大手飲料メーカー社長が、団体のセミナーで発言したいわゆる45歳定年について、賛否両論あります。
経営サイドの意見としては肯定的であり、労働サイドでは否定的です。
人生100年とも言われ、70歳定年を国は求めています。
しかしホワイトカラー層については、この定年制に反対している傾向があり、
1従業員を長い期間雇用することは弊害が生じることから否定的な意見があります。

では、肉体労働者いわゆるブルーカラー層はどうなのでしょうか。
畜産業は基本的にブルーカラー労働者になります。
管理する幹部社員であっても同じで、1日中机に座り何かをしているということはありません。

基本的に農場の管理に責任があることから、ただデータを眺めているだけでは仕事にはなりません。
観察する力、分析する能力、従業員の負荷状況や外注委託の手配やスケジュール管理等仕事は多岐に渡ります。
ですが、一部の中堅以下の農場では、従業員と同じ作業員となり、同じ仕事をして、経営幹部からの伝達をただ農場内に伝える残念な幹部も存在します。
いわゆる伝書鳩の仕事を農場長の仕事と捉える変わり種の組織も存在し、基本がなかなかわからない農場も見られます。

そのような組織ほど管理能力が他より低い、社員レベルが低い、修繕知識がなく故障対応に不手際が多い、そして生産性があまり高くないという、良いところを探すことが難しいという組織崩壊農場もあり、組織の大事さがわからない経営者もいます。

また日本人という人手が不足気味の産業であり、外国人技能実習生に頼り、基本作業は外国人にお願いしていることで日本人の方が管理力が低いというところもあります。

また年齢も外国人が若く、日本人は50代、60代とやや高年齢化しているところも多いと思います。
年齢が低く30代、40代がいる所でも、すべてが活性化して管理力が切磋琢磨し学ぶ意欲が高いとは限りません。
残念ながら惰性で動く世代も存在し、やはり組織は活性化していないというところも多いように見えます。

組織の不活性化は何を引き起こすのでしょうか。

実際経験される方は多くはないでしょう。
ですから、私どもコンサルタントに不安を相談されるのですが、
結論から言えば自然崩壊していくのが答えになります。

自然崩壊というのは、個々の能力が停滞し、劣化していくということです。
例えば、生産性を維持する作業が確立されているのに、忘れていき知識なく新しいことをしていくのですが、失敗し学ばず繰り返すという残念な状況が常態化します。
この時、歯止めをかける経営者が優れていない時は、その劣化は加速していき、とりえのない農場へと進んで行きます。

修理させているときもそうで、自身の技術レベル以上の対応になるのですが、時間をかけてじっくり修理をします。
いいことのように見えますが、故障による弊害が大きくなることまで理解できる方がいないことに気づけないというのが最大の問題なのですが、経営者の能力が低いほど、一緒に喜び合う始末で、本質を見抜けません。

例えば、出荷が遅延するのに短時間での修善ができない、配餌するのに丹念に修理をするというゆったりした意識、相手を待たせる打ち合わせがあるのに、優先度が低い修繕や対応をして待たせる等相手という言葉がわからないという考える力が劣化していき組織全体がそれを容認していきます。

それが、家畜への意識も劣化し、農場内の故障対応も劣化し、清掃も面倒になり、自分の好きな時間を組み立てていき農場仕事を外国人技能実習生に任せ日本人は仕事風の遊びへと発展していきます。

これも個人(自身)に関心を示すことの劣化で、組織が機能していない典型的な事例です。(歯止めをかける役割が存在せずみんな仲良く楽をするという一体感が劣化につながるということです)

このように劣化が進んで行く組織は、経験から見て残念ながら一定の線を超えると修復はできないというのが結論です。

その時、仕事ができるような人材は他社への転職も考えることが多く、先が見えてしまった会社になり果てたというのが本音なのかもしれません。
このように組織の不活性化は数年かけて劣化が進み、とりえがない農場へと退化していきます。

本題に戻り、組織の活性化には何か決定打があるのでしょうか。

先ほどの45歳定年ではないのですが、人には自然定年があるという記事がフォーブスジャパンが報じています。
体力や気力が低下し、次第に知力や集中力、向上心が低下し、能力低下に発展し、依然と比べ仕事で劣るというもので、それが45歳前後とされているという記事です。
仕事への取り組み姿勢が高い方でも、一定の年齢になると能力低下に発展してしまうという人間の生物的退化現象なのかもしれません。

しかし仕事への取り組みが低く、他力本願的要素がある場合は45歳前後を待たず退化していくのかもしれません。

畜産業は皆さん全てが高い志で入社や転職してくるわけではありません。
様々な職種を経験してたどり着く場合や職業高校から就職する方もいるでしょう。
いろいろな観点から見て、45歳定年ではなく能力低下をいかに防いでいくのかがポイントではないかと思います。

実際45歳を超えても探求心が衰えるということは全員あるということはありません。
何かに興味を持ち学んでいくという姿勢は年齢関係なくできることですから、
年齢よりは能力、つまり劣化度がいかに小さいことが重要になります。
仕事ができるという方はそのようなことなのでしょう。

しかし仕事ができないや劣化が進んだ経営者、幹部社員は年齢を待たず劣化していき、それが先代が作り上げた農場を静かに壊していくのです。

怖いのはそれに気づく時は、数年以上先のことで多くは取り返しがつかない時間まで進んだ時という状態で、お手上げ状態のときになります。
末期は、仕事ができる人は転職し去るか、転職する等離れるための準備を進めており有休を所得したり、組織内へのかかわりを避け始めます。
これに違和感を覚えない方も多く、更に組織は壊れ進んで行きます。

これを止める方法は1つだけです。

自ら劣化することを止めるしかありません。
年齢だからできないという固定概念が進んだ人もそれを改めなければ何も変わりません。
そして関心を持ち、自身に関心を示す内向きを外という農場へ向けることです。

壊れた時間の3倍以上の時間はかかりますが、年数かけて改善していくはずです

経営者も親が引いたレールにあぐらをかくことを止めて、自ら考え、知識が足りないのであれば知識人から教わるような姿勢も必要です。
謙虚さ、自身のおごりに気づき前に進んでいくような姿勢が必要だと私は感じます。

今後人の雇用が難しくなり、今いる方々といかに長く繁栄していくのか、その時必ず発生するであろう劣化にどのように向かっていくのか。

ただ家畜を買って育てお金になるだけという簡単ではないことに気づきながら、農場運営をされることが実は未来永劫栄えていく唯一の方法なのかもしれません。