の1つだと感じます。

ノウハウは基本的に変わらないのかもしれませんが、畜産への管理方法は変化があると思います。
その管理は本当に今にあっているのかと考えると、少し見直しをすると時代が変わったと感じることもしばしばですが、何も感じず、考えがなければ昔からの方法で、それは正しいと誤認してしまうこともあります。

その本当は?という答えを探すきっかけが農場HACCPではないかと感じます。

確かに意味を持たないと感じるかもしれませんが、検証は必要?、文書や記録保管はそんなに大事なこと?、危害要因はそんなに検討しなければならいことなのか?
と感える方も多いと思います。

でもよく考えれば、検証することは、原因を分析して次に生かすということに気づくきっかけを作るということ、文書や記録保管は、確かに毎日見ることはないでしょうし、見直すこともほとんどありません。

でも問題が発生した時、最初に見るのは家畜だけではありません。
その管理から気づくという方法も必要です。
最初から記録がないとなれば先ほどの行き当たりばったりの管理を主にされていると思います。

記録がないということは記憶もありませんから、昨日や一昨日はわかるにしても先週、先月は何をしていたのかというと思い出せません。

それでは何が原因か探ることは難しく、昔からの経験から、家畜が悪いと決めつけて終わってしまいます。そして数か月後、数年後同じようなことを繰り返してしまい、同じ答えしか出せず繰り返すというもったいない時間を浪費していきます。

危害要因も同じで、危険なことを想定して回避できれば一番良いことですが、そんなレアケースはそんなに発生しないから意味がないからこそ、その時考えれば良いという合理的な発想もあると思います。
発生して農場や家畜に被害があり損失が大きのであれば、回避できる方法があれば最初からその対処をしておいた方が得策です。

小さく意味がない内容であればそれは危害度が小さく検討はいらないかもしれません。

いずれにしても、農場が受けるリスクや家畜が受けるリスクから考えると、取捨選択できると思います。そのことのきっかけが危害要因でもあります。

認証取得のため大げさに作るという農場もありますが、本当は今にあった小さい基準を作ることが無理なく、農場に展開しやすいものになると思います。

認証にはコストがかかりますから、意味がない捉えがちです。

でも農場HACCPから得られることは、認証だけの視点で見るのではなく、人に意識から何が変わるのか、農場を動かすのはシステムなのか、根本は人なのか。

農場を見直すきっかけは何があるのでしょうか。
人が率先して見直すのか、認証から仕方なく見直し、それが繰り返しになりいつしか、人が率先して見直していくのか。
大事なことは、認証取得ではなく、認証から農場が変わるということです。そして農場を変えるのは人であるということです。

その人を変えるのは風土も大事ですが、変えるというきっかけです。

そのきっかけは自主性でどうにかなるのかといえば、難しいかもしれません。

認証価値は、何か利益を生むきっかけではなく、農場を変えていくきっかけを作る価値があるということです。
認証を受けることは、商品価値を上げて利益が爆上げになるということではなく、人が管理をして変えるきっかけを生み、それが生産量の増加や今の生産量を安定して維持できる方法を作り変えるきっかけを作る価値があるということです。

農業学校の皆さん方も学び取得してシステムを感じることでしょう。
でも大事なことはシステムだけではなく、そのシステムを人にどのように展開できるのかという違う視点です。

その視点はあらゆるものを当たり前のように見るということから、違う角度で見るという見る常識を変えていきます。

皆さんも農場HACCPを何も利益無く意味がないと考えるのか、そのシステムから人はどのように変わっていくのか、そう考えると意味ないと言い切れるのかもう一度再考するきっかけになると思います。

お金は大事ですが、農場の生産はそのお金を生みます。
その生産を維持するのは家畜ですが人の管理があって生まれます。

そのように見ると、認証は言われるから面倒である、現場の意味を知らなさすぎる、お金をかけるほどリターンがないという目先しか見ることができない今日までの思考がきっと変わるはずです。

畜産物の認証物と言えば農場HACCP認証があり、畜産物と家畜の安全を想定し危害を出来るだけ排除した安心できる畜産物を作ります。

ですが、傾向として畜産物に認証を付加させるような取り組みをする農場は多くなく、肉類ではブランドの確立、鶏卵はブランド鶏卵への移行といった商業的要素を前面に出されるところが多いと感じます。

安全や安心と言った目には見えない認証にはあまり普及度が高くないと感じます。

ですが採卵鶏では約5%の農場が農場HACCP認証を取得していると言われ、多くはないとも言えますが安全であり安心できる畜産物を作ることを生産者側がコミットしており、それによるメリットもあると言えます。

では、JGAP畜産はどうでしょうか。

畜産物の認証は2018年26農場から始まり2023年3月時点で269農場(220企業・団体等)が取得しています。

このうち採卵鶏と鶏卵について認証を受けているもの、または鶏卵だけを認証しているものそれぞれ含めて51農場となります。

JGAP畜産は、家畜衛生食品安全、労働安全、農場管理、人権の尊重、環境保全そしてアニマルウェルフェアと7つの取り組みについて評価を受けます。

同じ認証となる農場HACCP認証はこのうち食品安全家畜衛生農場管理が該当します。(すべての項目を網羅してはいませんが、あらかた満たします)

つまり農場HACCPは鶏を守り鶏卵が安全で安心できる環境を要求基準から自ら作成しそれを行い、認証を維持できるように検証し新しい知見を見つけ応用するということを繰り返していきます。
特に飼養衛生管理基準への適合は完全に網羅されるような作りになり、病気予防への取り組み度は高い物と感じます。

ではJGAP畜産はどうでしょうか。

JGAP畜産では、これ以外に、作業員の事故防止に必要な労働安全アニマルウェルフェア、環境保全人権尊重が含まれます。
これにより、鶏や生産物の安全対応の他に、世界的に理解が進んでいるアニマルウェルフェアへの対応や労働事故による行政処分が行われやすい事例にも対応できる労働安全にも対応します。

農場では無関心かもしれませんが、アニマルウェルフェア対策は少しづつ必要になりつつあります。

現在飼養衛生管理基準では密飼いの禁止があります。
これは病気予防の観点もありますが、アニマルウェルフェアでは鶏の行動を制限する行為にもあたり良いものではありません。

その他強制換羽(誘導換羽)の方法、ビークトリミングといった農場が行っているものについても鶏への配慮を意識しなさいとされますが、現状の方法で十分な場合も多いと感じます。

特にビークトリミングでは熱による切断をすると思いますが、今の時代孵化場で赤外線照射で予め切断できるような状態でヒナを導入していると思います。

つまり農場側の負担はなくなりつつあります。
また強制換羽もそうですが特に白系は品種改良が進んでおり産卵ピークからの安定時期は格段に向上しており強制換羽をする必要性がなくなりつつあります

これにより導入費を削減するから換羽させて長く飼養するという考えから、品種が変わりつつあるので、長く飼養して導入費を削減するという考え方に変わると感じます。

これも農場側の負担がなくなりアニマルウェルフェアへの敷居が低くなりつつあると感じます。

また最大のネックは設備が(バタリーからエイビアリーへの変更等)大変だからアニマルウェルフェアは出来ないではなく、これも導入する前提ではなくこのような設備に移行できるように検討しなさいと言われているだけですから、明日や認証時に導入するということではありません。

ですがアニマルウェルフェアといえば、日本ではなじまないもの、畜産経営には利益が薄くなりやすいもの、そもそも導入費用が高額で無理という話も聞きます。

だから導入検討の段階で見送りとなるという話も聞きますが、大事なのは認証のために検討してダメになるはもったいないと感じます。

この他にも労働安全も農場には知っておくべき内容です
数年おきに話が出る作業員の事故や死亡事故は大手新聞では話題にはなりませんが、地方紙や地域では話題になり後々まで地域で語り続けます。

農場は雇用主であり作業員に対して安全確保は義務になり、それを怠る場合行政処分を受けます。
養鶏では集卵バーコンの羽を掃除させるため回転している時に清掃させ雨合羽をしていたため、合羽が巻き込まれ首を巻き込まれることで亡くなるという事故もあります。

これを自己責任と捉える農場もあるでしょうが、これは管理者の監督ミスが原因で人災です。

この場合、管理者とその雇用主及び農場の法人は監督責任を負いますが、これを知らないという方が多く、事故発生時は自己責任で医療機関へ行き治療する、民間保険をかけて見舞金を支払うといった行政がかかわらないような行動をとり表面化しにくいという事例もあるように感じます。

ですが死亡事故まで発展した場合多くは見舞金程度でどうにかなるわけはなく、行政処分を受けることになりこの時に事の重大性を知ることになるようです。

でもそれを知っていれば労働安全が求めるその防止策を事前に打つことができ、発生したら大変というその後の話を極力なくすことができます。

これもリスク回避してその後莫大にかかるコストと信用低下を防止する優れた経営方法にもなります。

これ以外にも人権を尊重するという意識(養鶏ではないですが、外国人労働者に最低時給未満の支払いをする、残業賃の法定価格未満の支払いや有休付与の不適切な扱い等)といった今の時代の労働者への権利があることを知る機会になるはずです。

ですが、知る機会がないと、誰も助言はしないため自身だけが今の時代から取り残されるという裸の王様のような姿になってしまいます。今を知るという視点ではこの制度は本当に有用と言えます。

また環境保全への対応し周辺への配慮や地域とのかかわりの大事さを定めています。

特に地域との共生はとても大切なことです。
ハエといった衛生害虫、臭気といった畜産特有の課題に対し農場は仕方ない、やむを得ないではなく共生することで、様々な問題に対し寛容な地域になるためにも近隣とのかかわりはとても大事なのですが、多くは経営者はその地域にいない、従業員はその地域に住んでいないので関わらないといった姿もあります。

今まではそれでも良かったかもしれませんが、この先それだけで何とかなるのかという視点がないと少し心配です。
実際地域との関係がこじれる事例は全国で見ることが出来ます。
ですが自農場でなければ関心は薄く、うちは関係がないという関心さの低さから知らずに悪くするという場合もあり必ずしも知らないことが得策でもないように感じます。

今お話ししたように、時代は昔と違うということを知るとこの認証は意味がないとは言えないということがわかりますし、アニマルウェルフェアも昔の考えをそのまま持っていることで、ひとくくりに無意味・無駄と決めつけてしまいます。

でもそれは時代に取り残されるという視点で見ることが出来ないことでもあり、経営として心配です。

では、最初は認証をとらないで仕組みを取り入れるというのはどうでしょうか。

恐らく多くの方はその認証基準を見て本当に必要?、これ現場では応用できないといった疑問があるでしょう。
指導員研修では構築のための方法を学びますが、疑問に対して細かく丁寧に教えるということは少ないかもしれません。
これは構築するという意識が高いからこそ学ぶという考えが見えるため、まだ半信半疑で研修を受ける場合その後の取り組みに大きな違いが差になり、認証を断念するという話も聞きます。

無理に構築していくと、現場との理解度に差が広がり普及しない、意味を感じない、経営に寄与しないといったせっかくの機会をなくす結果になります。

だからこそ、取り入れる物を導入してならすという考えもあります。
いきなり人権福祉はどうする?とか、環境保全をどうしよう?でなく、労働安全はどうなのか、農場管理を今より向上する、アニマルウェルフェアの考えを自農場に取り入れる課題を見つけるといった現場が必要で優先順位から見て高い物から検討することが一番の早道になると感じます。

認証は第三者機関が適切に行われているということを証明したもので、取り組みが世間に知られる機会を作ります。
知られることで、認証農場であることから関心を持つ企業や消費者が現れ製品認証の価値が生まれるのです。

でも認証を目標にしていくことも大事ですが、まずは足元となる農場への展開を意識するほうが得策で認証による効果より大きな成果を得ることが出来ます。

今日のお話から、認証は無意味だから普及しないという視点もよく話題になりますが、大事なことは農場への展開が必要になっていることがまだ知られていないことから、これでいいという流れが後になって大きな問題になる芽を育ててしまっていることに気づけるかどうかが大事であると感じます。

そうならないためにもJGAP畜産は今の時代に乗り遅れないような取り組みであると知ってほしいと思います。

確かに救急箱がないと問題、きれいな水がないと問題、トイレ後の手洗い場ないと問題と言われると、そこまで言われてその認証に価値を感じないといわれます。

でも、けがをしたら昔のように傷を舐めて何とかなるのか、砂や汚れ等での傷口を洗いたいのに洗い場まで遠い、トイレ特に大きな用事をした後鶏卵を触るという意識はどうなのか。
今はそれでいいのでしょうか。

重機も安全講習を受けてから乗車し作業することにコストを必要として意味を感じないという方もいます。
でも重機は車と同じで使い方を誤れば事故を起こし運転者や相手を死亡させるような事故にも至ります。

だから安全講習を受けて事故防止、機材の特性を学び事故を防ぐのです。
ただのライセンスではありません。
ライセンスに何万円も払うから意味がないと考えてしまうのでしょう。
視点がここで、もうズレているのです。

JGAP認証は視点を変えると今の畜産業に必要な情報を入れた認証です。

世間の常識、国際的な価値観、そして安全と安心な畜産物の生産と、鶏(家畜)への配慮という今までと時代が異なっている今を知る認証です。

農場の常識は世間の非常識とも言われてしまう理由には、世間とのずれが一番の要因です。

これを知ると、今の農場はこれで良いのか、今の農場は当たり前を当たり前として考えているのかといった当たり前をアップデートできます。

でも認証しなければこのアップデートができないということはありません。

基準書は無料で公開されており、誰でも取り組みを始めることが出来ます。
最初は出来ることから取り組みしても損はありません。
あとは今を知るのか、アップデートしたいのか。
という視点です。

皆さんの認証は意味があると考えていますか、それとも無意味・無駄というものですか。
考え方、視点を変えるときっと農場の価値が変わります。

初夏から年内に向けて農場HACCP認証の研修が多く開催されています。
代表的な機関である中央畜産会の指導員研修(基礎を学ぶ研修)は既に秋の開催回以降残り2回となり本年の研修もわずかになりました。

多くの方が受講され、農場へ展開し衛生管理とシステム構築に取り掛かるというところもあるでしょう。

農場が取得し保有されている数はおよそ460農場(令和5年1月時点農水省発表)となり、取得目的様々あると思いますが、皆さんの目的に向けて邁進されていることと思います。

採卵鶏を専門にご指導していますので、採卵鶏農場についてお話ししますが、農場HACCP認証は採卵鶏に限らずすべての畜種に対しても畜産物の安全や安心を得られるように危害を排除したシステムを構築されています。

ですから、採卵鶏以外の畜種にどのように展開するのかを参考にしながらご覧ください。

さて、採卵鶏での認証数は105農場となります。令和5年の畜産統計によれば農家戸数(1000羽以上飼養する戸数)は1810戸で全体の約5%にあたります。戸数と認証農場数は同じではありませんので戸数から見て少ないと見ると良いでしょう。

では、その約5%しかない農家さんはブームで取得されているのでしょうか。
それとも目的があるのでしょうか。

採卵鶏は大型産業と言われ、飼養羽数は年々増加していきます。
1戸当たりの平均飼養羽数は75000羽、飼養羽数の規模別で見ると10万羽以上の飼養をしている農家が全体の8割と大規模化しています。

農場HACCP認証と言えば安全で安心と言うキーワードを耳にします。

確かに畜産物の提供には安全であり安心でなければなりません。

では、生産者は安全であり安心な畜産物を消費者まで確実に届けるようなシステムでなければならないのかと言えば、それは困難であると言えます。
物流が発達しそれぞれに役割がある時代、生産物が完全に安全で、流通過程に流れる場合冷蔵輸送、先入れ先出しといった商品の品質保持といった配慮も必要です。
これは生産者ができる領域ではありません。

販売先も温度管理が適切で、消費期限内で売り尽くし品質劣化を避ける行動もなければ安全であるはずはありません。

安全であり安心とは、生産者側流通過程が決めるものではなく、消費者が購入し消費されて初めて安全であり安心であるということです。

ですから、農場で出来る安全であり安心とは生産過程で危害要因とされる品質不良、異物混入、生産の原動力となる家畜への安全性も大事な点になります。

そしてここを意識していただきたいのは、生産の段階で不良状態があると、流通ではじくことはできず、消費者へ渡るということです。

消費者に渡ったということは、これは苦情に至り製品回収になるということを意味しています。
つまり不良品が発生したという現実になります。

現在、製品回収になる事例は消費者庁に届け出て告知されます。
一昔前は地域の県単位で告知だけでした。

ですから、回収店舗と県単位の告知程度でしたから、広い範囲に知られると言うことはありません。
生産側は自然相手だから仕方ない、不可抗力は免責される事例と考えるかもしれません。

でもそういう問題ではありません。

食品は安全であり安心という前提で購入します。
加熱して食べるという場合もあるでしょうが、鶏卵の場合生食で食べるということもします。
当然生食できるような安全性は必要です。
ですから生食できるために衛生管理を行い、鶏卵に入り込む例えば食中毒菌(サルモネラ菌等)を寄せ付けないことも当然ですが、品質劣化防止も必要です。

食中毒菌(サルモネラ菌等)の排除以外にも品質劣化も安全上必要なはずです。

腐り玉(腐敗卵)や薬剤残留による食品衛生法に違反する管理もあります。

多くは、季節による不可抗力や多くの農場で寄生虫を防除するために必須だから仕方ないと捉えがちです。

でも食品の安全という視点で見ると、本当に不可抗力なのかという点まで考えが至る農場は多くないように見えます。

例えば、数年前千葉県では腐敗卵の販売が発生し、店舗が回収するという事例があります。
詳しくは弊所のブログから参照いただきたいところですが、この事例の場合では、店舗側が腐敗卵の苦情が消費者よりあったと旨県に届けています。
つまり何らかの過程に不備があり安全でなく、安心できない事例であるということです。

これを生産者側が悪いというだけで片付けるわけにはいきません。

流通過程や箱玉業者が先入れ先出しせず品質が劣化したということも考えることもできます。
又は店舗で販売する際に傷が入り劣化してということもあるでしょう。

ただ、腐り玉という場合の多くは常温で長いこと放置された場合に見られますので、生産サイドで問題があると考えることもできます。
そうなると、農場の管理はどの程度だったのかという課題が見えてきます。

1日1万個、10万個生産したうちの1個でしょうと言うでしょう。

でも品質不良卵が流通過程を経て消費者に渡り、喫食時に発覚したという事実に何ら変わりはありません。
不良卵は何であれ不良卵なのです。
結果がすべてで過程はどうでもよいのです。
現実は不良卵です。
(農場HACCP認証ではその原因究明は必須です。つまり繰り返すことをしないという意識です)

この認識の差が安全であり安心な鶏卵を作るという意識の差になります。

確率が低ければ免責される、やむを得ない、仕方ないでは恐らく高確率で安全な鶏卵ができるでしょうが、防止策がないので事故が起きて騒ぎになるという事例になる典型的なことかもしれません。

農場HACCPの価値とは何でしょうか。

多くは意味を感じないという農場も多いと思います。
でも食品事故を防ぐためには生産者側ができる当たり前のことは、認証があるなし関係なく行うべきものです。

ただ鶏が卵を産み回収してパッキングすればよいという、他人任せ的な発想は今お話しした危害と呼べる(サルモネラ、腐り玉、薬品残留等)に対応できていないと言えます。

バタリーだからサルモネラ菌は存在しない(はず)、腐り玉は高確率で発生しないし区別できないからやむを得ないもの(免責されるもの)、薬品残留は寄生虫や病気対策上当たり前のことであり防止策は存在しない(そもそもそうならない管理を想定していない)といった課題や意識の不足が存在しています。

その安全という言葉から必要とされるシステムを農場HACCP認証が決めていて、そのためには農場が展開できる方法を自身で考えさせて実行させるのがこの認証のメインになるのだと感じます。

その方法は弊所のホームページにも書きましたし、ブログでもお話ししていますから省略しますが、例えばバタリーだからサルモネラ菌は存在しないというのも今の時代本当にそうなのか?と感じます。

鶏糞に存在するサルモネラ菌はついばむことで鶏に入り込み鶏卵に移行してインエッグと呼ばれる鶏卵になるとされます。
でもバタリーは確かに鶏糞と鶏が分離されて危害を小さくしていると見えますが、昔の高床式のように糞が鶏に戻ることがなければその通りかもしれません。

でも垂直ゲージが主流の場合の鶏糞は集糞ベルトを介して外に異動させます。
ベルトは表面と裏面を循環して動きますので多くの場合表面の鶏糞がいなくなり裏面として移動している場合の多くは鶏の頭上を動いています。

この時100%鶏糞がなく真っ白なベルトであれば鶏糞との分離はできているでしょう。
でも多くは剥がす板で鶏糞を取り除きますが、完全ではなく時間とともに板の劣化が進み取り残しが存在します。これを鶏がついばむとバタリーの中で糞の喫食が発生します。
そうなるとバタリーは安全であると言い切れません。

でも高確率で発生しないから意味がないと多くの方は言います。
問題は品質事故は起こる確率は低いが発生時は甚大になるという視点を農場自身認識できているのかということです。

そんな確率が低いものにお金を投じる意味を感じないという方の典型的な論理ではありますが、被害を出した農場はその後どうなったのかという点まで知る人はまずいません。

それはうちの農場の話ではないから関心がないということが要因です。

でも今回のような事例では生産側の問題を箱問屋が検卵しても見つけることが出来ず消費者に渡り、店舗が回収と届け出をしています。
商品の納入は停止しましたし、その後の回復も容易ではないでしょう。

鶏卵は今は不足しているからそんなの1か月もあれば回復するという人もいるでしょう。

そんな甘い時代ではありません。
今店舗では皆さんの農場しか商品を提供していないというところはまず見たことはありません。
規模が小さく個人商店であれば別ですが、まずまずの規模では3,4種あるいは5,7種程度の鶏卵が棚に詰まった状態で売っています。

1つ取引先が停止してもまず問題はありません。
鳥インフルエンザで販売先は学習しています。○○県産、△△県産といった複数仕入が主流で問題を回避する準備をしているのです。

では、うちは大きいから取引は止まらないよと言えるでしょうか。
お店は大手企業と認識しているのならば有名な東西の大手養鶏場になるでしょうから、それ以外は「大きいでしょうね。多分」という程度になるはずです。
繰り返しますが複数納品がある店舗では1つくらいは誤差のうちです。

現実として不足が生じた場合商社の子会社である餌メーカーの系列農場から仕入れができる現在では、自分が大手と言って満足しているぐらいでは大手ではありません。それは他社が決めることで自分自身の評価は意味がないということです。

そんな無意味な話をするより、最初から問題を排除した農場システムを構築した方が有意義です。

農場HACCP認証はその意識を改善させ、安全である畜産物を作る取り組みをさせます。
そしてそれが安心と言う価値を生み農場は安全であり安心な畜産物を作るということにつながるのです。

それを意味がない、費用対効果から無駄、そんな余裕がないで片付けるのも農場の考えであり正解でもあるでしょう。

でも品質劣化や法定伝染病発生は大きな経営トラブルに至り長く影響を受けやすいということを知る経営者はそんなもの無駄とは言わないはずです。

でも一部は知らないからそれが主流になる。とても心配なことです。
確かに5%ぐらいの認証物にここまでこだわること自体変わり者と言われるかもしれません。

でも1日10万個の鶏卵から1個でも不良卵が発生すると大きな影響を及ぼすことを知ると、確率論で片付けるよりそうしない方法を考えた方が費用対効果から見ても得策に見えます。

後はやる気があるのか、そうでないのかの意識の差になっているのだと感じます。

鳥インフルエンザといった農場への侵入措置も農場HACCP認証を使うことで飼養衛生管理基準の適合や危害を入れない方法、増やさない方法も構築できるはずです。

どうしても畜産業では認証物はマイナーな物と捉えられてしまうものですが、本当に農場を安心して運営するには、このシステムを取り入れることが自己流で行うよりシビアで無駄をなくしているように見えます。

弊所は指導する立場なので偏っていると思われがちですが、農場を知るものから見ても今の農場は意識レベルは大きな差があるのもまた現実です。

その意識の差はただの差で済むのか、その意識はもしかすると数年先大きな差になって農場存在の価値まで大きく差になっている可能性もあるように感じます。

皆さんは認証というとどのような物と感じますか。

厚生労働省の中央最低賃金審議会は28日令和5年度の最低賃金額を全国平均で1002円とすることとしました。

これにより全国4区分の賃金地域を3地域に改編し、都市部のA地域、中間都市のB地域、地方部のC地域と改めています。

さて、今回から上昇する予定額は
A地域は41円増し
B地域は40円増し
C地域は39円増し
とそれぞれの地域ごとに40円を中心に上下1円の設定を予定しています。

まだ正式決定したものではありません。

これから、各地域での上昇見込み額について検討が行われますのでこの金額を下回るという事例は見たことはありませんが、この見込み以上に設定することを地域が決定することもありますので、農場で雇用される従事者の方が、今より最低で39円、最大41円まで加算しても今の時給換算で問題がないか、今のうちに試算しておくことをお勧めします。

多くは10月の早い段階で施行されますので、遅くとも10月下旬に支払う給与には反映しておく必要があります。

最近は、機械計算で総労働時間だけ入力すると支払う税込額を計算するソフトでそのまま点検せず支払い後で問題になるという事例もあるようです。

過大に支払うから細かく計算するが、過少はザルでいいでは、少し農場責任者としては残念なところです。

そして畜産業ではあまり聞くことはなくなりましたが、時給1000円では経営ができないという産業やお店があるとも言われます。

特に飲食店は解雇を強く進めた産業でもあり人を急募してもなかなか集まりません。
その要因に、もともと好待遇ではないことで、今更急募されても他の産業のほうが働きやすい、時給を上げても閑散期では希望時間まで就労できないこともあり、月の収入が不安定であり、あまり期待する業種ではないという声も聞きます。

つまり、他産業も人を求めているのであり好待遇であれば人が集まるわけですがその条件を提示できないという深刻な状況であるということを知っておくべきです。

畜産業でも最低時給+1円単位の端数切り上げ程度の募集で人が集まると考えているところもありますが、この先は965円なら970円といったものではありません。

965円で39円増しとなれば1004円となりますから端数程度とはいきません。

1004円なら他は1010円、1050円、1100円というところも出てきます。
そうなると、うちは1004円を死守するでは中々人は集まりません。

そうなると経営は厳しいから人減らしをする、退職者の後の補充をしないといったコスト増を防ぐというところも出てくるかもしれません。
でもよく考えてみると、今までの賃金で人が雇用できたのはその賃金が高いからでしょうか。

そうではなく、職を探した結果そうなった程度であり賃金が高いからではなく、近所である、仕事時間が希望通りであるといった要素であるはずです。
つまり他に希望条件に合致したときは乗り換える可能性があるということを知っておくと、これからの時給上昇は高い物と言っていられないということです。

今までの時給例えば960円は本当に高額だったのでしょうか、1004円になったら高給取りでしょうか。

労働者側はそうは見ていません。

雇用者側は本音を言えばあまり高くない賃金で、長い時間を働いてもらい、休日も土日は必ず勤務可能であるという希望があるはずです。
そうなれば、年末までいわゆる年収の壁も到達せず、労働時間調整も発生せず、そして賃金も最大年間100万円まで見ておけば良いといった所でしょう。
そんな視点はないという声もあるでしょう。

でも賃金は最低時給の端数加算はなぜそのようにしているのでしょうか。
そもそもそんな端数加算はしていないという潔い農場もあるでしょう。

その根底はいかに安く、退職しても補充が見込めるから高額で雇用する必要がないというのが理由と思います。

その分を社員や経営者に還元したいと言うでしょうし、結果はそうなっているはずです。

農場を見てみると、しっかり働いているのは社員という日本人であるという視野しかない経営者もいます。

でも筆者は農場を多くみている立場から見ると必ずしもそうではないという感じです。

確かに社員は1日の就業時間内を働きます。
1日8時間というところもあるでしょう。
でも時間給の人は集卵のみをするからせいぜい5時間までといった所もあるかもしれません。

その3時間多く働くから過剰に多く支払うというのも、どうなのでしょうか。

社員とされる日本人以外に外国人技能実習生もいる農場も多いと思います。
その方に主たる仕事を振り分け、日本人社員は何をしているのか。

そして高給取りと揶揄される幹部社員は日本人社員より更に多くの賃金を支払います。
ある農場では2人分の社員給与を1名の幹部社員に振り分けます。

当然財源が安定していなければ話になりませんが、畜産物は相場値引き取りが基本です。
鶏卵でも固定価格はありますが生涯一定ということはありません。

つまりどこかで、相場の下降がある時に収入の減少という影響を受けることになります。
でも人件費は安易に切り下げることはできません。
法令に違反するからです。

でも厳しいとなった時、経営者はどうするのでしょうか。
多くは間違いなく、欠員補充をしないということです。
雇用はコストになり支払いという出血を止める必要があるからです。
このような段階まで至る時多くは経営コンサルに相談して同じような回答をもらうはずです。

そして、既存労働者に対し次に行う削減に、諸手当の見直し又は廃止、残業時間の許可制という基本給を触らない法令違反にならない対策を次々打ち出すはずです。
でも手取りは確実に引き下げるという出血を止める方法を推進していきます。

この時点で更に人の離職が進み、限界人数に至ることもあるでしょう。

多くはこのようなところまで落ちぶれたときには廃業を選択するのですが、農場の多くは先代が築いた大切な名前を消すことはできない。
だから今は苦しいが踏ん張ってほしいと泣き落としをするはずです。
でもそうなった農場の多くは元には戻りません。

そのまま低空飛行してかろうじて延命してるだけで、返り咲きすることは見たことはありません。
返り咲いたと感じる時は、高相場に当たった年だけで、通常では赤字が、餌代が、人件費が、来月の支払いがと出費の重さを毎日痛感し、相場高の時にお酒を深く飲むように忘れ、また現実という年に戻り繰り返していき、延命しているということすら忘れていき毎日を過ごしていくというのが実情になるでしょう。

でも先代が、名前が、地元の期待がと理由をつけて細々延命していきます。
でも経験から返り咲くことはありません。
こうなっても、もがく姿は大変苦しいと思います。

では、どう考えるべきでしょうか。

人件費はコストであるという視点で見ると、どこまでいってもコストしか見ることはできません。
だから1円でも削減したいし無駄な物に支払いをしたくない。
でも人が働くことで家畜が成長し収入になる。
歩留まりの良い畜産物を作る方策を見つけ、実行し収益を上げるわけです。

ですから、コストと考えると一番安いのは人を雇用せず経営者のみで農場を切り盛りすべきです。
でも大変だから人を雇用するはずです。

この視点です。

では、農場にいる雇用者は皆さん全力で取り組みをしているのでしょうか。
高給取りの人ほど作業と言う力ではなく、頭を使う知力を使って何か貢献しているのでしょうか。
家畜や畜産物は餌を与えれば売り物になるということはありません。

確かに売れるでしょうが、歩留まり、等級といった収入ランクがあるはずです。

その高ランクにどのように生産を合わせていくのかという知力があり、そのために体力を使っているのでしょうか。
そもそも作業をする従事者と知力を使う管理者という明確な仕事分担があり賃金に差をつけて、期待値を高め企業に還元する。
その区分すらない農場もあります。
当然作業をする従事者に管理者も混ざり、ただ高い人材しかないという経営者の見立ての悪さもあり、これを改善せず賃金が高い、労働に見合う給与水準ではないと嘆いているところもありますし、そもそも気づいていないが月のトータル収支はなぜかマイナスになると首をかしげているだけのところも見ます。

一般的に人が多くなるほど、作業場率が下がります。
それは1人で出来る仕事を2人で行う、3人で行うという作業ムラが発生してしまうからです。
そのムラは、新規作業が増えない限り人の増加と比例してムラ無駄が生まれて人件費は今日お話し額必要です。

それはやむを得ない農場コストでしょうか。

時給が見直しされるとき、賢い農場ほどそのリターンのために出来ることを考えてその方策を作り実行します。
それは、削減よりも生産上昇を意識しているのです。

でもそのための知力がない時、多くは無駄なことに1日を費やし無駄を作りムラを作り「1日頑張った」と残念な農場に至ります。
でも生産量は変わらず人件費は上昇し、これを高騰と呼びます。

でも違うのです。

人は考えて動くことで新しい知見が生まれ、それをイノベーションと呼び新しい時代に合う製品を作ります。
そのための人材はコストでしょうか。

そう考えられないのであれば、コスト増だから人件費を上げることは経営にとても厳しいだけで、恐らく何も変わらずコスト増という出費だけを見て何かできる機会を見いだせないでしょう。

一つ残念な話をしておきましょう。
その農場は人件費を上げてとても苦労をしています。
そのため人件費を賄うためにも、作業者に効率化を求めたそうです。
その効率化のため何ができますか、と経営幹部に尋ねたところ、知識がないため「何が問題なのかわからない」「家畜が悪いだけだから、そうしないようにしよう」と言いました。

とても残念なことです。

その背景には家畜を飼育するという基本がなく、それがなくても年数が経過でき経営幹部になれたという残念な人事異動をしていた経営者の無知がありました。
今の飼育環境も自動化が進んだことで機械が家畜を育てると錯覚してしまうようになり、飼養管理技術はいらないという誤認をする農場も多くなりました。

作業者は畜糞を片付けすればよい、他は機械が自動で行うから不要という程度です。

そして家畜の経済的な改良も進み以前より歩留まり、等級上昇も期待できるようになっているのに、以前と同じで多少は良くなったが、他は以前よりだいぶ良くなったという違いに気づけない。

当然収入に差が生まれますが、その違いは横並びではないため気づくことはありません。
でもある日よその農場よりなんか少ない実入りのようだ。その違いは何だろうと気づきますが、その答えを出す人材はいません。
だって人材は畜糞を片つければよいという程度しか育てていないからです。

そしてコストは上昇し、数年に1回の好景気で収入は何とか安定していたのですが、飼料高騰、畜産低価格で実入りが悪くなり台所事情が悪くなりどうしようかと経営者が本気で悩み解決策を模索していた時の話です。

でもそれを統括する人材は気づく力もなく、解決策もなく、課題が見つけられない。
それで人件費をたくさん上げていて本当に良かったのでしょうか。

そしてこれから上昇する人件費上昇は本当に有意義なのでしょうか。

皆さんは人件費上昇はコストですか。
それともこれを機会に飛躍するためのスタートという意味でとらえることが出来ますか。

大手中古車自動車販売店による保険修理費の水増し請求と販売によるトラブル、そして頻繁な降格人事による企業体質の問題と様々な課題を見せている販売店で25日経営者による記者会見を初めて開きました。

その中でお詫びの話の後に続く問題点として、調査委員会がまとめた報告書の中の「無理なノルマの設定、コンプライアンスの機能不全、忖度するいびつな企業風土、現場の声を上げない風土、人材の育成不足」の5点を指摘されたことを改めて公表しました。

今回の問題点は会見で終了することはなく、26日に国土交通省からの聞き取り調査もあり道路運送法違反の疑いもある不正車検といった、自動車交通の根幹を揺るがすもので国も本格的にその背景を探る方針でありもうしばらくは自動車販売店の企業風土に関する話題は続くことになります。
また金融庁も不正保険請求をしている疑いから何らかの動きがあるのでしょう。

さて、畜産業を見てみると今回の事例と重なる部分が多いと感じます。

経営者は初代が農場を設立して飼養頭羽数を増やしていき、子供に託すという流れ。
この中古車自動車販売店も初代社長が地方で自動車会社を開き規模を大きくしていき全国レベルまで育てて子供を専務に配置して次の世代を育てていました。

よく聞かれることですが、「経営者は欲と二人連れである」という言葉があります。

欲と二人連れとは、経営者はお金をどう稼ぐのかという視点があり、就業時間関係なく自分が満足できるまで仕事を続けてここまで大きくさせたという自負。
でも従業員は自分自身が成長するとともに、就業時間内でいかに作業性を上げていくことに注力しており、無理を続けることを前提としていない労働という考え方の違いがあり、欲に付きまとわれている経営者に対して使われる言葉です。

だから多少の無理は従業員もするべきだし、そうしないと成長できないという神話ができてしまい押し付けるということがあります。

従業員は農場を大きくしたいというより、今よりは大きくなっても良いが無理をするものではないという意識のずれに気づかないという風土にこのような「欲と二人連れ」という言葉が当てはまります。

そして中古自動車販売店での頻繁な降格人事には副社長である子供が主に関与していたという事実も会見で公表しており、父親である社長は「創業当時から人事に関しては、この人ならばできるだろうという抜擢人事で、仕事をしてまだ十分な力がないという場合は降格するというものです。ただし敗者復活はあり、その繰り返しをしている社員教育である」とされます。

経営者の子供による降格処分には「ついカッとなって降格処分を行った」というもので、何か琴線に触れると降格人事を発動していた傾向が見られます。

それを裏付けるような報道には上層部のラインから「商談しない、アプローチしない店長は何をしているの?」「必要ないなら人が足りないところに異動させますかね」というコメントを副社長の名前を付けたアカウントでつけています。
これは、副社長という肩書をちらつかせてプレッシャーをかけることを意味しており、たとえそのつもりでもないと言っても通用しない事例でもあります。
そして怖いのは、これをプレッシャーをかけていないという自認です。

これも良く見るもので、子供は親が敷いたレールから外れることがないため大きく発展した自動車屋や農場は引き継がれるときは何の苦労もなく当たり前の状態で手に入れることから、これを揺るがす時に琴線に触れて激昂したり、降格したりという発言をよくしてしまうということもあると聞きます。

よく聞かれる「お前辞めてしまえ」というキーワードを多用する二代目によく聞かれる事例です。

そして周囲も「二代目は大きくさせることが出来ない(会社をつぶす)」と揶揄されることもあります。

経営コンサルタントに相談する場合の多くは、中小企業では社長のみが経営のかじを取るため様々な悩みを抱えるので、二代目社長は孤立しがちであるから暖かく見るべきと助言するようですが、本質を見ているのかはわかりません。

多くは古株従業員から二代目の器であるという認識を得られていないということもありますし、今回の事例のように先代はワンマン経営をしていることで、従業員自ら動くと叱責等で消極的になり指示待ちになる風土もあると思います。

そして二代目に対しての会社や風土に関して先代が教えることがないことが一番に要因で、経営者だから下は付いてくるからダメなら入れ替えればよいという風潮で、元は家族ではじめた農場なのだから部外者である従業員にはあまり思い入れがないため期待しなければそれなりに処遇するという人・モノ・金という基本のうち金やモノには有難がりますが、人はスペアーを補充すればよいという認識でそもそも育てる(教育する)という概念が抜ける傾向が見られます。

必ず相談相手を見つけようと助言されるようですが、多くは相手が自分を理解しているのかというレベルで人を見ることが出来ない二代目である場合もあり、耳ごごちの良いイエスマンを集める傾向があります。
イエスマンで固めるべきという論調の人もいますが、偏る経営ベクトルは多くは今は良くても少し先で行き詰ることも多く見られ、その時そのイエスマンから下位の者が生贄にされるという流れがあるように感じますので、経験から見てどのパターンであってもよい結果には至りません。

よく言われる「フィルターで見ることしかできない」という状態で、代替わりでは良く見るもので珍しいものではありません。

皆さんの農場ではこういうことはないと思いますが、筆者はこれに近い農場を見たことがあり事務所を開く前に見た農場がまさにこれでした。

筆者の知るその農場は、ある県では規模は大きくないが、地域では知っているという農場です。
創業は50年を経過しているでしょうか。
先代が庭先に鶏を飼育して自宅に小さい鶏舎を作り採卵鶏を飼育することから始まったと言います。

そしていつしか何十万羽という規模まで大きくさせ、二代目である息子に譲ることになります。
二代目は農場での作業経験はなく古株従業員から社長ではなく「おい○○君」という名前で呼びます。

当然面白くもないでしょう。
先代の父親もその古株従業員を快く思わなかったのかもしれません。

月日が流れ定年年齢になった時、嘱託扱いにして事実上の降格を行い給与を適正とされる水準まで引き下げます。
当然収入が激変しますのでそのまま退職していくわけですが、それを喜んだのは二代目の父親であったと感じます。

二代目は新しい右腕を求めますが、見てみますとイエスマンを周りに置くようになります。

確かに右左がわからないので、耳ごごちのよい言葉に惹かれるのでしょう。
その無知による代償は大きいものでした。
古株が行っていた作業や顧客といった大事な財産を失っていきます。

特に畜産農家は畜糞の最終排出先として堆肥を農家に頒布しているわけですから、顧客はとても大切ですが、二代目は何を基準にしているのか能力的に・・の人材をその任につかせます。

当然顧客は大事ということを知らないので、依頼を忙しいから受けない、自分が見つけた顧客を優先にしてしまい頒布機会を失っていきます。
農家の高齢化で顧客を失ったと言われるようですが、多くはその関係が切れてしまいただ販路を失っただけという事例が多いと言えます。

そして農地を貸地にしている農家さんになり堆肥を紹介していただけないことでますます縁が切れていくというところまで見える経営者もまずいないでしょうから、高齢化で仕方ないと信じてしまうのです。実際その畑は耕作放棄地になっているわけではないのにです。

農場もこの人が・・を農場責任者に据えていきます。
当然作業性や飼育基本がないため生産は右肩下がりになります。
でも数年に1回は好景気が訪れるため、まあ収入は何とかなるのでしょう。
その二代目は父親に負けない羽数を飼育する農場を新規に開場します。
金融機関も長年返済が滞ることがないので融資可としていきます。

二代目はこれに満足したのでしょうか。
新しいビジョンなるものを発表します。
それは「チャレンジ」です。

会社を大きくさせるためにはチャレンジが必要であると。

でもその方法は不明確です。
でもキーワードだけは明確でした。
チャレンジ
いい言葉です。
でもその時代背景がまずかったのです。

時は2015年で丁度ある家電メーカーが同類語を使った不適切会計をしていることが社会問題化していた時です。
それは現在破綻寸前の大手電気メーカーの言っていた「チャレンジ」というものです。

これは2013年ある家電メーカー社長が行った「必達目標値」を指す言葉にチャレンジという隠語を使ったのでしょう。

この経営陣は「実現可能なレベルで各カンパニーに要請している言葉で、努力出来る目標であり挑戦することを肯定する」意味で使われていたとされます。
ここでも経営陣は「経営陣がプレッシャーをかけるのは当然」と発言しています。
そして記者会見では「経営陣として深く反省しなければならない」としています。

不適切会計問題の背景にある言葉です。

これも企業風土がとてもよくない状態で、チャレンジを強要する職場で、目標達成が難しくてもプレッシャーをかければよいという企業理論になります。
当然目標に到達するにはまっとうな手段では困難なので・・ということになります。

中古自動車販売店同様にここでも企業風土の悪いところが前面に出ている事件でもありました。

これを推奨しようと二代目は考えたということです。
農場責任者に「チャレンジ精神は不可能を可能にできる原動力になる」ともっともらしく話しますが、その方策は示されません。

つまり何か自分で考え貢献しろということです。

それを会社組織は当然であると今感じた方は少し時代が古いと言えます。

今の時代無理をさせる、そもそも犯罪を誘発させる言動は企業価値を大きく毀損し、そのような企業の1つ2つが淘汰されても残念がるような時代ではありません。

そしてニュースをよく読めなかったのでしょう。
その先には家電メーカー1つが吹き飛ぶぐらいの社会ネタになっているのにです。
もう少し広い視野があれば違う結果があったのでしょう。
その家電メーカーは買収事業の失敗で大きな損失を計上し、半導体といった稼ぎ頭を売却し細々した状態で何とか機能しており、国内ファンドが資金を補うことで破産を免れた経営が続いています。

さて、経営者は農場を大きくすることがとても大事であるというのはその通りです。
でもそれを維持するには、大きくしていくだけではいずれ行き詰ります

大事なのは品質が消費者に受け入れてもらえるような時代に合った商品の供給です。
その方策を示せることが経営者の本当の器であり、それこそがチャレンジだったのではないかと感じます。

過剰生産は相場低下の要因です。
2015年以降しばらくは供給過多の時代でもあり鶏卵相場優れない時代でした。

今のように、餌代をどうしようか。そう考えていた時代です。
今も餌代が高いから餌代どうしようかという時代です。

時代背景が似ていますが、今は相場高で本来は十分吸収できるのですが、経営の描き方が悪く、無駄な雇用と無駄な幹部社員の登用で、人件費も相応に高く利益を食いつぶしているという農場もあります。

でもそれは問題ではないと言い切ります。
みんな平等なことはできない。経営幹部は高給取りであるべきだ。
だって一般職とは仕事が違うのだから。
それを「不平等は最大の平等である」と言います。

でも言葉が間違っていると言えます。

不公平は最大の平等である」と間違えているということです。

確かに役職の在りなしで差をつけることは不平等と聞こえますが、一般職と違うのでそれ相応なので平等と言えるでしょう。
でもそんなこと改めて発言するものではありません。
それより、役職があるのに仕事をしているのか?という視点で見ると不平等ではなく、不公平なのではないかということです。
つまり改めて言うところが使い方を間違えているということです。

では販路を広げるとなるのでしょうが、そんな都合よく販売先は見つかるわけはありません。
恐らく幹部職員でも見つけることはできないでしょう。
出来るのならば、世の中の養鶏場はみんな幹部職員を作り販路を広げるはずですが、そんな甘いものではないことは業界皆さん知っていて苦労していることではないでしょうか。

では相場値引き取りの加工筋で良いと舵を切る農場もあります。
でも加工筋の引き取り値は高い物ではありません。
確かに引き受けはしてくれますが、高価買取ではありません。

テーブルエッグが収益のベースであるのに加工主流では・・という視野が狭い経営者もいます。

いずれも今の時代を理解できていない、相談相手に恵まれない、そもそも身内企業であり社会通念がわからないという事例もあるように感じます。

でも根底には、それは良くないという公平という視野がないことが一番の原因です。
それを知る機会がない、教育がない、そしてそれを忠告する人材がいない。
だから先駆者が作った組織、大手企業のチャレンジといった都合の良い物を拾い上げ当てはめて失敗するという姿があります。

どうしても経営者になると自分の目はいつも正しい、だから見誤ることはない。むしろそれに立て付く者は異物であり分かり合えない。
だから辞めろ。
あるいは人事降格して排除するという流れになるわけです。
経営サイドの無知がここまで大きくしてしまうと言っても過言ではないと言えます。

中古自動車販売店はこの先どうなるかはわかりません。
既に一部この中古自動車販売店にある民間車検検査場としての認定が不適格をうけており認定取り消しとなっています。つまり販売していても2年に1回の車検はできないというイメージ悪化もあります。

中古自動車の販売という個体が異なるからこそ信頼関係がないと売買が成立しない分野です。
そこにも不振があるらしいという報道。
恐らくしばらくはとても厳しい時代になるでしょう。

中古車は安いものだからそれでいいでは、逆に気持ちが悪いというのも現実あります。
ではよくないのに高額販売では、信用が著しく低くなるでしょう。

その難しさが中古自動車にはあります。
車体の傷はわかるが細部はわからないからこそ信用があることで売買が成立します。
お金がない人だけが顧客ではありません。

昔は走行メーターの巻き戻しは当たり前、水没車をシレっと売り払う。
事故車とされる重要フレームまで損傷した自動車を修理して、事故車ではないとして売り払う等・・
そんなよくない噂もありました。
だから業界もイメージを損なうことがないような販売を続けていたはずです。
でもまた大きな傷を作りました。

農場はどうでしょうか。
大きくすることは消費者にとっては別に関心はありません。
商品を買う時欠品でなければ良いだけです。

そしてその農場の畜産物でなければ困るということはありません。

つまり、規模を大きくして、儲けるということは消費者のためではありません。
多くは農場が存続するための条件にすぎないのです。
それを無理に大きくして、何か違法性を誘発するような企業理念ではそう長くないうちにこんかいのようなひずみが生まれ、何かよからぬ事態にもなりかねません。

この先畜産物も消費人口が少なくなっていくことから多くは供給過剰に至る可能性もあります。

その時、あの農場は確か昔チャレンジしていたところだね。
うちの販売店に置くにはどうかな。

そうならなければいいのですが。
目先の利益を追うと大抵後で大きな支払いをすることがあるようですが。
そして大手企業の取り組みに異常にあこがれるという姿も思い出深いものでした。
それ以外にも自動車メーカーの整理整頓方式を取り入れるも、農場内に浸透できず乱雑のままという、取り入れる方法まで検討できない浅い知識とイエスマンの理解度の未熟。
その根本まで検証できないというフィルター・・


そんなことを思い出す今回の事件でしたが、多くの農場はそんなことはありませんが、一部は残念ながら存在するという現実もあるのです。
恐らく、お話しした農場の責任者は「この中古自動車販売店での車は買わないことにしよう」という程度でニュースを見ているのでしょうが、では農場内はどのような姿なのでしょうか。
そういう視点で見る機会はないのだろうと思います。

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