nogutikusanの畜産ブログ のぐ畜産認証支援部公式ブログ

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2019年03月

今回は、畜産物の消費先である外食や中食の消費動向を見て畜産物の販路検討や現状を確認して経営反映する資料としてご活用いただきたいと思います。

なお、養鶏に関するデータやGAPの認知度等の畜産データは「はてなブログ(nogutikusan`s diary)に掲載しております。nogutikusanで検索して是非ご覧ください」

畜産物は主に国内で消費され、店頭販売を介しての一般家庭購入や外食や中食等加工筋を介して販売する販路が主になります。
畜産家の皆さんはどこに比重を置かれているのか、畜産物が出荷されてから消費者が手に取るまで、口にするまでの意識を考えてみます。

1、店頭販売での消費者の意識調査
日本政策金融公庫農林水産事業は、「平成 31 年 1 月消費者動向調査」を実施しました。
現在の食の志向は「健康志向」、「経済性志向」が上昇傾向にあり、特に「健康志向」は過去最高となりました。
また、国産食品と輸入食品に対する価格のイメージは、国産食品は「高い」、
輸入食品は「安い」といった従来のイメージが変化しており、国産食品と輸入食品の価格に対するイメージの差は縮小傾向にあることが伺えます。

①消費者は何を基準に商品を買い求めるのか(食の志向)
消費者の世代別で見ますと世相を表しており、この辺の対応を検討すると新たな消費拡大が狙えると思われます。
健康志向は全体に50代を超える世代が最も高く(各世代50%以上の方があてはまる)、逆に20代~40代はさほどではない(各世代35%程度)
といえます。

では、健康志向の60代・70代は他にどのような志向なのか「安全志向」「手作り志向」「国産志向」であるとデータが示しています。経済性志向」は各世代の中で最も低くなっています。
このことから、60代以上の方は国産を購入する最も多い世代であると推察されます。(国産志向)
イメージとして、「国産品を買い求め、自宅で消費する。(手作り志向)安い物や外国品のような産地や安心感がハッキリしない(得体のしれない)ものは敬遠される(経済性志向・安全志向)」
というところでしょうか。

では、若い世代はどうでしょうか。
最も多いのは「経済性志向で20代47.9%、30代45.3%、40代42.5%となります。収入から見あった食材の購入やコスパに優れた消費を求めている世代と言えます。
この世代は、「簡便化志向」も高く、中食や外食等仕事・育児等時間を有効に活用したいと思う気持ちがデータから現れています。

また、「安全志向」は20代で10%、30代で13.5%と10%台が50代まで続き、今の食に対する不安が少ないことの表れであるといえます。

この世代をイメージすると、「経済性を第一に考え(経済性志向)、育児・仕事から調理は簡単に済ませたい(簡便化志向)し、必ずしも手作りにはこだわらず、国産品でなくても良い(国産志向)が、おいしいものには努力やお金を惜しまない(美食志向)」といえます。

「いい物はいい」しかし国産品等のイメージには特に関心がなく、時間や手間を第一に考えた調理を基本とした合理的な考えを持った方であると推察されます。

このことから、世代により消費動向が異なっていることから買い物される客層により品ぞろえを行うとより良い購買力向上につながるのでしょう。

しかし、畜産業から見ますと少し厄介でもあります。それは、「安心で美味しい国産品」というフレーズ・イメージは若い世代には通用しないということで、近い将来消費動向に変化をもたらすといえます。
そうなりますと、必ず国産畜産物でなくても良く、それより中食(チルド品や総菜)として活用できるような畜産物に変化しなければ価格からみて外国産に少しづつ置き換わる可能性があります。

今の国産物の購入が人口減少で少なくなっていくのはその通りですが、細部を見ますとこれから日本を盛り立てていく若い世代は国産のイメージが十分でないことから、経済性・簡便性を第一に検討されてしまうと大変です。
ですのでこの世代に「国産はこんなに美味しく・安心安全なのです」とアピールする必要があります。

個人的な意見ですが、若い方の魚離れはここにあると思っています。コスパから回転すし店は盛況ですが、魚の家庭消費は少ない。つまり家庭での下処理や焼き魚の匂い、調理の手間や後片付けの面倒、可食部が意外と少ないことによる割高感も相まっているのではと考えています。

では、世代全てを勘案したデータから「食料品を購入するとき」「外食するとき」の国産品を気にかけているのか見てみます。

平成31年1月の調査では、「気にかける」と答えた方は72.3%で平成29年1月の80.4%の8%低下となります。
逆に「気にかけない」という方は24.9%で平成30年7月に続き20%台を維持して上昇しているのが分かります。

このことから、消費者は必ずしも国産でなければならないという考えが少なくなっており、国産に対するイメージが消費者に訴求できていないといえるのです。
ですので国産の良さをPRすることでイメージを植え付けるような戦略が必要でしょう。それは、畜産農家が出来ることではありません。生産者全体・販売者全体で考えるべきでしょう。

2、外食するときに国産品を気にかけているかについて
①平成31年1月の調査では、「気にかける」と答えた方は32.5%で平成28年1月の41.9%の9%低下しています。
逆に「気にかけない」という方は60.3%で平成28年1月から50%であったものが10%程度上昇しているのが分かります。

このことから見えるのは、野菜は国産品を好む傾向がありますが(ちゃんぽん店の国産野菜使用で値上げしても消費者は理解を示しています)

肉類等は国産の使用がもともと少ないためこだわる理由が見当たらないといえるのでしょう。先ほどの国産のイメージが訴求できていないことが原因と推察されます。

野菜の不祥事はよくニュース等で報道されます(残留農薬である国からの輸入品に心配等)から、野菜には慎重な意見もよく聞きます。(冷凍食品でも野菜を使用したものはイメージが植え付けれている傾向があります)

しかし、畜産物の不祥事はあまり報じられません。(過去のBSE等)これは、外国産が問題を生じさせて大きく報じられますと、国産にもそのイメージが定着してしまい購入を躊躇してしまう流れがあることや事故報道が少ないことで、外国産でも不安をあまり感じさせないといえるのでしょう。

このことからも、国産のイメージを定着できるよう業界内で盛り上げる必要があるといえます。

②外国産品は安く・安全と感じるのか。消費者はどう見るのか
平成31年1月では57.4%と60%代を割り込みました。(平成28年1月では安いと答えた方は64.1%でした)
このことから、近年の円安等経済事情によるところも大きいでしょうが、国産品と変わらない差となっていると感じます。
であれば、価格差が少ないと言えれば国産を売り込むいい時期でもありましょう。

輸入食品に対する安全面について聞きますと
安全である」と答えた方は2%でほぼ変わらず。逆に「どちらとも言えない」が61%になり、
平成28年1月の52.3%から7%程度上昇が続いています。安全かわからいないが事故報道が少ないことにより輸入品は「安かろう悪かろう」ではなくなりつつあるようです。
イメージとして、「安全ではないのかもしれないが、少し心配だが避けるような理由でもない」となるのでしょう。

③国産品はおいしいのか
国産食品はおいしいと答えた方は55.3%で平成28年1月の64.8%から9%低下で年々低下しています。
輸入食品も美味しいと答えた方は3.7%で年々減少しており、国産・輸入産ともに「どちらでもない」が多くなります。
つまり、国産であろうと・輸入品であろうと「どちらもすこぶるおいしい」という結論出ないのでしょう。逆に言えば「おいしさは重要であるが、その差はなく優劣付けられない」が本音なのでしょう。
ですので、国産がおいしくないという理由ではないと私は考えています。

では、最後に価格差について見てみましょう。
消費者の最も多い選択は
豚肉で見ますと
10%高までなら17.8%「20%高までなら15.9%「同等であれば国産品を選ぶ26.5%「国産品のこだわりはない15.2%となり、
価格差がなければ、国産品を購入するが、高い場合でも10%高いまでで20%高くなっても購入を検討するような結果です。

鶏肉では、「10%高までなら17.7%「20%高までなら」15.1%「同等であれば国産品を選ぶ26.2%「国産品のこだわりはない14.8%となり、
価格差がなければ同様の結果ですが、国産品を購入するが、高い場合でも10%高いまでで20%高くなっても購入を検討するような結果です。

3、外食・中食の利用
では、消費者は外食や中食についてどのように利用しているのか考えて見ましょう。
日本政策金融公庫農林水産事業は、平成 30 年7月に実施した「平成 30 年度上半期消費者動向調査」において、中食※と外食の利用動向を調査しました。
(調査対象全国20代から70代の男女各1000人ずつ)

その結果、平成 15 年7月の調査と比べ、男女ともに中食の利用頻度について、「週に2回程度」以上の回答割合が増加していることがわかりました。同様に、外食の利用頻度は、「週に1回程度」以上の回答が増加しています。
また、今後の中食の利用頻度については、「増えると思う」と回答した割合が「減ると思う」と回答した割合の約2倍となっており、今後はさらに中食の利用が増加することが伺えます。

※ 中食とは、市販の弁当やそう菜など、家庭外で調理・加工された食品の総称。
または、その食品を家庭や職場等でそのまま食べることを指します。
(調査資料から引用)

①中食の利用頻度
男性の中食頻度は週2回程度が18.2%で平成15年7月11.5%と6.5%の増加です。
女性の中食頻度週2回程度が18%で15年前が13.9%でしたから4%の上昇ですが、
週3・4回程度が最も伸びて11.5%でした。(15年前は6.1%で5%の増加です)

このことから、女性が中食頻度が増加した理由として、世代別データがあればはっきりしますが、推測ですが「仕事に従事している方が多く中食を活用される方(就労中の食事や時短調理や個食等)が一定数いらっしゃる」ことでしょうか。(2018年8月総務省発表で女性の就業者数は6年で303万人増加)
就業されている方が多い状況が続く等今後も中食の利用が続くと思われます。

②外食の利用頻度
男性の外食頻度は週2回程度が11.2%で平成15年7月8.7%と2%程度の増加です。
女性の外食頻度週2回程度が8.1%で15年前が5.5%でしたから
2%程度の上昇ですが、週3・4回程度が最も伸びて21%でした。(15年前は13.6%で4%の増加です)
このことから、中食同様増加した理由として、世代別データがあればはっきりしますが推測ですが「仕事に従事している方が多く外食を活用される方(就労中の食事や時短調理や個食等)が一定数いらっしゃる」ことでしょうか。

就業されている方が多い状況が続く等今後も利用が続くと思われます。

では、中食で良く行く店を利用される理由を尋ねると最も多い理由は
低価格、値段が手ごろだから」男性59.4%・女性52.4%で最も多く、

次に「いつも利用していて安心、信用できるから男女とも42%台です。
しかし、女性の場合家庭の好きな料理があるから」が9.3%(男性は7.6%)、
値段が少々高くても美味しいから14.5%(男性9.5%)と
男性と異なり(男性はコスパ・いつもの店が優先)、好きな料理や美味しい等食事を楽しむという食事を大切にされる方がいる結果があります。

外食も、数値は異なりますが、理由は中食とほぼ同じ結果となっています。

畜産物のアピールとして、ある程度の価格で美味しい料理を提供するような飲食店があればおいしさが強調でき畜産物にさらなる需要が見込まれます。しかし、低価格を売りにしている飲食店では価格競争が予想され外食(中食)には採用されない可能性があります。

消費者は「経済性」を強調していますが、「値段が少々高くても美味しい」を求めることから、低価格にあえて訴えることも現時点ではなくても良いのではないでしょうか。

中食・外食の需要は今後も続くと思われます。畜産品をどのように採用されるか検討する価値はあるのかもしれません。
GAP総合研究所が今月公表した情報では
「消費者にもGAPを知ってもらいたい。GAP認証食材を活用したビュッフェレストランを銀座に作りました。「グランイート銀座」オープン。」
価格的にはリーズナブルでこのようなこだわり飲食店が多く誕生することで消費者からの認知が広がるのかもしれません。

国産で安心安全だけでは消費者の心に響きにくくなり、輸入食品への不満が薄れていることから国産にこだわらない事実。国産をアピールすると同時に外食に取り入れてもらうためにもこだわりの飲食店からの発信があっても良いのではないでしょうか。

和牛の受精卵が不正に海外に持ち出されたとされる事件では、徳島県の農家が逮捕(家畜伝染予防法違反)された事件では、内容が徐々に明らかになり「少なくとも4回の流出」「海外と知らなければ売らなかった」等農家の供述が報じられています。

最近では、いちごの新品種が持ち出され佐賀県農業試験研究センター技術者が研究段階での廃棄する苗5株を持ち出し知人に渡し直売所での販売や農家で繁殖させた苗300株を処分したというもので、知的財産保護が課題である日本で安易な横流しともいえる深刻な事件が続いていることに不安を感じます。

和牛はご存知の通り外国でも人気のブランド名です。しかしすでに外国産「WAGYU」も存在しており、外国では日本の和牛ではなく外国産WAGYUが定着しているのも現実で日本の和牛のおいしさでアピールできるかにより世界市場での存在を示せるかにかかっています。

しかし、和牛の遺伝子が外国に渡るということは品種改良を進めるうえで必要なアイテムであることからすでに和牛が世界に太刀打ちできない等から良しとなることはありません。

受精卵から生まれた牛から交配することで新たなWAGYUが誕生でき、結果WAGYUの中の一つに「和牛」がある程度に置き換わり、世界市場での和牛存在が薄くなってしまいます。
おいしさが横並びになる日もそう遠くないとも言われ、和牛が世界から奪還できるかは和牛の更なる改良しだいになるのでしょう。
そのためにも安易な横流しを認めてしまうと言ことは改良が進んだ新しい品種がすぐに外国に流れるというリスクがあるといえるのです。
ですので、横流しすることは良くないということを農家皆さんが理解していただかない限りお金につられてしまい横流ししてしまうという構図は今後も続くのではないでしょうか。新しい品種の誕生には大変なご努力があり最新の技術でもあります。

開発のご苦労を残念ながら使用者(農家)は知りません。

だからこそ安易に現金を見せられて渡してしまう。知的財産ではなく「物」なのでしょう。だからこそ程よい金額提示を受ければ「物」を販売するという構図が出来上がるのです。だからこそ、問題が大きくなって初めて事の重大さに気づくということなのでしょう。

性善説で物を語る時代は残念ながら終わっています。良くないものは良くないことを教える必要があるのでしょう。

同じ問題に「いちご」の新品種の持ち出しもあります。「断れなかった」「栽培してもらおうと思った」等供述されています。

しかし、結果「無償でしょうが渡した農家は自家繁殖させ、さらに違う農家へ無償かもしれないですが譲渡し自家繁殖し一部が直売所へ(結局営利目的となります)販売した事実があるのです。

無償で渡しても結局営利目的に発展する。これが現実なのです。

これも、知的財産ではなく「物」と見ていたのでしょう。(新品種という物。だから価値がありレアな「物」なのだと)
残念ながら性善説で物を語る時代は終わっています。指導徹底することで防げるのか分かりませんが、品種改良の大変さが分からない限り安易な持ち出しや横流しが続くのではないでしょうか。知的財産の大事さ大変さを理解してもらうことは大変です。人は興味ないことにはとことん興味がありません
教える側はそれを踏まえてテキスト朗読程度の説明では理解を得られないでしょう。モラルが低下しているといわれる現代。人に教えることは難しいことです。

説明者は分かっても相手は分からない。でも分かったそぶりを示す。だからこそ、「分かった」ではなく「何が分かったのか」再度確認し共有することくらい必要な重大な事案であることを踏まえてご指導いただきたいものです。

前回は、畜産業の課題についてお話をいたしました。
今回は、畜産業の本当の問題「家畜の糞」排出が進まないことについて考えます。

ご存知の通り、家畜を飼養する畜産業は「生産物」(生乳や卵又は生体)を出荷し現金を得ます。同時に副産物である「家畜糞」が発生しほとんどは地域の農家さんに有償又は、ほぼ無償に近い価格で譲渡します。

出荷形態は、家畜糞を自然加熱し攪拌することで発酵した「発酵糞」を販売する方式と、
攪拌等せず自然加熱しただけの「自然糞」に分けられると思います。

販路として、農家さんへの販売とホームセンター等へ袋詰めして出荷する「発酵糞」に細分化されるはずです。

最近は、畑等に散布する場合に周辺への悪臭等によるトラブルから「発酵糞」に需要が多くなる傾向があり、高額の設備を導入する畜産家もいます。
同時に機械稼働時は攪拌するため相当の悪臭を発生させ近隣住民等とのトラブルに至るケースもあり全ての方々に普及できるものではないのも現実としてあります。

しかし、自然糞は、見た目や匂いの他、畜種によりますが窒素やカリ等が多く含有するため作物によっては敬遠されたり、発酵が進んでいるため畑等に散布しても発酵した副産物等(ガス等)により、苗床や苗木を枯らしてしまうことがあり、近年では高齢の農家さんに需要が残る程度で引き合いが少なくなりつつあると感じています。

さて本題に入りますが、2019年は年初から暖冬等作物の生育が進み出荷量が多いため青果相場が低迷しています。

特に、畜産の盛んな地域では、近隣農家さんの青果物が安いため家畜糞の需要が少ないという声が今年は特に聞きます。
私は、千葉県でコンサルタントをしておりますので近隣の現状について考えてみます。
千葉県は養鶏全国3位の温暖な地域で、作物はキャベツ・人参・大根等大体の作物を1年通じて栽培されている方が多い地域です。今は「じゃがいも」の作付けが進み初夏前には「とうもろこし」となります。

畑は夏に休耕しそれ以外の時期は作物を作る傾向があることから、畜糞需要期は「夏」となり、次いで「春・秋」となります。

前述の通り今年は年初から主力の「キャベツ」「大根」が相場安の展開で農家さんからのあきらめ声を聴きます。実際1箱出荷しても梱包段ボール代すら捻出できないという声もあり作物を取り潰してしまう方もいます。
今はジャガイモの種付けですが、その「じゃがいも」も鹿児島県産新物が相場安のため、収穫の初夏に影響が心配です。このため、有償で販売される畜糞を入れることを敬遠し作付け計画から除外するされる方もいます。

しかし、畜産を生業にしている者にとっては、副産物(糞)の生産量を調整することは至難の業であり、できれば安定して搬出したいため営業することで、新規開拓や価格相談して排出先を見つけようとします。

1社が困っているということは他も困っているのは当然のことで、販路拡大について相談を受けることが今年は特に多くなりました。

経験から言えることは、家畜の糞排出が進まないということは、近隣農家さんとどれだけ大切に接ししてきたか試されていることであるといえます。

大事にしてきた場合、顧客の作付けは大体わかるはずですので(一般に農家さんは同じ作物を作りづづける傾向があり、作付け計画も分かりやすい傾向があるはずです)
いくつかの畑を見回りするだけで収穫期なのか、次の作付け待ちなのか分かります。
作付け待ちであれば、お願いして排出をすることが出来るはずです。

例えば「今、畜糞が溜まっていてね、少しお付き合いしてください」といえば、大体「うんいいよ。4丁目のあの畑ならば作付けは4月だからいいよ」と答えてくれるのです。
採算が合わない=農業が成立しないではないのです。
ですので、大切にしていないと感じている農家さんは「いま安いの知ってるでしょ。採算合わないんだから又来てくれよ」とあっさり断ります。(電話しても応答してくれないという人もいます)
ですので、私は「人を大事にする方法」「営業する方法」をお伝えし1件でも顧客を獲得できるよう助言をしています。

最近は、価格の安さを第一に遠くから搬出先を求めて営業攻勢をかけている畜産家もいます。顧客第一でなければ「あっさりOK」と鞍替えされてしまうことも珍しくありません。
心配なのは、鞍替えされた農家さんは元に戻らないということです。先ほどの話では大事な内容が含まれていました。(お気づきでしょうか)

それは、大切にしていたという表現は実は「信頼関係があった」ということなのです。

大切にするとは、「値引きする」や「ただ笑顔で接する」ことではありません。最近はドライな関係が主流と言われますが正直この分野ではそれは当てはまらないといえます。(法人農家さんは別でしょうか)

「貸し借りの世界」があるということを忘れてはいけません。困ったときには手を貸して、こちらが困ったときは助けていただける。そんな昔ながらの世界がまだ続いているということです。

最近、そのような基本が出来ない従業員が多く困っているという話も聞きます。「人材教育」は私の十八番ですから、喜んで研修をしますが家畜を管理するだけではこれからの時代通用しないのかもしれません。
ある営業担当者は言います「新規開拓はそんなに難しくない。大変なのは来年またお客様になってくれるかということです」

農家さんの青果相場高低で畜糞の発生が増減することはできません。ですから、いかにお客様第一で接していけるのか。安定して排出が進むためには相場だけでいいのか。

畜糞を自社敷地に高く積み上げて指導された畜産家もいます。適正な管理が求められている「産業廃棄物」をいかに安定して搬出できるか。大金掛ければ「産廃」として処分も可能でしょう。しかし資金力がそこまで保てる方はそう多くないはずです。であれば、いかにお客様第一で物を考え、排出できるようにすることを考えられるか。近隣農家さんがなくても排出ができる畜産家は広大な自社の畑でも保有していな限りあり得ないのが現実ではないでしょうか。

近年は、たい肥を畑に山積みして納品することが少なくなってきています。それは、農家の方の高齢化が進んでいることで散布する(山積みを崩して平らにする)作業に負担を感じているからで、実際そのような声を聞きます。一部は外国人技能実習生を活用しているようですが、重労働であり散布量にばらつきがあることで、例えば厚めに散布した場合、畜糞からのガス等で作物を枯らしてしまったりして安価であってもリスクが大きいと感じるようです。

このため畜産家は散布車(スプレッター)を購入し均一に散布できるようにしていますが、化成肥料の即効性には勝てず最近少しづつ需要が少なくなっているのも現実ではないでしょうか。
加えて、耕作を放棄してしまう方(廃業等)もいて畜糞の処分を取り巻く環境は厳しくなっているように感じます。
畑を貸地にしたり、僅かとはいえ賃料が入る「ソーラーパネル」を設置したりと、時代が変わりつつあると感じています。
その中をどのように畜糞と向き合い処分先を求めるのか、ただ漠然とした考えでは同業から大事な顧客を奪われて自社の敷地に山積みということもありえます。

うちは地元で有名だから安心という時代ではありません。
農家さんから見て畜産業である我々は「たい肥屋」でしかないのです。たい肥屋であれば、その道のプロではないですが、活路を考えていく必要があります。


千葉県の方には、千葉県でのたい肥化計画(5月10日発表)についてお話をしています。はてなブログnogutikusan`s dailyに関連記事を掲載しております。nogutikusanで検索してご覧ください。


解決策はご自身や従業員の頭の中に眠っているかもしれませんし、私どもに相談することで解決できるのかもしれません。

農林水産省は、農場生産衛生強化推進事業の拡大により、農場HACCPの取得支援を行っています。
課題として「農場HACCP認証取得農場の偏在化」を挙げており、特に認証取得が進んでいない地域に対し指導員を拡充し相談先を増やし取り組みを支援します。

最終的に「認証取得農場の加速度的増加による食の安全確保体制の強化」を目指します。
その農場HACCP認証を取得する動きが少しづつ広がりを見せています。1月時点で241農場が認証を取得しています。

農場HACCP認証のメリットデメリットは以前ご紹介しましたが、畜産を営むの当たり必須の制度ではないことから様子見が多いのも現実です。
今日は、制度の問題点と普及するにはどうすればよいのか現場目線でお話します。

・農場HACCP認証の問題点

農場HACCPの正式名称は「畜産農場における飼養衛生管理向上の取組認証基準」をいい、HACCPシステム等を取り入れたので通称「農場HACCP認証」と名乗り普及しています。
さて、その農場HACCP認証ですが「導入するメリットは何か」とよく問われます。
返答は後に書きますが、質問を受けるということは、そのメリットや必要性が十分浸透していないのではと感じます。
衛生管理向上と言われてもすでに衛生的な農場を管理しており、費用をさらにかけて行うメリットは何か、消費者まで一貫して衛生管理して畜産物の安心を提供することは分かるが生産者側がそこまで想定すること自体に無理があるし意味がないという意見もあります。

鶏卵であれば、温度管理による流通と消費者の冷蔵庫保管ということですが、生産農場に保冷機能を備えた集卵作業場を持っているところは、自社パッキング工場には見ることがありますが、農場では集卵のみ行いパッキング工場までは常温というところも珍しくありません。haccp風に考えれば、ひび割れたまごは常温保管の際には菌の増殖が想定できると危害要因しますが、
では冷蔵庫を購入して「温度保管することで制御できる」という制御方法を示した場合正直経営者からは苦情が出ること間違いありません。それは、製品事故がない農場(苦情が発生していない農場)からすると必要は分かるがその膨大なコストを会社が負うことに難色を示します。温度変化も鶏卵保管は嫌います。

冷蔵保管した集卵場から販売先までの輸送車両が常温搭載車である場合、その製品リスクはだれが負うのか。よく聞かれる意見です。
運送は納品先の指定した車両で養鶏家側が用意していません。そのため引き上げた品物が温度管理していない流通に乗り始めた場合まで想定するのか。
温度管理していいない車両があるがゆえ「出荷をしない」等のことが現実か。製品説明書では出荷までを責任にしたが、事故が発生した場合は生産元が「この養鶏場」となるのが現実から「紙1枚で責任が区分できると思えないし、費用をかけさせて認証書をもらっても今までと変わらない事例のほうがよほどいいという意見もあります。

これも、認証によるメリットを感じていない一例といえるのです。

一番多い事例は、「そもそも事故がない農場に認証を取得したことで事故が全くないのか」「費用をかけて認証されたら事故はないのか」「販路は拡大するのか」という意見です。

調査がどこかが行ったと思いますが、資料がないため記憶になりますが「認証のある農場とない農場で事故発生や疾病発生が違うか」調査した資料があると思いました。
結果は「有意差はなく、はっきりしない」だったと思います。

つまり、よく聞かれる「費用をかけて認証されたら事故はないのか」に代表するように違いが見えないのです。しかし費用ははっきりわかる。ではその費用対効果は?

認証した農場経営者からも意見があります「HACCP義務化に備えて取得した。JGAP取得に向け準備のうちの一つであり、農場HACCP認証によるメリットはなかった」

多く聞かれます「従業員の意識が向上した」「衛生管理に興味を示し、自らの意見が多く出るようになった」という言葉も聞かれます。

実際構築した、とある農場は「販路は特別拡大していないし、販売先も特に興味を示していない」と金額的な話題はこのような状況です。
しかし「従業員の意識が向上したし、発言が多くなり活性化した」作業者の意識が向上したことを多く上げていました。

現状の問題点として、
①細かいシステムが家畜畜産物に意味を与えているように解説していないことで「そもそもいらない」という意見が出てしまう。
②事故がないことが大変多い農場には、その効果に疑問を思っている。
③認証までの費用が高く、販路拡大につながらない。
④認証に対する販売先の理解がなく、あってもなくても日常違いがないことからそもそも取得する目的が見あたらない。

という、認証が経営に何か大きな利点を示さなければ衛生管理向上だけでは強制力を持たせない限り浸透は難しいと感じます。
ある意見に「昔のシャーペンは芯の使用で短くなると書けなくなって、その芯を抜き去るために短い針みたいなのが付属されていたけど今はないよね。これってなくてもいいものだったからだよね。それと同じで必要と思って制度化したんだろうけど、後にこれってなくてもいいものだったよねとならなければいいけど」

経営者は会社存続のためや従業員を守るためにもメリットが欲しいと言います。それは当然で、衛生管理向上の取り組みだから利益に直結しないといわれれば様子見が多いのもうなずけます。

・普及するにはどうすればよいのか

認証にそれなりの影響を与える制度にしてほしいというのが本音でしょう。税控除や家畜保健衛生所での調査等簡略化をして、まずは諸官庁で対応できるメリットを示すべきでしょう。

衛生管理向上と利益は別である。良く聞かれる意見です。

一理ありますがそもそも衛生管理の取り組みを各社行って生で鶏卵を食することが出来るわけですから、更なる向上にはどうすればいいのか要求文書で示してほしいと感じます。

そうすれば、利益を考えるより先に取り組みしたいと思わせるようになるでしょう。

最近は「JGAP」取得に差分審査(一部免除審査)ができる利点を示していますが「JGAP」の認識がまだないため興味ある方は多いですが、取り組みまでに至らない方も多いと感じます。

今後は農場HACCP認証に価値があるような制度にすると本当の意味で「畜産農場における飼養衛生管理向上の取組」の認証基準といえるような時代が来るのかもしれません。

最後に、先ほどの「導入するメリットは何か」の答えですが、私は「製品を食していただく全てのお客様に安心安全な食品を提供していることを他の製品と異なり認証されていてワンランク上の安心を提供できていることを示すことが出来るツールです」
「従業員の意識向上に大きく寄与するアイテムです」

従業員の意識向上から安心な製品が生まれることが出来、結果信用が生まれるのではないでしょうか。
そのためにも、認証に説得力のある物にしてほしいと思うのです。

すでに認証取得された会社や農場は利益も大事でしょうが、先に衛生管理からのリスク回避や従業員の意識改革を希望されているのだと思います。利益は後からついてくるではありませんが、過度に農場HACCP認証に期待しているのではないのかもしれません。

農場HACCP認証に関する説明会で、印象深いのは鶏卵の滞留卵は腐敗卵になることは分かるが、記録して排除するその手間が分からない。
という質問を思い出します。確かに無意味に見えましょうが、記録することは事故以外のも事故を呼ぶ個所を洗い出す大事な資料でもあるのです。
学校で勉強したノートも後から見返してテスト対策したりと用途があるはずです。ノートを取る必要がないと同じとは言いませんが、目的を持つことが重要なのです。

このような気づきではありませんが、大事なことと認識されると、このシステムの本当の良さが伝わるのだろうといつも思います。

しかし、利益が先である現実から、なかなか理解されずらいのかなと思うのです。そのことが前面に出てしまうため先の話のような展開になってしまうのでしょう。

人に説明するのは大変だとつくづく感じる毎日です。





前回のシリーズに続く第2弾のお話です。
農場HACCP認証を取得される方にお伝えしたい問題点を、構築した側からの意見ですがご紹介いたします。

前回は、農場HACCP認証についてお話をし魅力ある点と導入にデメリットを感じている事例でした。
今回は、構築を開始し多くの方が戸惑うでしょう問題点をお伝えします。

農場HACCP認証は、安全な原料を受け入れ、決まった工程作業を行い、危害をあらかじめ予測(危害要因分析)しそれを防ぐようなシステムを作ります。
その危害程度によっては「haccp計画」として重点的に管理をしモニタリングして製品不良の逸脱を防ぐ取り組みをします。
それだけでなく、逸脱した場合の措置と製品出荷までに至った場合の処置、そしてこの原因の究明と再発防止策を講じます。

今回はこの取り組みの問題点を紹介します。

今ご紹介した工程管理等は第3章に定義づけされているものをお話しています。危害要因分析とお話した部分は第4章に定義づけしたところです。

農場HACCP認証を運用する場合この第3章と4章が要になります。この部分を上手に構築するととりあえず試験運用ができるのです。

つまり、運用できるということは上手に構築できないとシステムが回りださないどころか、システムが存在しないぐらいの無意味感を出します。
ですので、指導時はこの章の構築の大事さと注意点を現場担当に必ず伝えています。
ところが、往々にして上手に構築できても人とのコミュニケーションが十分でない場合大変な事態が後に待っています。

一番多い問題点は、工程管理をまとめる際に「現場と異なる作業方法を構築してしまう」という事例です。多くの農場は構築する者(HACCPチーム責任者が多いでしょうか)が一人であることによる影響です。
ヒアリングして分析シートを作り始めます。当然責任ある者から話を聞いており、自身もそのように入社時教わっているので納得しながら構築をするのです。

ところが現場担当者とのギャップがあることで、運用開始時に「このような作業をしていない」とか、「人により作業方法が異なり、統一できないし不可能」という意見が多く出ます。
特に、担当者が多くなるほどこの事例は多く見ることが出来ます。
経営者が構築する場合権力を行使することが出来るのでいわゆる力でねじ伏せることが出来、この問題は出ないことがあります。(表面化しないだけのこともあります)

作業を統一することが畜産業によると思いますが、できないのが実情です。
それは、いままで統一した作業を行うことをしてこなかったのが原因と推察できます。
人により十分な作業ができる・できないは、個々の入社時に統一した(同じ指導者から)教育を受けていないことがこのような風土を作っているのです。(個々に同じくする必要はない。目的が達成できれば良くその過程はさして重要でないという考え)
つまり、A君は「①から②、③と手順通りするが」B君は「②から始まり④をしながら③をするので結果①はしない」
と人によるのです。「そこで手順は事故防止や作業忘れ防止のためにも①から始まり②③と流れていくのが手順として望ましいが、皆さんはどうか」と全員(休日者がいるので一度の話し合いが成立しない場合が多い)に尋ねます。
その時は「いいですね。その手順で行きましょう」と快諾してくれます。ところが、認証審査が終わりシステム確認のためよく観察してみると以前の通り人により異なるのです。
「手順を変えたのですが?」現場長に尋ねます。彼は答えます「元々統一はできないし、正直話し合いそのものが無駄です」と言います。

私はしばらく返答に困りました。
 これを見てくださった読者の皆様 なぜ返答に困ったでしょうか。
ア、筆者が疲れていて良く答えを聞き取れていなかったから。
イ、打合わせ時には統一することを快諾したのにすぐに反故してしまったから。
ウ、話し合いそのものが無駄と言われたから。
さてどれでしょう。
答えは、イとウになります。

問題は2つあります。
①手順を定めて同じように作業していただくことで平準化するとともに、人による作業ムラを防ぐことが出来ます。またこの作業方法を基にして危害要因をしますので、危害を予測できないのでシステム不安があります。
②決まったことを守る意識がないことを示し、自己流となり楽を求めてしまう傾向が非常に高いのです。この場合「楽」というのは作業の手間を削除し新たな危害を呼ぶということです。

また、約束を守る意欲がないため仕事そのものに不安があり極端な話、決められたことすらできないのに仕事ができるのか重大な懸念があると言えるのです。
運用開始すると、ほぼ例外なく翌週・翌月に作業内容に変更が生じます。これで危害が管理できるという考えのもと作業の組み立てを行っていないため「楽」から作業を組み替えるので、ある意味臨機応変に作業を変更していて、十分な作業詳細を検討しないことが原因です。その結果文書を直す必要があるのです。(この場合、解釈しやすいよう作業方法が簡素化した文書に退化することが多い)

実際②に該当したその農場は修正に手間取ります。運用すると自分たちで決めたことなのに
「そのやり方は意味がない。事故は過去から発生しないのでリスクはない」
「手間がかかる(5分程度の作業延長になるのですが)ので労力の無駄である」
「人により自由な作業方法としたい。それを手順書にすべき」
「そもそも危害がないこの会社に、危害と言って余計なことをさせること自体問題」
「会社の良かった風土が変わり困る」等自由を求める意見が多く出ます。

相手が求めている事項に自己流対応なので問題なしと答えているようなもので、学生でいえば「俺は頭がいいのだから入試を受けてもしょうがない。そんなことより俺の意見で入学させろ」というぐらいの意見に聞こえます。
相手は入試で一定の要件を満たすことを確認し良ければ入学候補となるのですが、この場合受験者が自己基準で要件を満たすことを押し付けて入学候補になるというもので、そもそも成立することはないです。

つまり、そのような意見を言っているに過ぎないのです。

農場HACCP認証で大事なのはシステムが動くことですが、それ以前に決めたことを守るという概念がない場合認証を取ることはお勧めしません。(筆者はコンサルティングして報酬を得ますので言えませんが)

決まり事を守り危害を防ぐわけですから、衛生管理のための取り組みというところから話を始めて下地を作る必要があります。手間を感じるはずですので根気よく続けていきます。

特に年数が経過した人たちは自分たちの行うことに否定的な意見が出るとアレルギーを起こしこのような意見が出ることもあります。ですのでよく話を聞き妥協できるところは妥協案を示し、衛生管理の為にも協力を頂くよう説得しなければなりません。

しっかり、基本を教えることが手間はかかりますが間違いのない進め方になります。

「工程管理」にある作業分析シートは必ず現場の状況に基づいて作成します。複数存在する場合はその数ぶん作成し比較させると各々納得する傾向があります。
この手間を省くと後々大変です。

私は「相手の意見をよく聞き尊重すること」を大事にします。しかし「妥協できない点もありますのでその際は代案を示し相手と一緒に考えてもらう」ようにします。

皆さんを巻き込み一緒に考えてもらうことが大事です。そのことにより問題点を考えてくれるようになります。

一人で進める場合、文書構築はスムーズなのですがシステムは農場担当者全員であるため意思疎通が大事になります。この点を意識して取り組みしていきます。

次回に続きます。

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