日本チェーンストア協会が発表した6月の販売概況では、食料品全般が前年比96.5%と減少に転じました。
総販売額(食品の他、住居関連品、衣料品等を含めたもの)は前年比99%と1%の減少になります。この点が10か月ぶりの減少といわれるものです。

食品取扱のうち、最多扱いの豆腐やヨーグルト等その他食品が前年比97.4%、総菜が98.5%、農産品が前年比95%、畜産物が95.4%となります。

要因には、巣ごもり需要が一服したことがある、物価高の影響が一定程度あるとしています。

畜産物では、鶏卵はまずまずの動きであったものの、牛肉・豚肉・鶏肉が弱い荷動きであったとしています。
加工畜産物(ハム等)も動きが鈍いとしており、畜産物そのものは3月以降前年割れが続いています。
これは、巣ごもり需要がなくなったことが要因とも見えますので、その通りなのかもしれません。
しかし、物価高による影響も否定できません。

国産牛肉ロースは100グラム当たり全国平均価格844円です。
昨年は859円で、一昨年は843円、その前は845円とおおむね平年並みの販売価格です。
7月は下がる傾向がありますのでこれより安く荷動きが心配ですが、高騰しているわけではありません。

輸入牛肉は、全国平均価格は最高値324円です。
昨年は283円、一昨年は289円、その前は296円と右肩上がりです。特に2021年10月以降は300円台に入り、急上昇が続いています。
ご存じの通り輸入牛肉の値付けは、仕入れ後3か月後あたりに反映されるといわれます。
つまり現時点でも高い場合はその3か月後までは値段は高く推移するということです。

豚肉はバラ肉で243円で、ほぼ前年並みです。

鶏卵は、まずまずの荷動きのようでしたが、6月の平均価格は225円で、昨年の鳥インフルエンザによる供給不安時期の224円から227円台の時期に入ります。
価格変動が毎月あり消費者にとっては少し高いものという印象があるのかもしれません。
(以上小売物価統計調査による)

このように、畜産物そのものが価格上昇しているわけではない点が気になるところです。

国産牛肉は、消費低迷により需要低下から相場が下がる傾向があり、配合飼料価格の上昇等コスト増から経営を心配される声も多いと思います。
また、子牛の競り値も下がる傾向でこの先の農場経営が見通せないことが分かります。

鶏卵は、この時期にしては猛暑等季節要因がまだ大きくないことで比較的安定した需要があるように感じます。
ですが、この先の夏日、猛暑日が見られることから、例年通りの大玉高、それ以外は下落という傾向が散見されるように見えますので、相場が高いから安心というわけにもいかないように感じます。

そして、最大の販売先であるスーパーの売り上げが下がる点にも注意が必要です。

食品は、消費者が必ず消費するものではありますが、それは価格や代替品により大きく変わるということです。
例えば牛肉が高いとすれば、一定数は豚肉に移行し、豚肉から鶏肉へとシフトされるといいます。
ですが、近年の畜産物価格は高騰はないものの、安値圏で推移しているわけではありません。

鶏肉は価格の安い食品として見られる傾向があります。
確かに、秋以降は高値圏に移行しますが、その後は下がるというサイクルがあり、8月を底値にした動きがあります。
今年6月の平均価格は134円で、この3年間の平均価格と同じです。

食品は昨年から値上げが続いています。

あらゆる分野の値上げが進み、一部食品は前年割れの売り上げになっているようで、コストを転嫁することの難しさがあるようで課題も多いようです。

値段が高いということは、購入抑制に働く傾向もあり、多くの場合客単価は上がるものの、来客数の減少に至ることが多くなります。
外食の一部はこの傾向で、客単価は上がるが、長い目で見ると来客が少なくなってそのうち売り上げが横ばいか低下というサイクルにもなります。

この先は、観光需要もあることで畜産物の好循環が生まれるかもしれません。
ですが、観光需要も大事ですが、日々消費するための購入場所であるスーパーの売り上げ減少は、そもそも来客があって消費され、それが利益になります。

畜産物の多くは、スーパーといった大型店舗で販売されます。
自社で販売もあるでしょうが、それだけで出荷量全てが賄えるところはそうそうありません。
多くはこのような店舗に依存しているのも現実なのです。

大事なのは、販路先がしっかり顧客を集めて満足させることができるのかという点です。

高いから価格転嫁できないでは、店側の赤字で心配です。
価格転嫁して、安い店に流れて売り上げは上がるが、利益が少ないでも心配です。
安い店も爆売り上げアップということもありません。
顧客確保に真剣です。
利益は後からついてくるという戦法なのでしょう。

販売調査をしている私から見ますと、多くの店舗では来店客数が少しづつ少なくなっていると感じます。
レジが並ばない、通路ですれ違うことが少ない、駐車場の空車は多く感じるといったものです。

1人が1万円買ってくれていれば、100人来店すれば100万円です。
ですが、金額20%増し1人が12000円買ってくれて、本来は120万円となりコストもそれなりに吸収できるのでしょうが、70人来店では84万円です。
80人(2割減)でも96万円でも前年割れとなります。

来店数の少ないところも現実散見されます。
これがこの先どのようになっていくのかとても心配です。
既に地域密着型スーパーは店舗統合や廃業、同業他社へ売却と向かい風が吹いています。

生産者側ではどうしようもないものですが、つまりは消費者の行動でこのように変化してしまうというのが現在の姿なのです。

この先も、物の値段は上がるようです。
すでに秋に値を上げる食品も多くあります。食品に限らず家電の値上げも報道され、購入優先による影響も心配されます。
そのコストを転嫁するにはどのような方法があるのか。

一部お客様は言います。
「ここのお店は野菜は安いが菓子や日用品は高いから購入しない」
「ここは、肉は安いがその他は特に魅力がない店」
「値段が高く、特に良い点見られないお店で家から近いから面倒な時に利用する」
「現金しか使えない店で、便利でも何でもない」
このような声もあります。
皆さんのお店はどのような意見が多いのでしょうか。

もやしを1円安いために自転車に乗り30分かけて購入する人もいるといいます。
それは意味がない、時給は2円だと否定する方もいるようです。
ですが、少しでも安く購入するという自衛策に他人が意見すること自体意味がありません。
家事をされている方の多くは時給は発生していません。
調理をされても、洗濯掃除をされても同じです。
ですから時給2円も意味ある言葉ではありません。

確かに費用対効果という言葉もあります。
1円のためにそこまで時間をかけないで、その時間分を家事に使う、自分の時間に使うという選択肢はあります。
ですが、その方はその時間を1円を得るために時間を使うのであり無意味ではありません。
恐らくその方は、1円がないと明日の生活が成り立たないというより、1円安く手に入れるという達成感や、安く買い物できるという感覚を大事にされているのかもしれません。

本当大事な視点は、そこまで節約に努める消費者がいるという現実をどうとらえるのかということです。


今回のようにインフレを起こしたから国力が上がった、国民所得が上がったという事例は外国でも見ません。
つまり適正な負担構図ができていないのです。そのため多くの国では公定金利上昇をしてもまもなく終焉を迎える、景気後退が来年にかけて発生するという危険な予測が散見されます。
一部は事実とは違うのかもしれませんが、言えることは国民に負担増を押し付けることが限界に達しているということでもあります。
所得がわずかで、値上げも僅かであれば国民の多くはやむなく受け入れるのかもしれません。

ですが、値上げが高く所得が僅かであれば、実質賃金はマイナスです。
そのマイナスはどこかで補いプラマイゼロにしなければなりません。
ですから無駄なものにお金をかけないのです。

若い世代はこの苦労を見て育っており、コストが高く所有する意味のないものにはシェアやリースといった新しい文化が浸透していると思います。

この点もあり、例えば自動車等高額商品は半導体がないから納期が長く販売が低迷しているという分析もありますが、一部は高額で所有する意味を感じないということから買わないという人も存在するのです。
では、中古車は爆売かといえばそうでもありません。
日本自動車販売連合会の2022年上半期の販売台数は159万台と前年比93%となります。
新車下取りが少なく、販売車両が少ないとされていましたが、それ以前に販売数も150万台は2018年以降ありません。
地方では車は重要な足になりますが、都心部等交通機関が発達している地域はコストを見ても不要となっているのかもしれません。
それを裏付けるように、近年は法人向け販売を強化しているメーカーもあります。
ですが、その法人も訪問手段に車は少しづつ減少していると感じます。
コロナ禍でそもそも対面営業が不要になっているという流れもあるようです。

また都心の新築オフィスも空室率が高くなっているようで、つまりは都市部に事務所を構え従業員を集め作業してもらうための空間確保というメリットが薄くなっているという流れも起きつつあります。
ですから、このようなハウスメーカーはシェアオフィスとして、占有させる発想から共有させて入居者を獲得する方法へと変化させているようです。

このように時代が変わっています。

昔ながらの販売方法が通用できなくなっている産業が見られます。
AIに仕事を奪われるとされた話もありました。
ですがそれ以前に潮目が変わり仕事がなくなるということもあり得ます。

もっと広く視野を持ち良い経営ができるように経営者は今まで以上に広い知識と情勢を判断しなければならないのかもしれません。
そして私たち生産者も、畜産物にもっと付加価値をつけて「おいしいもの」「安全なもの」「皆さんと楽しい時間を共有できるアイテム」として魅力をつけていただきたいと思います。

畜産物に差別化が図りにくいのですが、できたときこのような潮目に必ず太刀打ちできる自慢の製品になることでしょう。