初夏から年内に向けて農場HACCP認証の研修が多く開催されています。
代表的な機関である中央畜産会の指導員研修(基礎を学ぶ研修)は既に秋の開催回以降残り2回となり本年の研修もわずかになりました。
多くの方が受講され、農場へ展開し衛生管理とシステム構築に取り掛かるというところもあるでしょう。
農場が取得し保有されている数はおよそ460農場(令和5年1月時点農水省発表)となり、取得目的様々あると思いますが、皆さんの目的に向けて邁進されていることと思います。
採卵鶏を専門にご指導していますので、採卵鶏農場についてお話ししますが、農場HACCP認証は採卵鶏に限らずすべての畜種に対しても畜産物の安全や安心を得られるように危害を排除したシステムを構築されています。
ですから、採卵鶏以外の畜種にどのように展開するのかを参考にしながらご覧ください。
さて、採卵鶏での認証数は105農場となります。令和5年の畜産統計によれば農家戸数(1000羽以上飼養する戸数)は1810戸で全体の約5%にあたります。戸数と認証農場数は同じではありませんので戸数から見て少ないと見ると良いでしょう。
では、その約5%しかない農家さんはブームで取得されているのでしょうか。
それとも目的があるのでしょうか。
それとも目的があるのでしょうか。
採卵鶏は大型産業と言われ、飼養羽数は年々増加していきます。
1戸当たりの平均飼養羽数は75000羽、飼養羽数の規模別で見ると10万羽以上の飼養をしている農家が全体の8割と大規模化しています。
1戸当たりの平均飼養羽数は75000羽、飼養羽数の規模別で見ると10万羽以上の飼養をしている農家が全体の8割と大規模化しています。
農場HACCP認証と言えば安全で安心と言うキーワードを耳にします。
確かに畜産物の提供には安全であり安心でなければなりません。
では、生産者は安全であり安心な畜産物を消費者まで確実に届けるようなシステムでなければならないのかと言えば、それは困難であると言えます。
物流が発達しそれぞれに役割がある時代、生産物が完全に安全で、流通過程に流れる場合冷蔵輸送、先入れ先出しといった商品の品質保持といった配慮も必要です。
これは生産者ができる領域ではありません。
これは生産者ができる領域ではありません。
販売先も温度管理が適切で、消費期限内で売り尽くし品質劣化を避ける行動もなければ安全であるはずはありません。
安全であり安心とは、生産者側流通過程が決めるものではなく、消費者が購入し消費されて初めて安全であり安心であるということです。
ですから、農場で出来る安全であり安心とは生産過程で危害要因とされる品質不良、異物混入、生産の原動力となる家畜への安全性も大事な点になります。
そしてここを意識していただきたいのは、生産の段階で不良状態があると、流通ではじくことはできず、消費者へ渡るということです。
消費者に渡ったということは、これは苦情に至り製品回収になるということを意味しています。
つまり不良品が発生したという現実になります。
つまり不良品が発生したという現実になります。
現在、製品回収になる事例は消費者庁に届け出て告知されます。
一昔前は地域の県単位で告知だけでした。
一昔前は地域の県単位で告知だけでした。
ですから、回収店舗と県単位の告知程度でしたから、広い範囲に知られると言うことはありません。
生産側は自然相手だから仕方ない、不可抗力は免責される事例と考えるかもしれません。
でもそういう問題ではありません。
食品は安全であり安心という前提で購入します。
加熱して食べるという場合もあるでしょうが、鶏卵の場合生食で食べるということもします。
加熱して食べるという場合もあるでしょうが、鶏卵の場合生食で食べるということもします。
当然生食できるような安全性は必要です。
ですから生食できるために衛生管理を行い、鶏卵に入り込む例えば食中毒菌(サルモネラ菌等)を寄せ付けないことも当然ですが、品質劣化防止も必要です。
ですから生食できるために衛生管理を行い、鶏卵に入り込む例えば食中毒菌(サルモネラ菌等)を寄せ付けないことも当然ですが、品質劣化防止も必要です。
食中毒菌(サルモネラ菌等)の排除以外にも品質劣化も安全上必要なはずです。
腐り玉(腐敗卵)や薬剤残留による食品衛生法に違反する管理もあります。
多くは、季節による不可抗力や多くの農場で寄生虫を防除するために必須だから仕方ないと捉えがちです。
でも食品の安全という視点で見ると、本当に不可抗力なのかという点まで考えが至る農場は多くないように見えます。
例えば、数年前千葉県では腐敗卵の販売が発生し、店舗が回収するという事例があります。
詳しくは弊所のブログから参照いただきたいところですが、この事例の場合では、店舗側が腐敗卵の苦情が消費者よりあったと旨県に届けています。
つまり何らかの過程に不備があり安全でなく、安心できない事例であるということです。
これを生産者側が悪いというだけで片付けるわけにはいきません。
流通過程や箱玉業者が先入れ先出しせず品質が劣化したということも考えることもできます。
又は店舗で販売する際に傷が入り劣化してということもあるでしょう。
ただ、腐り玉という場合の多くは常温で長いこと放置された場合に見られますので、生産サイドで問題があると考えることもできます。
そうなると、農場の管理はどの程度だったのかという課題が見えてきます。
1日1万個、10万個生産したうちの1個でしょうと言うでしょう。
でも品質不良卵が流通過程を経て消費者に渡り、喫食時に発覚したという事実に何ら変わりはありません。
不良卵は何であれ不良卵なのです。
結果がすべてで過程はどうでもよいのです。
現実は不良卵です。
(農場HACCP認証ではその原因究明は必須です。つまり繰り返すことをしないという意識です)
結果がすべてで過程はどうでもよいのです。
現実は不良卵です。
(農場HACCP認証ではその原因究明は必須です。つまり繰り返すことをしないという意識です)
この認識の差が安全であり安心な鶏卵を作るという意識の差になります。
確率が低ければ免責される、やむを得ない、仕方ないでは恐らく高確率で安全な鶏卵ができるでしょうが、防止策がないので事故が起きて騒ぎになるという事例になる典型的なことかもしれません。
農場HACCPの価値とは何でしょうか。
多くは意味を感じないという農場も多いと思います。
でも食品事故を防ぐためには生産者側ができる当たり前のことは、認証があるなし関係なく行うべきものです。
でも食品事故を防ぐためには生産者側ができる当たり前のことは、認証があるなし関係なく行うべきものです。
ただ鶏が卵を産み回収してパッキングすればよいという、他人任せ的な発想は今お話しした危害と呼べる(サルモネラ、腐り玉、薬品残留等)に対応できていないと言えます。
バタリーだからサルモネラ菌は存在しない(はず)、腐り玉は高確率で発生しないし区別できないからやむを得ないもの(免責されるもの)、薬品残留は寄生虫や病気対策上当たり前のことであり防止策は存在しない(そもそもそうならない管理を想定していない)といった課題や意識の不足が存在しています。
その安全という言葉から必要とされるシステムを農場HACCP認証が決めていて、そのためには農場が展開できる方法を自身で考えさせて実行させるのがこの認証のメインになるのだと感じます。
その方法は弊所のホームページにも書きましたし、ブログでもお話ししていますから省略しますが、例えばバタリーだからサルモネラ菌は存在しないというのも今の時代本当にそうなのか?と感じます。
鶏糞に存在するサルモネラ菌はついばむことで鶏に入り込み鶏卵に移行してインエッグと呼ばれる鶏卵になるとされます。
でもバタリーは確かに鶏糞と鶏が分離されて危害を小さくしていると見えますが、昔の高床式のように糞が鶏に戻ることがなければその通りかもしれません。
でもバタリーは確かに鶏糞と鶏が分離されて危害を小さくしていると見えますが、昔の高床式のように糞が鶏に戻ることがなければその通りかもしれません。
でも垂直ゲージが主流の場合の鶏糞は集糞ベルトを介して外に異動させます。
ベルトは表面と裏面を循環して動きますので多くの場合表面の鶏糞がいなくなり裏面として移動している場合の多くは鶏の頭上を動いています。
ベルトは表面と裏面を循環して動きますので多くの場合表面の鶏糞がいなくなり裏面として移動している場合の多くは鶏の頭上を動いています。
この時100%鶏糞がなく真っ白なベルトであれば鶏糞との分離はできているでしょう。
でも多くは剥がす板で鶏糞を取り除きますが、完全ではなく時間とともに板の劣化が進み取り残しが存在します。これを鶏がついばむとバタリーの中で糞の喫食が発生します。
でも多くは剥がす板で鶏糞を取り除きますが、完全ではなく時間とともに板の劣化が進み取り残しが存在します。これを鶏がついばむとバタリーの中で糞の喫食が発生します。
そうなるとバタリーは安全であると言い切れません。
でも高確率で発生しないから意味がないと多くの方は言います。
問題は品質事故は起こる確率は低いが発生時は甚大になるという視点を農場自身認識できているのかということです。
問題は品質事故は起こる確率は低いが発生時は甚大になるという視点を農場自身認識できているのかということです。
そんな確率が低いものにお金を投じる意味を感じないという方の典型的な論理ではありますが、被害を出した農場はその後どうなったのかという点まで知る人はまずいません。
それはうちの農場の話ではないから関心がないということが要因です。
それはうちの農場の話ではないから関心がないということが要因です。
でも今回のような事例では生産側の問題を箱問屋が検卵しても見つけることが出来ず消費者に渡り、店舗が回収と届け出をしています。
商品の納入は停止しましたし、その後の回復も容易ではないでしょう。
商品の納入は停止しましたし、その後の回復も容易ではないでしょう。
鶏卵は今は不足しているからそんなの1か月もあれば回復するという人もいるでしょう。
そんな甘い時代ではありません。
今店舗では皆さんの農場しか商品を提供していないというところはまず見たことはありません。
規模が小さく個人商店であれば別ですが、まずまずの規模では3,4種あるいは5,7種程度の鶏卵が棚に詰まった状態で売っています。
今店舗では皆さんの農場しか商品を提供していないというところはまず見たことはありません。
規模が小さく個人商店であれば別ですが、まずまずの規模では3,4種あるいは5,7種程度の鶏卵が棚に詰まった状態で売っています。
1つ取引先が停止してもまず問題はありません。
鳥インフルエンザで販売先は学習しています。○○県産、△△県産といった複数仕入が主流で問題を回避する準備をしているのです。
鳥インフルエンザで販売先は学習しています。○○県産、△△県産といった複数仕入が主流で問題を回避する準備をしているのです。
では、うちは大きいから取引は止まらないよと言えるでしょうか。
お店は大手企業と認識しているのならば有名な東西の大手養鶏場になるでしょうから、それ以外は「大きいでしょうね。多分」という程度になるはずです。
繰り返しますが複数納品がある店舗では1つくらいは誤差のうちです。
お店は大手企業と認識しているのならば有名な東西の大手養鶏場になるでしょうから、それ以外は「大きいでしょうね。多分」という程度になるはずです。
繰り返しますが複数納品がある店舗では1つくらいは誤差のうちです。
現実として不足が生じた場合商社の子会社である餌メーカーの系列農場から仕入れができる現在では、自分が大手と言って満足しているぐらいでは大手ではありません。それは他社が決めることで自分自身の評価は意味がないということです。
そんな無意味な話をするより、最初から問題を排除した農場システムを構築した方が有意義です。
農場HACCP認証はその意識を改善させ、安全である畜産物を作る取り組みをさせます。
そしてそれが安心と言う価値を生み農場は安全であり安心な畜産物を作るということにつながるのです。
そしてそれが安心と言う価値を生み農場は安全であり安心な畜産物を作るということにつながるのです。
それを意味がない、費用対効果から無駄、そんな余裕がないで片付けるのも農場の考えであり正解でもあるでしょう。
でも品質劣化や法定伝染病発生は大きな経営トラブルに至り長く影響を受けやすいということを知る経営者はそんなもの無駄とは言わないはずです。
でも一部は知らないからそれが主流になる。とても心配なことです。
確かに5%ぐらいの認証物にここまでこだわること自体変わり者と言われるかもしれません。
でも1日10万個の鶏卵から1個でも不良卵が発生すると大きな影響を及ぼすことを知ると、確率論で片付けるよりそうしない方法を考えた方が費用対効果から見ても得策に見えます。
後はやる気があるのか、そうでないのかの意識の差になっているのだと感じます。
鳥インフルエンザといった農場への侵入措置も農場HACCP認証を使うことで飼養衛生管理基準の適合や危害を入れない方法、増やさない方法も構築できるはずです。
どうしても畜産業では認証物はマイナーな物と捉えられてしまうものですが、本当に農場を安心して運営するには、このシステムを取り入れることが自己流で行うよりシビアで無駄をなくしているように見えます。
弊所は指導する立場なので偏っていると思われがちですが、農場を知るものから見ても今の農場は意識レベルは大きな差があるのもまた現実です。
その意識の差はただの差で済むのか、その意識はもしかすると数年先大きな差になって農場存在の価値まで大きく差になっている可能性もあるように感じます。
皆さんは認証というとどのような物と感じますか。