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2019年06月

今年は、輸入に関する話題が多い年になりました。TPP発効とEPAで輸入食肉は前年より増加する傾向が続きます。

豚肉、牛肉はその代表的なものです。鶏肉は餌付けが多いためやや供給過剰に見えますし、むね肉は昨年のヘルシーブームが一段落したことや、成鶏農場からの廃鶏が例年より多いこともあり加工向けに対しても競争が発生しているとうわさされます。

鶏卵についても、供給過剰気味となり成鶏更新空舎延長事業が発動されています。また季節特有の需給が弱くなる時期も重なり消費が鈍い状況です。

では、消費動向から見る畜産物はどのような状況なのでしょうか。データを使い「今」を確認してみましょう。

牛肉
牛肉は5月の小売物価調査(総務省発表)を見ますと、本年1月とくらべ小売価格は国産・輸入品とも値段が下がっての販売となっています。

国産牛肉ロースが1月が平均900円程度で、5月は平均886円と僅かですが下がっている状況ですが、輸入の話題がある3月以降は大きな変化は感じられません。

今後も価格に波はあるものの大きく下がったりするような状況ではないかもしれません。

一方輸入品ですが、関税変更もあり今後の販売価格に僅かとはいえ影響を及ぼしましょう。その価格差が消費者から見てどのように感じるのか国産品にとって関心があります。

1月は平均277円でしかが、5月は269円となり、国産同様僅かとはいえ販売価格が下がりました。関税によるものや販売量増加を目指すセール等の影響もありましょう。いずれも出荷先が損を覚悟しての値付でないように見えます。諸費用が下がった分を下げているような感じです。実際値下がり幅は国産より小さい傾向です。

私どもの実勢調査でも、輸入品は価格を安く設定している店舗が多いと感じます。小規模販売店はこの傾向はないように感じますが、チェーン店等は輸入品の価格を前面に出して消費者に値打ち感を
提供しているようです。今後の動向に注目されます。

輸入牛肉は、消費のけん引役である外食や中食に大きく貢献している現実があります。オーストラリア産やアメリカ産等が輸入のほとんどを占めていますが、報道にもありますが、ウルグアイ産の牛肉を取り扱うと発表した外食店が話題になりました。
2000年に輸入が停止していましたが再開され、その価格に魅力があることから外食店が採用されている物ですが、今後も輸入国の多様化により、消費者が好む外国産が増えるのではないでしょうか。
価格差とおいしさが多様化する輸入品にどのように立ち向かいましょう。


消費者は、国産にこだわらない傾向が進んでいます。詳しくはnogutikusanの畜産ブログ(消費動向調査外食・中食と店頭販売での意識 3月26日発表)をご覧ください。

外食向けは今後も仕入れ価格に敏感な状況が進みそうです。
これは、売り上げは増えましたが、依然来客者数が減じている状況で、客単価を増やすだけでは、やがて売上が頭打ちしてしまう可能性もあり、
おいしさはもとより、客数を増やす対策が急務になっているため価格に魅力感を出すことも予測されるため、仕入れ価格は必須の対応となるでしょう。今回のような報道を上手に活用される方も増えるかもしれません。

また中食は今後も消費が拡大されると予測されます。こちらも輸入品が多い分野ですが、おいしさと安心を訴求し、国産をアピールできる分野と言えましょう。
家庭向けは、夏季は調理に手間を感じるかもしれません。最も国産の良さを訴求できる分野ですが、価格差や美味しさ等で勝負しなければなりません。

先ほど消費動向調査外食・中食と店頭販売での意識 3月26日発表をご覧ください。

豚肉
豚肉は消費者が好む食肉であり、平成31年3月家計調査報告では前年比103%の購入数量となり安定した消費が続いています。

若干の変動はありますが前年比を更新しているようにも見えます。

小売物価調査では、相場が高くなっているものの、価格の変動がない状況です。
豚肉バラが1月235円で2月3月と数円下がるものの5月も235円と動かない状況です。もも肉は1月201円、5月202円とほぼ同じです。

店頭では、国産の他輸入品も並んでいるところが多いと思います。主にカナダ産やアメリカ産が多く見られます。

私どもの実測調査では、価格差は小売店によりましょうが小間切れであれば30円程度、ロースであれば60円~80円程度の差があると言えそうです。
消費動向を見ている限りでは国産に人気があるように見えますが、若い方は外国産を購入されている方も散見されます。

牛肉同様、外食中食向けは堅調です。特にカナダ・メキシコ産はよく見かける機会が多くなりました。価格の違いが選定対象になる可能性があります。
おいしさは重要ですが、基本味付けする調理となるため国産豚肉を使用しているところはそう多くないかもしれません。

外食は客単価の維持で手一杯の状況でしょう。しかし来客者数はファーストフード以外は少し苦戦気味です。今後の情勢次第ですが中食が主体になる可能性は否定できません。

先ほどの通り、中食向けは好調です。今後も家庭環境の変化が続くことで更なる飛躍があることでしょう。国産が訴求できる分野でもあります。輸入品に対抗できる何らかの手を見つけたいところです。

家庭向けは、夏季は調理の手間等もあり積極的でないかもしれません。しかし先ほどの通り家庭での消費が多い食肉は豚肉でもあります。今後もこの構図は変わらないはずです。

小売価格が高騰した場合は鶏肉等にシフトする可能性もありますが、先に外国産に移行する方がいるかもしれません。

ブログにも書きましたが、消費者の購入パターンに変化が出ている現状ではもっと国産をPRしなければならないかもしれません。

鶏肉
鶏肉は安価でうまみのある畜産物でもも肉が人気でしょう。あっさりと脂分を気にする方向けのむね肉やささみは若い方を始め年齢が高くなる方々まで人気があります。

小売物価調査もも肉の1月134円であった価格は5月は129円とやや下がり気味です。しかし下げ止まっている感じもあることから家庭での定番メニューに使われる機会が多いのでしょう。

私どもの実勢調査でもも肉は90~110円が多く、豚小間肉より10~30円安いという状況です。むね肉も60~90円が多くやや安い状況です。

しかし購買意欲が薄いように感じます。
7月以降は学校行事等がないこともあり、例えば運動会のお弁当、移動教室等の準備が一段落していることが主因かもしれません。

家庭で鶏肉をメインにした料理はたくさんありますが、夏季の暑い時期食肉の消費が鈍いこともあることから安価な鶏肉であっても消費を上昇することが出来ません。
秋以降に期待したところでしょうか。

但し、冷凍食品等中食向けは好調です。タイ産、ブラジル産の外国産が主体ですが近年は中食向けにタイ産を採用している物が多くなったように感じます。
一方、家庭向けにはブラジル産を採用している小売店が多く見るようになりました。国産の60%と安く設定している店舗が多いと感じます。

ただ、価格だけでは外国産を選ぶような状況ではないように感じます。時期的な要因もありましょうが鶏肉の消費そのものが今の時期活発でないのかもしれません。

例えば、小売店にレシピを提供することで消費を促すことは可能に見えます。値段が安くうまみを感じることが出来る畜産物の強みを消費者に訴求する良い時期かもしれません。

さて、7月以降の消費展開ですが、学校休業により大口購入が一段落します。しかし人の移動が多くなる時期のため加工向け需要は旺盛になるのではないでしょうか。

しかし輸入産が主体である加工向けに国産が入るためには、おいしさだけでなく、安全であること、国産の良さをPRする等国産に注目させることが重要です。

家庭向けでは、例えば「JGAP畜産物」であることで安心で安全であることを示し、価格に転嫁せずPRすることも効果的でしょう。

GAPの普及度はイマイチですが、消費者は安全性を求めている現実があります。

詳しくは、はてなブログ「nogutikusan`s daily GAPの認知度と課題3月24日発表」をご覧ください。

また下記の消費予想についてもまとめておりますので合わせてご覧ください。
・夏季畜産物の需要を考える 6月7日発表(はてなブログ)

皆さんの畜産物がより良く消費者に認知され購入されるように現状からどのように導いていくのかご検討いただく良い機会になればと思います。
今の時代、生産者だけでは製品認知を広めるのは難しい時代です。業界を含めて国産の良いところを消費者にPRしなければならない時代です。
店先に並べば完売し安泰出来る時代ではなくなりつつあるように感じます。なんらか攻めの畜産物ではないですが、自らアピールする必要がある時代なのかもしれません。

農場HACCP認証を取得される方が増えているように感じます。
農場内の衛生管理をもっとよくしたいという声も聞きます。

つい最近までは農場HACCP認証そのものに懐疑的なご意見もあったと思いますが、最近の養豚でのご苦労されていることや、外国での病気発生が国内にも侵入されるのではないかという報道等また、養鶏でも数年前まで散発発生のあった鶏インフルエンザによる防疫措置の心配等もあったことから、完全な安全対策ではないかもしれませんが、農場HACCP認証に取り組みしてみたいという声を聞くようになりました。

本日は養鶏の方々を対象にお話いたします。他畜産の方にも参考になるようにしておりますので是非ご覧ください。

取り組んでみたいという方々のために、構築の流れをご説明しますので、テキスト等お持ちの方は合わせて参照ください。

中央畜産会よりダウンロードが可能です。また、本年度の指導員研修も日程発表されていますので、構築について深く知りたい方はお近くの会場をご予約下さい。

さて、養鶏といえば採卵鶏、肉養鶏(ブロイラー)に分けられます。

本日は、採卵鶏について考えて見ます。

6月現在農場HACCP認証を取得している農場は採卵鶏58農場、ブロイラー14農場があります。
県別では、北海道が最も多く16農場、次いで埼玉6農場、茨城と千葉県で各4農場となります。

その農場HACCP認証を取得される場合、手順や構築方法も重要ですが、まずそれぞれの農場で何がリスクなのか考えて頂くことから始まります。

リスクとは、農場にとって良くないことですが、鶏に対するリスク、食べる人についてのリスクを考えて見てください。

鶏では、病気(病原菌)・管理不良による問題がありましょう。それ以外もあげることが出来ます。

人では、サルモネラ菌の混入があります。その他の畜種では、寄生虫や残留農薬、注射針や金属等異物もありえます。それ以外もあげても良いでしょう。

この点をまず洗い出していただき、この点を中心に防止策を決めていくとスムーズな構築が出来ると思います。

ご存知の事と思いますが、農場HACCP認証は7章からなる要求文書からなります。そのうちシステムを動かすために重要となるのは、第3章危害要因分析の準備と第4章危害要因分析とHACCP計画です。

まず、第3章は皆さんの農場での作業をすべて出してリストを作り始めます。(作業手順書整理表としてまとめると良いでしょう)

そのあと、それぞれの作業はどのようにされているのか手順を書きます。(作業分析シートに1作業ごとに書きますと良いです)

この部分は一番ご苦労されると思います。作業が多い場合、分析シート数も多くなりますので時間がかかります。少しづつ作成をしていきましょう。

作業分析シートが出来ましたら、一覧図を作ります。(フローダイヤグラムといいます)
フローダイヤグラムは原料(水・エサ等その作業に必要な原料全て)が作業のどの作業に使われるのか線で結ぶことで見える化します。
すると、原料のリスクが、どの作業に影響するのが分かります。わかると原料のリスク防止策を決めることが出来ます。(原材料リストとしてまとめます)

問題点が抽出できましたら、続く第4章で危害要因分析をしてみましょう。

この章では、先ほどの鶏や人に対するリスクをどのように対処するのか、またその危険度はどれくらいなのか判定します。
例えば、成鶏農場へ鶏を導入する作業があるとした場合、まず予測される危害として、生物的には、病原微生物の侵入がありえます。
化学的危害要因では、抗生剤投与の残留もあるかもしれません。
物理的危害要因では、導入鶏の骨折等があげられます。その他の畜種では金属の混入や注射針の残存もありえます。

次に、その危害を予測する内容を記載します。
病原微生物では、導入時に作業者又は移動車両から病原微生物が家畜を介して侵入する恐れがある。といえます。

抗生剤投与でも、採卵鶏に投与した場合、十分な休薬期間を設けない場合鶏卵に移行し製品事故が生じる可能性がある。といえます。

導入鶏の骨折では、作業者が不慣れな鶏の扱いにより骨折したりする可能性があるといえます。

このように、あげて頂いた危害要因が何をもって危害なのか説明します。

その後リスク評価しますが、初心者はリスク評価が高くなりがちです。(私もそうでしたが・・)
まず、危害の重大性を評価します。
人又は鶏への健康危害が重大である。又は法令違反であるとした場合「3」
人又は鶏への健康危害がを引き起こす可能性がある場合「2」
上記と違い、可能性が極めて低い場合は「1」
と数字で表記します。

次に、危害の発生率はどれくらいかを見ます。
過去に起こったことがある場合「3」
発生する可能性が十分ある「2」
発生する可能性が低い「1」

以上を掛け算してみましょう。

重大性が3で危害発生率が2とすれば3×2で6と評価できます。
その結果、9はHACCP計画で管理する、6以上はHACCP計画か一般作業で制御する。3以下は一般作業で制御できると区分します。

一般作業とは皆さんが行っている作業方法で制御できるというものです。
HACCP計画で管理する場合、厳格に手順に従い対処する必要があります。つまり、通常の作業ではリスクが排除しきれないためその方法を定めて、その方法に従い対応する。そして、安全が保てない基準に達した場合はどのように対応するか方法を策定します。

危害が高い分安全に対処できるためハードルを上げて対応するのです。

例えば、サルモネラが農場内で動いているか肉眼では分かりません。ですから、定期的又は導入時にふき取り検査をして清浄化していることを確認すれば安心ですし、第三者に検査結果を見せることもでき一石二鳥ですね。

サルモネラは養鶏場では一番困る菌です。これをHACCP計画にしているところも多いことでしょう。
HACCP計画では、検査して陽性となった場合出荷を停止したり、廃鶏として用途を変更したりして流通を止め農場清浄化のための措置を講じるような手順とします。

そのために、モニタリングの方法を定めて採取方法を決めます。陽性時の対処(安全が保てない基準)「許容限界といいます」を決めてその通りに実行するのです。

作成には諸条件がありますのでテキストや県等にお尋ねください。

このように流れて作成していくと、HACCPが動くための準備から動く時のリスクまでがわかり、対策を講じて動かすことが出来ます。

その後、記録(作業を行った唯一の証明書になります)を残して保存します。またこのシステムについて作業されている方に教えたりして教育を行うとスムーズに進みます。

法規制を満たす必要がありますので「農場独自の規定書」例えば外来者の衛生手順を定めたりして飼養衛生管理基準をすべて満たすような規則を作ったり既に実施している物は、それを行っている記録を必ず取りましょう。

その後、検証を行いより良いシステムになるよう見直しをしますし、文書をわかりやすく保管したりする手順等をつくります。

その他では農場の組織図があったり、責任者の職務をどのように与えるのか文書化して見えるようにしましょう。

いずれも構築には長い期間がかかりましょう。おひとりで作成しなければならない場合は無理せずに進めて頂きたいと思います。

農場責任者が別にいる場合はその方と良く打ち合わせながら作るとスムーズにできましょう。
いずれも、パソコンのスキルが必要になることが多いようです。(文書作ったり、農場図を作る等します)

大変と感じる方も多いようですが、サポートする県もありますし、専門にご相談しながら作成することも可能です。
ご用命はぜひ私どもにとは言いませんが、是非おひとりで抱え込まずサポートできる方を見つけて頂き取り組みをしていただきたいと思います。

大変な労力がやがて安全な畜産物を作り上げていく第一歩になるはずです。また作業される方の意識が向上することは間違いありません。
責任感やより良くしたいと考える自律した作業者になることでしょう。これが農場HACCP認証の良いところでもあります。


商品は認証がある物とない物は同じかもしれません。しかし認証というカードがあるのと、ないのでは違いが出ることも多いのです。

ですが無駄と言われればそうかもしれません。
しかしその認証があることでJGAP同様ですが同じ価格で認証品と認証でない品物どちらが消費者(バイヤー)は購入するでしょうか。

価格に転嫁できないことも躊躇する原因の一つと私たちは見ています。
しかし積極的に安心をアピールすることは今日は意味がないかもしれませんが、そう遠くない将来非常に重要となることは間違いありません。

是非、安全で安心な自社製品の付加価値化に期待できるこの農場HACCP認証制度に、これを機会に取り組みされればと思います。

なお農場HACCP認証については、nogutikusanの畜産ブログやはてなブログnogutikusan`s dailyにも多数紹介しています。nogutikusanで検索してご覧ください。

三重県は、岐阜県や愛知県での豚コレラが継続して発生しています。6月7日県境付近の岐阜県側で感染した野生イノシシが確認されました。

三重県への侵入リスクが高まり発生も懸念されます。このため県は家畜伝染予防法9条に基づき飼養頭数6頭以上の養豚場(58農場)を対象に消毒命令が発せられました。

20日より消石灰が順次配布されます。
5頭以下の飼養者にも消石灰が提供されます。

消毒命令(告示内容)
実施区域を三重県全域とし、6頭以上飼養している養豚場と家畜保健衛生所が必要とする養豚場。
実施期間を6月20日から令和2年3月31日までとする。
消石灰を農場内(豚舎周囲と農場外縁部)散布する。
消石灰を6月20日より25日までの期間で配布されます。
農場散布期間を6月20日から7月12日の期間内で散布します。
(これにより消毒レベルを高い水準で統一するための措置です)

報道では、岐阜県養老町で7日、野生のイノシシが豚コレラに感染していることが確認され、発見場所から半径10キロ以内の三重県養豚場1か所が監視対象農場に設定されました。

岐阜県での野生のイノシシ感染確認検査結果情報です。
17日報道発表分で検査実施15頭のうち、陽性10頭でした。

累計陽性判定617頭となりました。(検査実施1411頭)陽性率43.7%と計算上なります。

大変心配とお察しいたします。消毒し高い衛生レベルで発生を回避できると信じ取り組みしていただきたいと思います。
更新情報がありましたら順次お知らせいたします。

人を雇用している方は、人事考課による人の意識が変わることをご存知でしょうか。

畜産業では評価をどのようにされているのでしょうか。
「勤務年数」「出勤率」「成果」を基に評価されていることでしょう。

まず、勤務年数ですが、長ければ作業に対し工夫があり、早い対策をとり、結果事故を回避し製品事故防止や作業の質の向上(時間短縮、事故回避手法の確立等)が見られるはずです。
それが、結果「成果」に結び付くのではないでしょうか。

しかし、近年は勤務年数が短くなる傾向があります。3年5年位という人が多いかもしれません。
10年、15年と長く働いている方は少数で、その方々は自社のエキスパートになっているはずです。

ある人は家畜の観察眼に優れ、すぐに異常を察知し対策を講じたりと少ない情報から正確な対策を見いだすエキスパートになったり、

ある人は、餌配合の特性を理解し、家畜のシーン別対応が的確で、飼料の変化と家畜の変化を見極めたりするエキスパートであったり、

ある人は、後輩指導が上手で農場の管理レベルが向上し優秀と言ってよい人材を育成しているエキスパートもいましょう。

大規模畜産家より中堅以下の規模でこのような状況を良く見ます。皆さん人の接し方や指導方法が良いことで、生産性も向上し良いサイクルが回っているように感じます。
そのような農場ほど意見が活発で皆さんやる気に満ちている方が多く、そこまでいかないレベルの方を引き上げていると思います。

もちろん残念ながらそうでない農場もありましょう。もしかすると現実多くの畜産現場ではそのような管理レベルを必要としない方針をとっている農場もあるようにも感じることがあります。

冒険はしない。危険には手を付けない、毎日同じことをしていれば良い。という方針も現実あります。
そのようなところほど多くの人員を必要とし、もう少し省力化できるのにと感じる施設もあります。しかし問題として表面化しないので正常なことと感じるのでしょう。

方針は会社により異なります。人員が多ければ多くの作業に当たることが出来ますので無駄ではないのかもしれませんが。その線引きも難しいです。

さて、人事考課ですが何のために行うのでしょうか。

給与算出のため、役職(ポジション)付与のため等でしょうが、明確な基準をもって評価されていますでしょうか。

わかりやすい「勤務年数」は3年、7年と数字でわかります。先の通り考え方次第ですが結果成果に結びつく傾向があります。

「出勤率」もそうでしょう。1年に270日出勤した等数字でわかります。

多くの会社は出勤することが当たり前であり、欠勤は悪であるという見方が多いはずです。
欠勤=作業に穴をあけるとなり、困るからというが理由です。
それは、ある意味その通りですが福利厚生の観点から見て、会社が指定した休日以外休むべからずというのも問題です。
有給休暇は労働者の権利です。会社が特別に付与している産物ではありません。法令により決まっている事項なので文句は言えません。

しかし、多くの方が言います。畜産業には休日(休暇)の概念はない。それどころか労働時間に制限もないのだから自社特別の産物(恩給)なのだという意見です。

厳密にいえば労働法に抵触しないのはその通りですが、そのような会社には人は集まりません。休日は隔週2日、年末年始休暇と夏季休暇以外は認めません。と求人票に記載して見るとわかりますが求人者は待遇が異常なほど高額でない限り応募はないはずです。

ですから、過度に出勤率を評定対象にした場合適正に使用している労働者が離れてしまいます。それが優秀であったら大丈夫でしょうか。

しかし、休日の理由から見れば問題提起できるはずです。たとえば「仕事がだるい」「やっていられない」となれば指導もあるでしょう。現実はどうでしょうか。

「指導して退職されては困る」「指導者の印象を悪くしたくないから指導しない」等指導をしない農場もあります。

ある意味親切なのでしょうが、指導して退職する人は何かをきっかけで退職します。ですから今日指導せず在職しても気が向かなくて翌日退職というのもありえます。(遅かれ早かれというのでしょうか)

一番の問題は、会社の風土が悪いことが起因していることではないでしょうか。「やってられない」という言葉は広い意味を指しています。それが、労働者の怠慢なのか、会社風土からくる問題なのか、待遇等ミスマッチなのかです。

その見極めが出来る方とそうでない方の差が会社存続を左右するのかもしれません。

そこに気づかない場合経験ですが、農場の管理レベルが下がり続け、退職者の技量を上回る人がいないため一段低下します。

その結果が生産量が少なくなったり、家畜の病気発生に気づくことが出来なかったりと弊害として現れます。

一般的に生産量等に変化が見えて収益に直結しているように見えますが、実際はどうでしょうか。
畜産業では、年数がある方が退職した場合多くの農場は管理レベルが下がるように見えます。しかも以前のように回復しないように思えます。

人が来ないので、作業者を雇用する。作業はできるが予測や管理レベルはそれほど高くないという負のスパイラルに突入するところもあるように思えます。

あくまでも経験でのお話ですが。

次に成果ですが、先ほどの通り長い年月で培われた経験が実力となり目に見えるもの、見えないものありましょうが「成果」として現れます。

それは多くの場合生産性の向上と同じキーワードになるかもしれません。

年数の短い方も成果を挙げましょうが、本当の成果か確認が必要です。
何をもって成果なのか。その基準は何でしょうか。

お金に直結するものそれ以外は成果でない。という答えもありましょう。

畜産業では、お金に直結する成果とはなんでしょうか。
生産量の増加、飼料の低減、家畜死亡の低下という具合でしょうか。
確かにその通りでしょう。それは目に見える成果です。

では、そのための方策を考え、講じる段階では成果ではないのでしょうか。
まだお金になっていないから成果でないという答えもあります。その通りですが
その目に見えない部分を評価してあげていますでしょうか。

多くの会社では、結果だけ重視しています。能力集団であれば正論だと思います。

しかし、畜産業も同じで良いのでしょうか。

そもそもそのような発想が出ること自体が貴重だと感じませんでしょうか。

自社では、ただ働く作業者は潤沢にいましょう。しかし考える人たちはどれくらいいますでしょうか。
その人たちにスポットを当てず、お金が欲しければ結果だけ見せればよいでは人は離れます。

考える力のある人は他畜産業では重宝されることをその人たちは知っています。

より良い待遇のために渡り歩く方もいましょうし、先ほどの「やってられない」と感じるのかもしれません。

残念なことに、口だけ言う方もいます。方策なく、他の人のアイデアを盗用しているしているだけの人もいますし、アイデアが一見立派ですが、中身が薄いというものです。

それでは、見えない成果は成果ではないと言われても仕方いですが、その境はわかりません。

成果と信じた失敗例を紹介しましょう。
ある年数が長くない人が「生産量を7%にする方策を示し、会社は許可を与えました。結果は7%の生産量を増やすことができ、成果として認定しました。

しかし、まもなく問題が生じます。生産量を維持するための方法に欠如があり、生産量増加は一時的となり、家畜死亡が発生します。その人はその対策を解決できる策を持っておらず、結果マイナス収支となりました。」

原因は、経験の長い人の意見を盗用したため、作業は出来ました。しかし問題点の解決は出来ず、又その意見を出した本人は盗用した事実を知ったため解決策を提示しなかったため、結果生産性が低下し会社の収支が低下したというものでした


皆さんでしたら、どのように対処しましょうか。
ちなみに、その会社は、特に問題と意識せずそのまま経営を続けました。

さて、畜産業での成果とはなんでしょう。
それは家畜が成果をあげています。ですから人は関係ありません。しかし先の通り、給与算出やポスト付与のため等で成果を無理に探すことになります。

私たちは家畜のおかげで生活しています。その人のプレーのおかげでないのです。相手は物を言いません。家畜の仕草、食べている雰囲気、毎日の管理のおかげで生産しそれが成果となるのです。ですから、それを見つける力が最も成果をあげているといえるのではないでしょうか。しかし目には見えません。

ですから、アピールして成果があると言うだけでは問題なのです。

しかし見えないがゆえ成果でないのです。ですから評価しない。それでは評価そのものが正当でないとなります。

ある人は都合の良い言葉を言います「不平等は最大の平等である」と。

意味としては、頑張りによって得られた結果は、頑張りがない者も平等に賃金や評価を与える必要がないという意味
であり、口だけやごますりだけに与えて、言葉にしないものには適正な評価をしないという意味ではないと私は考えています。

繰り返しますが、成果は家畜があげています。人はそのパフォーマンスに力を与えるのであり、気付くことや、気づくことを気付くことが技術で本来は年数が経験となり開花します。

それは技術を持つ者だけが出来る技でもあります。
口でアピールすることがどれだけ無意味なのかお分かりいただけるのではないでしょうか。

人事考課は正しく評価することで従業員のモチベーションをあげます。ある意味「効果」があるのです。

その方法が明確でない場合組織は歪み良くない方向へ進んでいくように感じます。
生産性向上も家畜に対してどれだけ献身的に真摯にそして、ひたすら努力するしかありません。
それが結果となり「成果」と呼ばれるのです。そして、生産性が上がり向上したという流れになります。

世の中は生産性向上と叫び久しいですが、畜産業での生産性向上は家畜へのパフォーマンスをどれだけ貢献することが出来たのかそれの良しあしが向上となり収支が増えて会社にとって良い循環になるのです。

12日農林水産省は愛知県田原市の養豚場において、豚コレラの清浄性確認検査を行ったところ、1農場について疑似患畜が確認されたと報じました。

飼養状況は1254頭で防疫措置を講じる旨報じました。なお、国内23例目の発生となります。

現在の状況をお伝えします。
プレスリリースでは、前日13日についてになりますが、殺処分を1254頭予定のうち、968頭が完了しています。
埋却と汚染物品の処理・消毒を14日より行う予定となっています。

次に、愛知県での豚コレラ陽性確認検査野生イノシシについて、6月検体からの状況をお伝えします。
6月2日春日井市玉野町、瀬戸市内田町の2検体が陽性です。6月5日豊田市北一色町の1検体が陽性で計3検体が陽性となります。

6月検体20検体のうち3検体が陽性となります。
(6月10日現在で、愛知県のホームページをご覧ください)

岐阜県での状況です。
山県市での発生した豚コレラは5日より防疫措置を開始し、殺処分は8日午前2時55分に完了し7415頭となりました。
埋却を9日18時45分完了し、汚染物処理は午前7時に完了し、農場の消毒を10日7時消毒を完了しました。
搬出制限解除日6月28日午前0時予定とし、移動制限解除日は7月9日午前0時の予定です。

次に野生イノシシの感染確認検査結果についてです。
14日報道発表では、検査実施7頭のうち、陽性6頭となり、陽性判定となった野生イノシシは607頭となり、検査実施1396頭の43%が陽性と判定されています。

本巣市、山県市2か所、大野町、岐阜市、中津川市となります。

最も多い市町は岐阜市71頭(今回1頭含む)、関市65頭、恵那市56頭、可児市47頭、美濃加茂市46頭となります。

引き続き注意が必要な状況です。

PED(豚流行性下痢)についての情報です。
既にご存知の事と思いますが、秋田県大館市で7日4年ぶりの発生がありました。181頭が死亡したと発表されています。発症は330頭程度とされます。

7日以降の新たな報道はありません。

千葉県では、6月13日800頭が発症し死亡はありません。
千葉県での継続発症は少なくなった感じがあります。終息も近いのではないでしょうか。

一方気になるデータもあります。
化血研が平成30年に公開した「PED(豚流行性下痢)発生後の繁殖成績に与える影響」では、PEDが治まったのに繁殖成績が元に戻らないという話から始まり、事例を含めて考察しており、結果「繁殖成績に影響があった報告が多く、発生後成績が悪くなる」というものです。
(化血研のホームページをご覧ください)

本年は、長い期間様々な地域での発症が続き、継続発生している県と、散発的に発生する県とさまざまです。人や車両による汚染の拡大等があるようですので、引き続き衛生管理が重要なのでしょう。

農林水産省は、2014年時点の哺乳子豚死亡に伴う損失を算出しています。
哺乳豚評価試算、FMD防疫指針、口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針に示された評価額算定方法に基づき試算しています。
それによると、
生み落とし価格(全国平均)
種付け料75円+繁殖雌豚費661円+種雄費114円=850円としています。

肥育豚1日当たりの生産費(全国ベース)
(全算入生産費31152円ー生み落とし価格850円)÷(肥育期間6.4カ月×30.4日)=156円
死亡した哺乳子豚金額(死亡日齢10日と設定)
生み落とし価格+肥育豚1日当たりの生産費=850円+(156円×10日)=2410円/1頭としています。

たとえば多くの哺乳豚が死亡した場合、上記金額で算定すると大きい金額になるのがわかります。

それ以外にも多くのコストがかかります。消毒費や設備費用等が算入されますので、大変甚大な被害となります。

日本農業新聞14日Web版では、岐阜県での豚コレラが長期化していることに関して危機感が広がっているという報道があります。

岐阜県の飼養頭数46%が殺処分された計算となり畜産業の影響が大きいことを紹介しています。
関連業者も悲鳴を上げており、対策が必要な状況です。


1日も早い終息をお祈りしております。

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