JGAP家畜畜産物の制度ができ認証が始まり2年が経過しました。
家畜畜産物の審査を行う機関は2つあり、中央畜産会、エス・エム・シーの2つが行います。
7月までの認証総数は、豚38農場、採卵鶏24農場、肉牛24農場、乳牛20農場となり、団体認証は豚1団体があります。
およそ100農場が認証されており、それぞれ目標目指して事業展開をされていることでしょう。

さて、今回はJGAPについてお話をいたしましょう。
何回かに分けてお話いたします。
今日は、JGAPとは何でしょうか。そして取得するメリットとは何でしょうか。の2つに絞りお話します。

1、JGAPとは何でしょうか
JGAPとは、生産物の安全のため作業ごとに取り組み方法を作り、事故を防ぐ評価し実施する工程(1つ1つの作業方法)管理をする取り組みで、農場HACCPの考えを取り入れています。
それ以外にも、環境保全、労働安全を意識した取り組みを行い国際的に関心のある取り組みを行うことで世界基準の認証制度に近いGAPの日本版です。

国際基準のGAPには「グローバルGAP」「カナダGAP」「SQF」日本の「ASIA GAP」もありましょう。

なぜGAPがあるのでしょうか。
それは、世界中自国のGAP制度を作り食品の安全を評価し認証することで自国のみならず世界を市場に輸出等を意識するうえでの一つの選択肢になると考えられています。
先ほどお話しましたが、各国のGAPは認証するための基準の9割はどの国も同じ内容で、1割程度がその国実情に合った基準を作り認証しているのが実情です。

つまり、GAPはどの国でも通用できる基準でもあるということで、輸出というキーワードが出るのでしょう。

実際、EUはGAP認証に大変意識を持っている国でもあります。あることが望ましく、ない場合は輸入にはハードルが高いともいえるのです。

食品安全意識が高い国に対しこのGAPは大変重要であると共に必須の制度なのかもしれません。

日本では、青果物・茶等の認証にはJGAPの上級版ASIA GAPがあり昨年(2018年)世界的な食品企業の団体GFSIが信頼に足りる認証制度の一つとして承認し認識されています。
家畜畜産物はまだASIA GAP認証制度はありませんが、将来に向けて活動されることでしょう。

では、JGAPはどのような基準で認証されるのでしょうか。

先ほどのように、生産物の安全、環境保全、労働安全があります。それ以外に人権と福祉、アニマルウェルフェア、家畜の衛生があり主に5つの項目からなる基準で構成されます。

審査はこの全項目113全てに対し「適合」「不適合」「適用外」と評価します。
このうち、農場HACCPの考えが基準となるものは認証書が有効期間内である場合「適用外」となり適合していると読み替えます。

基準項目のうち、必須として必ず適合しなければならない基準と、重要として重要の項目全ての95%を適合しなければならい基準、努力として審査に影響を与えないものと、3つの基準がそれぞれ113の中に重みづけされています。

つまり、認証するうえでかつ重要な基準のうえで外すことが出来ない必須が適合できないということは認証されないというのは、ある意味当然でもあります。

審査の際全て適合し合格という方はそう多くないと感じます。何等か不適合となり改善策を示して合格となるのが一般的でもあります。

これは、指導者の技量によるところもありますが解釈の違いや求めている適合基準に満たない対策等考え方の違いが多いと感じます。
ですので、審査の際に不適合と判断されても失望することでないのが実情です。
審査は落とすために行っていません。基準に適合しないと認証できないため厳しいように見えますが、対策を講じることで必ず認証書が発行されます。
それだけ認証されることは自社製品の安全性が高く国際的に見ても一定の評価があるといえます。

輸出を意識している方には相手国がGAPを重要視している場合は自国でGAPがある食品と他国の認証がない食品を扱う場合どちらを選択したいかと考えれば、おのずと答えが出ることから、国によりGAPが必要又は重要となるのは当然です。

また、先ほどのGFSIもその通りで、参加企業には有名な企業が並びます。日本国内の企業も多くあり、その企業はGAPの製品を積極的に取り入れることを表明している小売り大手・流通業者があります。

つまり、輸出も重要ですが、日本国内においても特に大手に自社の製品を扱うチャンスがあったとしてもバイヤーはその基準から選定を見送るということも十分あります。
それだけ、ただの認証ではないということがわかりますが、消費者はGAPを知りませんし、中小の流通業者・小売業者もGAPを知りません。

ですから大きなお話にならないのが実情です。

2、JGAP取得するメリット
では、メリットは何でしょうか。JGAP認証はその商品が工程ごとに危険を見つけ対策を講じた抜き打ち検査より安全な製品であることを示すことが出来ます。また世界的に関心のある環境を考えた生産手法を取り入れ、労働者の権利を尊重し動物の権利を考え取り入れているという考えを示す認証です。
このことで、認証がある製品は安全安心であり持続可能な農業(畜産業)が展開していることを消費者(販売者)等に示します。
ですから、JGAP取得のメリットは
1、安全な畜産物認証である(自社が認証しておらず、第三者の評価であることで信頼度が高くなる)
2、おいしさはどれも同じであることで、安全を重視している消費者(販売者)に自社製品認識に貢献できる
3、大手販売者ほど関心が高い認証の一つであり、選定の一つのアイテムでありえること
4、大手販売者が関心あるということは、ゆくゆくは中小販売者も選定基準の一つとして考えてくる可能性から、販路拡大のチャンスとなる可能性がある
5、輸出を検討している生産者や販路先外国の販売者と接点がある方は相手国のGAP認知度により取得の重要性が高まる認証である


先ほどお話しましたが輸出には大きな影響を与えることが予測できます。しかし輸出は認証があるから知らない相手国の知らないスーパーに今すぐ納品ということはありません。
相手先と接点があり納品するという段階で初めてメリットとして現れることでしょう。ですから全ての方に恩恵があるということではありません。

しかし、日本国内で見てみると少し事情が違います。

先ほどの通り、大手の一部はGFSIのメンバーでもあります。また大手販売店も農林水産省のGAPパートナーとして表明し登録されています。
つまり、大手ほど積極的に動いているのが実情です。大手はたくさんの店舗を持つこと、知名度がありそれなりの集客があるということ、つまり商品が売れるということ。
売れるということは納品数が多く売り上げに貢献するということです。

しかし、選定されるハードルは高いと言われます。自ら売り込む方は多くないと思いますが、売り込んでも検討されるだけで採用は厳しいのです。
一部バイヤーさんのブログ等でも裏話としてあるかと思います。

大手は、自社にブランド力があることを知っています。そのブランドが傷つくことは会社イメージを損ない店舗が多いことでダメージが大きくなることを知っています。
事故がある食品は大手でなくても敬遠されますが、その安全である担保を示すのも難しいものです。
その中で、世界的に浸透しつつあるGAPを選定基準にしているというのもある意味理にかなっているといえます。

中小はまだそこまでの考えに至るところは少ないかもしれません。

しかし、買い物人口が少なくなり特に地方部は大手も含め小売店の閉店・移転統合が進んでいるのも事実です。
中小は地域密着型が多いため、買い物人口が少なることは購買力が下がることを意味しやがて売り上げの減少になるという構図が出来上がり不安でもありましょう。

ですから、独自色を出して買い物人口を広げる等の努力をしているところもあります。
その中で地産地消をメインにしているところ、有機JAS商品を充実するところ、自社の厳しい基準で選定した食品(おいしく・安全で安心等)を充実し販売する等独自路線がさまざまあります。

一方の大手はネット通販等独自開発もあり、人口減少地域であっても商品の提供が可能であり店舗を持つ以外の選択もあることでしょう。
またPB(プライベートブランド)もあり低価格で商品提供できる価格訴求の商品も充実していて様々な購買者の要求を満たすような営業戦略をとっています。

このことから、大手では積極的であり中小でも独自路線の中に自社基準で厳しく選定した食品等その物差しとして有効である認証の有無が左右されることもあります。

私たち生産者も必死ですが販売店はもっと必死です。何しろ大手でなければ何らかの独自色を示し消費者に目を向けてもらうための努力があっての売上げになることから、ただ商品が沢山あるだけでは、買い物人口に左右され売り上げ減少等経営戦略の見直しも避けられないというのがあるからです。

この中で、認証品に付加価値を見つけることが取得するメリットといえるのでしょう。

認証品に付加価値金額は上乗せされません。それは消費者が敬遠する要因だからです。ですが、同じ価格ならば選んでもらえる。そして、販売店も安全であることを示すことが出来るという関係から今後積極的に動くと予測しています。

おいしさはどちらも同じであり、安全はどちらも「そうかもしれない」であれば、認証があることで「安全である」と断言できるほうが有利なはずです。

なおかつ価格は同じですとなれば、消費者は振り向くことは自然なことです。

誤解される方も多いのですが、認証があるから売り上げ倍増とか、引き合いが増えて困るということはありません。
取引は今までと同じで、少しずつJGAP認証に理解が深まると共に引き合いが増えていくと考えるべきものです。それは自社の信頼も加味されて決まるもので、認証があるからあぐらをかいているだけでは、取引量が増えることは何であってもないのです。

ですから、JGAP取得するメリットは自社の信頼ある製品のうえに更なる信頼を上乗せし魅力を感じた新規バイヤーが興味を持ち取引が始まるという何もない認証と明らかに違う商品へのアプローチがあるといえます。

認証があるないでは今後そのような環境変化があることでしょう。

2年で100農場が認証されました。その中のいくつかは東京オリパラの食材選定に選ばれたのかもしれません。
今後は、商品の付加価値や選択基準の一つがJGAPになることも十分予測されます。それ以外にも農場HACCPが選定基準になることもありましょう。

何もない製品と認証がある製品。同じ価格ならどちらを選ぶのか。

この言葉は将来の自社製品のあり方を占ううえでの道しるべになるかもしれません。
国際的に普及しつつあるGAP。その日本版がJGAP、上級版はASIA GAPですが家畜畜産物を対象にしていません。国際的にはグローバルGAPが主流でしょうが、やがてはJGAP家畜畜産物も
仲間に入る時代が来ると思います。
家畜畜産物のGAPは日本ではまだマイナーかもしれませんが積極的な国も多くそれが世界ではメジャーなのかもしれません。
日本国内で販路拡大を検討されるのであれば、あった方が良い認証でもあります。
世界を相手に販路拡大であってもあったほうが良い認証でもあります。