2019年もあと3か月となり、飲食・食品を提供している畜産家の皆さんはそろそろHACCP義務化について検討される時期になりました。
完全制度化は2021年からとなりますが、対応するためのソフト面での準備を始める良い時期に差し掛かったと思います。

今日は、そのHACCP義務化についてお話いたします。

まず、いつから制度化されるのでしょうか。
改正食品衛生法では公布(2018年6月13日)から2年以内に施行され、1年の猶予期間を設けて完全制度化します。
ですので2021年とお話しています。

対象は、原則すべての食品事業者とされ、農場運営でのHACCPは義務化対象ではありません。(家畜の飼養管理)
しかし、食品の製造や加工を行う場合は対象となり、自社畜産物の加工(飲食の提供や菓子類・畜産加工品)は制度の範囲にあります。

平成30年でのHACCP導入調査では売り上げが小さい業種ほど対策が進んでいないという結果があり、理由として「制度の趣旨が分かりにくい」という意見が多くあります。

では、私たち畜産家の対策はどのように進めていくのが良いのでしょうか。

まず、HACCP義務化で必要とすることを考えます。
すでに農場HACCPを取得されている方はご理解が早くなりますが、HACCPの考えを取り入れて食品事故を防ぎ、来る東京オリパラでの訪日外国人観光客への安全と安心を提供すると同時に、自社での安全安心を担保させる目的があると言われます。

私たちは、少数の従業員と小さい規模での食品製造や加工を行っていますので、求められる基準は緩やかなものです。(基準Bと呼ばれる区分です)

では、なにをすればよいでしょうか。
①危害要因分析を行う
②モニタリングの方法を定める
③記録の作成と保管
以上3点が主なものです。
基準Aより緩やかな要求事項となります。

基準Aについてや養鶏の方向けには、はてなブログnogutikusan`s dailyをご覧ください。「nogutikusan」で検索して記事をお探しください。
詳細にお話しております。

このうち、①危害要因分析とは
原材料から予測できる危害、調理することで予測できる危害を考えます。
原材料は、自社の畜産物(卵・肉)と料理等の添え物(パセリ・生野菜等)、食器、水があります。
このうち畜産物や添え物は例えば受け入れた場合傷みがあれば菌の増殖等により事故発生が予測できますね。

購入品であれば、消費期限が切れているや包装状態が悪く、真空品なのに空気が混入している、使用開始時異臭がある等予測できます。

ですから、危害分析では今お話した予測できる危害とその影響を考え対応策を決めておきます。
購入品の一例では返品が基本で場合により廃棄もあり得るかもしれません。

食器では良く洗浄したもの(飲食店では当たり前かもしれませんが)を提供することも当然としてされていましょうが、再度確認するうえで危害として予測できます。
不衛生であれば食品事故をおこします。(調理の見た目が悪くなりますから無意識で危害を回避しているのかもしれませんね)

水も水道水であれば問題ないですが、井戸水等は水質を確認されることが大事でしょう。飲用水や提供する調理にも使用しますので安全であることが重要です。

その他、調理品の保存温度に関すること、調理の際に気を付けること、従事者の健康管理や衛生管理についても考えておきます。

普段されていることが多いものですが、調理の際には器具の洗浄(まな板や包丁)や調理以外での作業は手洗い(金銭の受け渡し・トイレの使用後)や、健康の観察(おなかの具合が悪い場合の対応や、手に傷がある場合の対策)もあります。

日常これらはルールを徹底しなくても行われていますが、HACCPでは提出者(第三者)にもわかるよう文書にしておく必要があります。

②モニタリングの方法を定めるとは、調理に際しどのように安全を確認するのか方法を定めます。
肉であれば、中心部60℃や75℃とよく言われます。それが分かるようにお店では温度計を差し込み確認する、加熱時間を6分にする、ハンバーグであれば棒で肉を刺し透明な肉汁が出るまで調理する等あると思います。
その普段されていることを文書にしていただくだけです。

同じ理由になりますが第三者は文書を見ないとわからないためです。

③記録の作成と保管では、今お話したことを実施されていることを記録していただくだけです。
例えば、原料の受け入れはどこから購入(納品)し、消費期限はいつまでで、何℃の冷蔵庫で保管しているか。
トイレは不衛生になりやすいため、定期的に清掃する必要がありますのでその実施記録。
従事者の皆さんの健康状態を確認するチェック表兼記録表。
その他、調理提供品に関しての記録も必要でしょう。

詳細は厚生労働省のhaccpの考え方に基づく衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)平成29年9月をご覧いただくと、ルールや記録表の参考例を示していますので大変役立ちます。

なお、HACCPの認証は取得義務でありません。今お話した通り、HACCPの考えを取り入れて記録していることが重要で認証がないことによる影響はありません。
毎年都道府県ではHACCPについての講習会を開催されており、保健所等でご確認いただくと参考になります。

まもなく東京オリパラが開催され日本も活気づく1年になることでしょう。私たち畜産業も活気づく年でありたいものです。

6次産業化を展開されている皆さんも自社製品の売り込む良い1年であればと思います。

食品衛生法が改正され施行まであとわずか。
安全でおいしい自社製品にhaccpの考え方を取り入れて万全な対策を講じ活気づく来年に向けて頑張りましょう。