外国人技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律が施行されて3年が経過しました。
この法は、技能実習の適正実施と実習生の保護を図り実習に関し基本理念を定め国の責務を明確化するもので、平成29年11月1日施行されました。

多くの方は、この法のうち技能実習第3号技能実習生があるという項目が有名でしょう。
3年上限が5年まで可能とする制度です。
また常勤従業員に応じた人数枠の倍増も知っている方が多いと思います。

しかし、法令の要である監理団体や実習実施者の義務や責任が明確化するため実施者は届け出制になり、人権侵害には罰則を整備されたという責任という項目を知る方は少ないと言えましょう。

監理団体からチラシをもらって記載はあったけど印象に残ってないというのもあるでしょう。

この法により、摘発や実情が報じられるようになりました。
労働対価の不払い(著しく少ない賃金支払いの事案)、休日に関する違反と生活環境の問題もありました。

この間には監理団体に対する指導や摘発もあり、国は一定の改善を進めている状況でもあります。
しかし、受け入れ側の意識はこの3年間大きく変わるということは少なく、また管理団体の営利目的に対する問題等、受け入れ、管理側双方の法令順守と人権尊重という意識が熟成されていなかったというのもありましょう。

外国人技能実習生に対する考え方が浸透しないと、法令違反ということ自体認識できないということもありますし、労働者であると意識してしまうと雇用関係から考えてしまい、うちの給料が基準で控除もうちの基準と、知らないうちに法令違反をしているということもありましょう。

外国人技能実習生を受け入れることは奴隷を受け入れるとか、人身売買的な指摘をされる方や報道もありこの問題の人権改善を必要とする意見も多く見られます。

残念ながら、日本は労働人口が減少し畜種を問わずその経営体力が優れている所から生き残りが可能になり、体力(多くは現金保有等金銭的要素)が乏しいところはこの先販路(金銭の儲け)のみならず、労働力の慢性的不足が生じると言われます。

ですから、日本人が雇用できないため外国人技能実習生に頼らなければならないという構図が出来上がり、そこにブラックと呼ばれる労働問題、金銭支払い問題、休日等休養の問題といった先ほどの人権改善を要する問題が生まれるという図です。

政府も経営の効率化(特に大規模化)を推奨しておりこの問題を放置しているわけではありません。

しかし、畜産業には大手と呼ばれる大規模経営体は存在しません。
業界内では○○は有名、△△はこの地域一番といわれることでしょうが、消費者から見ればどれも同じで団栗の背比べ状態というのが本音です。

このため、労働者である日本人から見れば魅力ある会社であり、有名であり、世間に自慢できる企業とは認識されず、おまけに賃金も概ね平均かそれ以下であるが、労働内容から見て見合わないという状況です。

多くの農場では日本人雇用に広告を打って満足できる人材確保は少ないと聞きます。
また業界転職もありますが、多くは同業他社に転職するという方は非常にまれです。
それは先ほどのように労働内容と賃金バランスがまだ釣り合っていないからといえるからです。

このようなこともあり、職安に求人出したり、転職サイトに登録したとしても多くは雇用マッチングに恵まれず、いわゆる回転寿司状態となりいつも求人していますという状況で、求人業者が潤うという状況でしょう。

このため、金額を出して人材を確保するということで外国人技能実習生を採用されるわけですが、ここに人身売買と言われるゆえんでもあるのです。

近年は、畜産業においては著しい人権侵害は見ることは少なくなりました。
監理団体の指導もありますが、いわゆる逃げられるということを意識されることもあるのかもしれません。

一昔は、「残業一杯、お金一杯」と面接時に説明し現実と違うことをいう方もいました。

その多くは来日後逃亡され慢性的に人がいないという悪循環に至っているというものでしたが、それは良くないということが浸透し、正直に申告し面接に臨まれるようになり、実習生も選択しやすい状況になったのかなと感じます。

どうしても労働力が欲しいという必死さは分かりますが、日本に来るということは稼ぎに来るという相手を理解した発言でないということを知る方は一昔より少なくなってきたと感じます。

外国人技能実習生は雇用者から見れば理由は何であれ「貴重な労働力」なはずです。
技術を教えたいので雇用したいという方はまずいないことでしょう。

最近は、3年経過して様々な技術を取得しそのまま4年、5年と農場にいてほしいという方も聞きます。実際一度帰国し再度この会社に来るという方もいます。

このように、会社と労働者が同じベクトルを向き、ともに働き信頼関係があるような会社は残念ながら多くはありません。

3年で終わり国に帰り事業を起こすという方もいますし、違う業種に再度働きたいという方もいましょう。それがほとんどの実例であり現実なのかもしれません。

ただ働く外国人技能実習生なのか、人とのつながりがあり長く働きたいと言われるような農場なのか、そうなるようにしたいのか。
それとも人は潤沢いて労働者なのだという方もいましょう。
それはその農場経営者の考えであり間違いではありません。

夏の家畜盗難では、ベトナムの元外国人技能実習生が犯罪にかかわっていたと言われ、芋づる式に逮捕者が発生しています。
SNSでコミュニティーがあり販売していたという報道です。
皆さんの農場ではどの国の方が働いていますでしょうか。

ベトナムの方に限らず、外国人技能実習生にはその国のコミュニティーは必ず存在しており、常に情報交換が行われています。

当たり前ですが、分からない国日本に長期滞在するので話し相手や情報交換して暮らしているのですし、日本人が外国で労働すれば同じようにコミュニティーが生まれるはずです。

ですから、○○が農場から逃げて、○○県にいて△△の友人がいる農場にいるらしい等人の動きもわかるぐらいです。

今後外国人技能実習生から見て畜産業はどれだけ人気を得ることが出来るのか心配です。

現在、受け入れ人数の多い国は 1、ベトナム 2、中国 3、フィリピンとなります。
以下インドネシア、タイとなるわけですが、近年は日本以外の国への技能実習を希望する方が増えています。
それは待遇、労働環境、国の支援等(転職や困りごとの支援等)によるといわれます。

日本は、治安や待遇、アニメといった日本特有の良いところもあるのですが、先ほどのようにコミュニティーでは必ずしも人気とは言えません。

労働環境、低賃金、面接と違うこと、労働先(実習先)からの人権侵害もあり様々な問題が情報として流れていきます。

この結果、第1希望は外国だが、そこに入れない(年齢や技能的要素等)場合は第2、第3希望に日本となる傾向もあるようで、ささやかれている実情もあります。

雇用される方は潤沢なただの外国人であり数年の関係かもしれません。
しかしその環境等問題があるのに第1に農場利益が優先であり人権はその次以下であるという対応では今年は良い人材を得たが、数年後逃亡され、結果日本の評判を悪くし、その農場は実害がないのでさらに問題を繰り返し自覚することがないという状況もあります。

それでは、そう遠くない時代人材確保に困窮してしまう農場も出てくるかもしれません。
そのために賃金を釣り上げて雇用するという日本人雇用と同じ構図になりかねません。

人材は、人財ともいいます。
財産のように大切に扱うことで労働や気づきを農場上にもたらし利益貢献をすることもできますし、人在のようにただ1日農場にいる人になり下がり、人罪となり、農場に悪さしたりする方にもなります。

皆さんの農場にいる外国人技能実習は人材ですが、人財ですか、人在ですか、人罪でしょうか。

この言葉からもどのように農場運営をしていくのか大事なヒントがあると感じますがいかがでしょうか。

私たちは人材を財産のように大切で貴重な人材であるようにヒントや気づきをお教えしています。
これから先、間違いなく人口が減少することから労働力が慢性的に不足し力のある農場へ人が流れることは経済の原理からやむを得ないといえます。

その時、お金だけではなく人をつなぎとめるような方法があると感じます。
それに気づくのか、それとも潤沢と感じ後回しなのか。
この考えが数年後大きな分岐点であったと感じるかもしれません。