nogutikusanの畜産ブログ のぐ畜産認証支援部公式ブログ

認証を支援しているのぐ地久三事務所 認証部署「のぐ畜産事務所」が皆様の認証への理解やメリット・そうでないものあらゆる視点でお話ししています。これから認証を活用したと考えている方や既に取り組みをしていて感じる疑問をこのブログから発信しています。

畜産物の認証を専門にしている事務所から、感じること・思うことをブログにしてお届けしています。8月からはのぐ畜産事務所が皆様の疑問や行動している課題にお応えしていきます。

初夏から年内に向けて農場HACCP認証の研修が多く開催されています。
代表的な機関である中央畜産会の指導員研修(基礎を学ぶ研修)は既に秋の開催回以降残り2回となり本年の研修もわずかになりました。

多くの方が受講され、農場へ展開し衛生管理とシステム構築に取り掛かるというところもあるでしょう。

農場が取得し保有されている数はおよそ460農場(令和5年1月時点農水省発表)となり、取得目的様々あると思いますが、皆さんの目的に向けて邁進されていることと思います。

採卵鶏を専門にご指導していますので、採卵鶏農場についてお話ししますが、農場HACCP認証は採卵鶏に限らずすべての畜種に対しても畜産物の安全や安心を得られるように危害を排除したシステムを構築されています。

ですから、採卵鶏以外の畜種にどのように展開するのかを参考にしながらご覧ください。

さて、採卵鶏での認証数は105農場となります。令和5年の畜産統計によれば農家戸数(1000羽以上飼養する戸数)は1810戸で全体の約5%にあたります。戸数と認証農場数は同じではありませんので戸数から見て少ないと見ると良いでしょう。

では、その約5%しかない農家さんはブームで取得されているのでしょうか。
それとも目的があるのでしょうか。

採卵鶏は大型産業と言われ、飼養羽数は年々増加していきます。
1戸当たりの平均飼養羽数は75000羽、飼養羽数の規模別で見ると10万羽以上の飼養をしている農家が全体の8割と大規模化しています。

農場HACCP認証と言えば安全で安心と言うキーワードを耳にします。

確かに畜産物の提供には安全であり安心でなければなりません。

では、生産者は安全であり安心な畜産物を消費者まで確実に届けるようなシステムでなければならないのかと言えば、それは困難であると言えます。
物流が発達しそれぞれに役割がある時代、生産物が完全に安全で、流通過程に流れる場合冷蔵輸送、先入れ先出しといった商品の品質保持といった配慮も必要です。
これは生産者ができる領域ではありません。

販売先も温度管理が適切で、消費期限内で売り尽くし品質劣化を避ける行動もなければ安全であるはずはありません。

安全であり安心とは、生産者側流通過程が決めるものではなく、消費者が購入し消費されて初めて安全であり安心であるということです。

ですから、農場で出来る安全であり安心とは生産過程で危害要因とされる品質不良、異物混入、生産の原動力となる家畜への安全性も大事な点になります。

そしてここを意識していただきたいのは、生産の段階で不良状態があると、流通ではじくことはできず、消費者へ渡るということです。

消費者に渡ったということは、これは苦情に至り製品回収になるということを意味しています。
つまり不良品が発生したという現実になります。

現在、製品回収になる事例は消費者庁に届け出て告知されます。
一昔前は地域の県単位で告知だけでした。

ですから、回収店舗と県単位の告知程度でしたから、広い範囲に知られると言うことはありません。
生産側は自然相手だから仕方ない、不可抗力は免責される事例と考えるかもしれません。

でもそういう問題ではありません。

食品は安全であり安心という前提で購入します。
加熱して食べるという場合もあるでしょうが、鶏卵の場合生食で食べるということもします。
当然生食できるような安全性は必要です。
ですから生食できるために衛生管理を行い、鶏卵に入り込む例えば食中毒菌(サルモネラ菌等)を寄せ付けないことも当然ですが、品質劣化防止も必要です。

食中毒菌(サルモネラ菌等)の排除以外にも品質劣化も安全上必要なはずです。

腐り玉(腐敗卵)や薬剤残留による食品衛生法に違反する管理もあります。

多くは、季節による不可抗力や多くの農場で寄生虫を防除するために必須だから仕方ないと捉えがちです。

でも食品の安全という視点で見ると、本当に不可抗力なのかという点まで考えが至る農場は多くないように見えます。

例えば、数年前千葉県では腐敗卵の販売が発生し、店舗が回収するという事例があります。
詳しくは弊所のブログから参照いただきたいところですが、この事例の場合では、店舗側が腐敗卵の苦情が消費者よりあったと旨県に届けています。
つまり何らかの過程に不備があり安全でなく、安心できない事例であるということです。

これを生産者側が悪いというだけで片付けるわけにはいきません。

流通過程や箱玉業者が先入れ先出しせず品質が劣化したということも考えることもできます。
又は店舗で販売する際に傷が入り劣化してということもあるでしょう。

ただ、腐り玉という場合の多くは常温で長いこと放置された場合に見られますので、生産サイドで問題があると考えることもできます。
そうなると、農場の管理はどの程度だったのかという課題が見えてきます。

1日1万個、10万個生産したうちの1個でしょうと言うでしょう。

でも品質不良卵が流通過程を経て消費者に渡り、喫食時に発覚したという事実に何ら変わりはありません。
不良卵は何であれ不良卵なのです。
結果がすべてで過程はどうでもよいのです。
現実は不良卵です。
(農場HACCP認証ではその原因究明は必須です。つまり繰り返すことをしないという意識です)

この認識の差が安全であり安心な鶏卵を作るという意識の差になります。

確率が低ければ免責される、やむを得ない、仕方ないでは恐らく高確率で安全な鶏卵ができるでしょうが、防止策がないので事故が起きて騒ぎになるという事例になる典型的なことかもしれません。

農場HACCPの価値とは何でしょうか。

多くは意味を感じないという農場も多いと思います。
でも食品事故を防ぐためには生産者側ができる当たり前のことは、認証があるなし関係なく行うべきものです。

ただ鶏が卵を産み回収してパッキングすればよいという、他人任せ的な発想は今お話しした危害と呼べる(サルモネラ、腐り玉、薬品残留等)に対応できていないと言えます。

バタリーだからサルモネラ菌は存在しない(はず)、腐り玉は高確率で発生しないし区別できないからやむを得ないもの(免責されるもの)、薬品残留は寄生虫や病気対策上当たり前のことであり防止策は存在しない(そもそもそうならない管理を想定していない)といった課題や意識の不足が存在しています。

その安全という言葉から必要とされるシステムを農場HACCP認証が決めていて、そのためには農場が展開できる方法を自身で考えさせて実行させるのがこの認証のメインになるのだと感じます。

その方法は弊所のホームページにも書きましたし、ブログでもお話ししていますから省略しますが、例えばバタリーだからサルモネラ菌は存在しないというのも今の時代本当にそうなのか?と感じます。

鶏糞に存在するサルモネラ菌はついばむことで鶏に入り込み鶏卵に移行してインエッグと呼ばれる鶏卵になるとされます。
でもバタリーは確かに鶏糞と鶏が分離されて危害を小さくしていると見えますが、昔の高床式のように糞が鶏に戻ることがなければその通りかもしれません。

でも垂直ゲージが主流の場合の鶏糞は集糞ベルトを介して外に異動させます。
ベルトは表面と裏面を循環して動きますので多くの場合表面の鶏糞がいなくなり裏面として移動している場合の多くは鶏の頭上を動いています。

この時100%鶏糞がなく真っ白なベルトであれば鶏糞との分離はできているでしょう。
でも多くは剥がす板で鶏糞を取り除きますが、完全ではなく時間とともに板の劣化が進み取り残しが存在します。これを鶏がついばむとバタリーの中で糞の喫食が発生します。
そうなるとバタリーは安全であると言い切れません。

でも高確率で発生しないから意味がないと多くの方は言います。
問題は品質事故は起こる確率は低いが発生時は甚大になるという視点を農場自身認識できているのかということです。

そんな確率が低いものにお金を投じる意味を感じないという方の典型的な論理ではありますが、被害を出した農場はその後どうなったのかという点まで知る人はまずいません。

それはうちの農場の話ではないから関心がないということが要因です。

でも今回のような事例では生産側の問題を箱問屋が検卵しても見つけることが出来ず消費者に渡り、店舗が回収と届け出をしています。
商品の納入は停止しましたし、その後の回復も容易ではないでしょう。

鶏卵は今は不足しているからそんなの1か月もあれば回復するという人もいるでしょう。

そんな甘い時代ではありません。
今店舗では皆さんの農場しか商品を提供していないというところはまず見たことはありません。
規模が小さく個人商店であれば別ですが、まずまずの規模では3,4種あるいは5,7種程度の鶏卵が棚に詰まった状態で売っています。

1つ取引先が停止してもまず問題はありません。
鳥インフルエンザで販売先は学習しています。○○県産、△△県産といった複数仕入が主流で問題を回避する準備をしているのです。

では、うちは大きいから取引は止まらないよと言えるでしょうか。
お店は大手企業と認識しているのならば有名な東西の大手養鶏場になるでしょうから、それ以外は「大きいでしょうね。多分」という程度になるはずです。
繰り返しますが複数納品がある店舗では1つくらいは誤差のうちです。

現実として不足が生じた場合商社の子会社である餌メーカーの系列農場から仕入れができる現在では、自分が大手と言って満足しているぐらいでは大手ではありません。それは他社が決めることで自分自身の評価は意味がないということです。

そんな無意味な話をするより、最初から問題を排除した農場システムを構築した方が有意義です。

農場HACCP認証はその意識を改善させ、安全である畜産物を作る取り組みをさせます。
そしてそれが安心と言う価値を生み農場は安全であり安心な畜産物を作るということにつながるのです。

それを意味がない、費用対効果から無駄、そんな余裕がないで片付けるのも農場の考えであり正解でもあるでしょう。

でも品質劣化や法定伝染病発生は大きな経営トラブルに至り長く影響を受けやすいということを知る経営者はそんなもの無駄とは言わないはずです。

でも一部は知らないからそれが主流になる。とても心配なことです。
確かに5%ぐらいの認証物にここまでこだわること自体変わり者と言われるかもしれません。

でも1日10万個の鶏卵から1個でも不良卵が発生すると大きな影響を及ぼすことを知ると、確率論で片付けるよりそうしない方法を考えた方が費用対効果から見ても得策に見えます。

後はやる気があるのか、そうでないのかの意識の差になっているのだと感じます。

鳥インフルエンザといった農場への侵入措置も農場HACCP認証を使うことで飼養衛生管理基準の適合や危害を入れない方法、増やさない方法も構築できるはずです。

どうしても畜産業では認証物はマイナーな物と捉えられてしまうものですが、本当に農場を安心して運営するには、このシステムを取り入れることが自己流で行うよりシビアで無駄をなくしているように見えます。

弊所は指導する立場なので偏っていると思われがちですが、農場を知るものから見ても今の農場は意識レベルは大きな差があるのもまた現実です。

その意識の差はただの差で済むのか、その意識はもしかすると数年先大きな差になって農場存在の価値まで大きく差になっている可能性もあるように感じます。

皆さんは認証というとどのような物と感じますか。

令和5年の農場HACCP認証指導員研修が始まりました。
現在農場HACCP認証を取得して活動されている農場数は8月1日時点で462農場とその数は年々増えています。

認証を審査する審査機関は2団体あり、公益社団法人中央畜産会と株式会社SMCとなります。

比率的に見ると中央畜産会が多く348農場を審査しています。
農林水産省が本年1月25日時点で集計した認証農場数は461農場と今月1日時点より1農場増えている状況です。

では畜種別にみるとどうでしょうか。

1月25日時点で認証が多い畜種順に、豚・肉牛・採卵鶏・乳用牛と並びます。
農場HACCP認証と言えば、うるさく、経営に寄与しない物、費用対効果から見て経済的メリットが見えにくいといった、利益という視点から見ると投じる資金(構築や維持するための費用)から魅力を感じないという方も多いと思います。

農場HACCPが少しブームだった平成20年代は安全な畜産物を作るために第三者の認証があることでその取り組みを持続することで、安全な生産をしているという他の農場とは違う(差別化している)という見える安全性に期待が集まったと思います。

しかし畜産物が安全でないものを作る農場は多くはありませんので、認証があるから安全で、ないから不安ということはありません。

令和4年から本日までの間、畜産物が起因する食品事故はありません。
鶏卵であれば、腐り玉が発生したとか、生乳で品質不良が発生したとか、食肉でも金属片等の異物が生肉に混入して回収ということもありません。

それぞれ店頭に並ぶまでに危害が排除されており、鶏卵ではパッキングの際に腐り玉を除去し、生乳も低温輸送し細菌の増殖を抑え、加熱殺菌をして供給し、食肉も検査の際食用不適部位の除去がなされており、消費者にダイレクトにわたると言うことはありません。

ですから、HACCPの考え方と言われても除去できるシステムが確立されているので、意味を持たないと感じてしまうのでしょう。
よく言われる安全であり、安心できる畜産物を作るためにという理由でこの認証を推奨するような話題があるからでしょうか。
そもそも安全性が確立されており、消費者への事故はないようなシステムにはなっています。

では、それでいいのかという点になりますが、私たちは製造側の意識の高低が生産物への信頼に大きく変わるということをお話ししています。

つまり、採卵鶏では夏は暑いから鶏舎も暑い、だから鶏卵の出荷が遅れて品質が劣化しても自然相手であり免責されるべきという意識では、いくらリスクが排除できるからいいのだでは理由になりません。

最近は鶏卵を自社パッキングして店舗に納める農場も多いと思います。
これは選別包装洗浄作業を他社GPセンターが手数料をもらって行っていたことを自社がするので、人件費で済むというコストを意識した手法でもあります。
当然腐り玉は検卵の際にはじくことは必須ですが、そのはじく技量がない場合まれに流通することもあります。

流通すると消費者に渡ります。

当然卵かけご飯にしようと、割ると黒い黄身が出てくるでは、もうアウトです。
消費者は農場に苦情は言いません。
購入した店舗に苦情を言います。

店側も品質維持できない商品を置くことを嫌がりますので、多くは県に対し通報し回収の必要性を申告します。
今は消費者庁に申告することが義務となりますので、以前と違い店舗と近隣だけしかその不手際を知られることはありません。

全国に告知されます。

つまりこの農場で生産した鶏卵に品質劣化の商品が○○スーパーで○○パック数納品販売され回収となりましたと全国の人が知ることが出来ます。

ですから、近隣しか知らないから時間が経過すればみんな知らないという昭和の思い出をいつまでも信じていては農場運営も古いことにもなり、その程度の農場の畜産物は本当に安心なのでしょうか。

ですから農場HACCPは、農場運営の不手際を未然に防ぐことにも期待できるシステムでもあります。

これは、費用対効果の話ではありません。

これをしたからいくら儲けたという内容ではなく、これをしなかったことで事故を起こしたとなれば格段の信用の損失になり、継続した取引も難しくなることもあります。

では、この先も取引を安泰にしていくには、安全な畜産物を作るという意識がないと今のような事故もありえますから一瞬で信用を崩すことになることも十分にあります。

そう考えますと、私たちが生産活動をしていることは、昔からの手法であり過去から問題ないからこの先も問題ないという前提で成り立っていると思います。
でも詳細に考えると、その間に作業する方が入れ替わりその方法が正しく伝承されているとは限りません。

ですから危害を意識したときその方法を見直し、危害を排除するという意識がなければ、恐らく「うちは事故は出さない」「だって昔から事故を起こしていないし起こす気がしない」というでしょう。

でも昔は起こしてないは過去を振り返りしているだけで思い出話をしているだけです。

大事なのは今日、明日も出さないという意識とシステムです。

では、そのためには何ができるのでしょうか。
確かに高確率で明日も事故は起きないでしょう。
先ほどのように、事故は起きにくいのが畜産物の今の状況です。

その事故とは、消費者(又は店舗)が認知したときを言いますので、そこまで行くこと自体がかなりレアであり、発生したときは再起は難しいということで、起きにくいから安全という論理もそもそも危険です。
安全は努力の積み重ねとも言います。

そして安全はお金を出して買うものではなく、その意識を持ち続けることが要になります。

でもそのシステムを維持することはお金を払うことにはなります。
でも自己流のシステムではありません。
自己流は、自分を律してシステムを作ることもあるでしょうが、多くは自己に都合が良いことを前提に作ります。
だって何も知らない外野がとやかく言うことが意味がないと考えるからです。

でも意味がありそのための目的が認証は必要としているのです。

でも何も知らない外野が認証を作りそれに基づいた審査をしているので、ますます無意味と感じてしまうのでしょう。

ある研修に農場HACCP認証についての講演がありました。
その際の質疑応答に「鶏卵の滞留卵という定義は本当に必要なのか?」
「1日滞留しても腐らないし、そこまでうるさくする理由が分からない」と言います。

確かにそうでしょう。

でも卵はどれくらい保存できるのでしょうか。
ある調査では、10℃程度で保存すれば40日から品質が大きく変わらず保存はできます。
では鶏舎が30℃からある夏はどれくらいですかとなれば、大体5日、6日と短くなります。

この夏のように気温35℃やそれ以上となると鶏舎も格段に高くなります。

35℃では数日が品質保持の限界ともされます。
そうなるといかに早くできれば滞留させないほうが安全性が高いことがわかりますが、わからない農場は自然相手なのだから仕方ない暑いは当たり前としか考えられません。

だから滞留させないための方法までは考えません。
だって余計な作業になり作業員の残業まで至るならばコストが上昇するだけ。昔から問題なのだから対策はいらない。

こうなるでしょう。

そして目に見える滞留卵はまだいいでしょうが、いつから滞留しているのかわからないという鶏卵も鶏舎にはあります。

毎日生んでくれる鶏卵には、鶏は日付を付けて産んではくれません。

同じ白色(又は赤色)の卵がそこかしこに生まれ集卵ベルトに乗ります。
そしてひっかかり滞留する。
又はゲージの内部で勾配が悪いのでいつまでも滞留する。

でも気づかないから、知らないでは済まないですし少し無責任です。

滞留する環境があるならば、そこは何であれ改善しなければならないのです。

でも腐らないから意味がないと片付けること自体、危害として認識していないし昔からならないから明日もならないと信じている典型的な農場なのだろうと感じます。

鶏卵は品質が変わると消費者にダイレクトに届けやすくクレームに至りやすい食品です。

腐り玉、血玉、傷玉どれが問題ないですか、と尋ねると、腐り玉以外問題ないと答えるでしょう。
でも正解は全てダメです。

血玉は鶏のストレスから産出されると言います。
自然相手だからやむを得ないでは少し消費者を甘く見ています。
なんのための検卵ですか。

自社で行っているのであれば、自社が責任を持って検卵しているわけです。
他社が行って報酬を支払っているのであれば、他社能力が低いだけですが、自社では同じことが言えますか。
恐らく自然相手なので免責になるというでしょう。

その違いは何ですか。

恐らく自社を過大評価している危害要因を知らない農場でしょう。

農場HACCP認証は確かに現場を知る方がよく考え構築した基準とは言えません。
採卵鶏1つとってもそれは感じます。
でも、安全に生産活動をする場合、記録があるから事故を防ぐという意味ではなく、記録から事故が起こった時に確認し次の手を打つ方法を構築する材料になります。
事故はなくても、そうしないための方策を検討するときに記録はとても役立ちます。

この意識です。

そして事故を起こさないように従事者に教育して知るという気づきを与えるということ、第三者による検証をして問題点を見つけて解決きっかけを作ると言うこと。

その他にも、作業方法を統一し同じ作業を作業員違えてもできるという基準作り、そしてその作業の危害を予め予測して防ぐ方法を考えておくというシステム。

どれも今まで事故がない農場は昔から率先した手法ではありません。

だからこそ回りくどい、何も知らないものが作る意味がない基準と捉えてしまいます。
安全は昔からの技法を何も考えず繰り返ししていれば安全が維持できるとは限りません。
人が変わり、環境が変わり、鶏舎のシステムも変わる。

時代とともに変わっていくのです。

だからこそ、安全を意識してそのための方法の1つに認証という基準を守る農場があるのです。
それは費用対効果から見ても、確かに割高又は無意味と評価されるかもしれません。
でも大事なのは農場の信頼は安全な畜産物があるから守られているというところまで理解できる人も多くはありません。

やはり、昨日まで安全だから明日も安全というかもしれない安全神話にすがるだけなのかもしれません。

本当にそれで安全ですか。
鳥インフルエンザが心配される時期になりつつある8月。

去年と同じ方法で今年も乗り越えるだけで何とかなりますか。
昨年発生した農場も同じ考えだったと思います。
でもうちは違うと言っているのですが、何が違うのでしょうか。

それは「意識」「安全神話」「努力の繰り返し」なのでしょうか。

少し視野を変えてみてください。
あと何が足りないのですか。

厚生労働省の中央最低賃金審議会は28日令和5年度の最低賃金額を全国平均で1002円とすることとしました。

これにより全国4区分の賃金地域を3地域に改編し、都市部のA地域、中間都市のB地域、地方部のC地域と改めています。

さて、今回から上昇する予定額は
A地域は41円増し
B地域は40円増し
C地域は39円増し
とそれぞれの地域ごとに40円を中心に上下1円の設定を予定しています。

まだ正式決定したものではありません。

これから、各地域での上昇見込み額について検討が行われますのでこの金額を下回るという事例は見たことはありませんが、この見込み以上に設定することを地域が決定することもありますので、農場で雇用される従事者の方が、今より最低で39円、最大41円まで加算しても今の時給換算で問題がないか、今のうちに試算しておくことをお勧めします。

多くは10月の早い段階で施行されますので、遅くとも10月下旬に支払う給与には反映しておく必要があります。

最近は、機械計算で総労働時間だけ入力すると支払う税込額を計算するソフトでそのまま点検せず支払い後で問題になるという事例もあるようです。

過大に支払うから細かく計算するが、過少はザルでいいでは、少し農場責任者としては残念なところです。

そして畜産業ではあまり聞くことはなくなりましたが、時給1000円では経営ができないという産業やお店があるとも言われます。

特に飲食店は解雇を強く進めた産業でもあり人を急募してもなかなか集まりません。
その要因に、もともと好待遇ではないことで、今更急募されても他の産業のほうが働きやすい、時給を上げても閑散期では希望時間まで就労できないこともあり、月の収入が不安定であり、あまり期待する業種ではないという声も聞きます。

つまり、他産業も人を求めているのであり好待遇であれば人が集まるわけですがその条件を提示できないという深刻な状況であるということを知っておくべきです。

畜産業でも最低時給+1円単位の端数切り上げ程度の募集で人が集まると考えているところもありますが、この先は965円なら970円といったものではありません。

965円で39円増しとなれば1004円となりますから端数程度とはいきません。

1004円なら他は1010円、1050円、1100円というところも出てきます。
そうなると、うちは1004円を死守するでは中々人は集まりません。

そうなると経営は厳しいから人減らしをする、退職者の後の補充をしないといったコスト増を防ぐというところも出てくるかもしれません。
でもよく考えてみると、今までの賃金で人が雇用できたのはその賃金が高いからでしょうか。

そうではなく、職を探した結果そうなった程度であり賃金が高いからではなく、近所である、仕事時間が希望通りであるといった要素であるはずです。
つまり他に希望条件に合致したときは乗り換える可能性があるということを知っておくと、これからの時給上昇は高い物と言っていられないということです。

今までの時給例えば960円は本当に高額だったのでしょうか、1004円になったら高給取りでしょうか。

労働者側はそうは見ていません。

雇用者側は本音を言えばあまり高くない賃金で、長い時間を働いてもらい、休日も土日は必ず勤務可能であるという希望があるはずです。
そうなれば、年末までいわゆる年収の壁も到達せず、労働時間調整も発生せず、そして賃金も最大年間100万円まで見ておけば良いといった所でしょう。
そんな視点はないという声もあるでしょう。

でも賃金は最低時給の端数加算はなぜそのようにしているのでしょうか。
そもそもそんな端数加算はしていないという潔い農場もあるでしょう。

その根底はいかに安く、退職しても補充が見込めるから高額で雇用する必要がないというのが理由と思います。

その分を社員や経営者に還元したいと言うでしょうし、結果はそうなっているはずです。

農場を見てみると、しっかり働いているのは社員という日本人であるという視野しかない経営者もいます。

でも筆者は農場を多くみている立場から見ると必ずしもそうではないという感じです。

確かに社員は1日の就業時間内を働きます。
1日8時間というところもあるでしょう。
でも時間給の人は集卵のみをするからせいぜい5時間までといった所もあるかもしれません。

その3時間多く働くから過剰に多く支払うというのも、どうなのでしょうか。

社員とされる日本人以外に外国人技能実習生もいる農場も多いと思います。
その方に主たる仕事を振り分け、日本人社員は何をしているのか。

そして高給取りと揶揄される幹部社員は日本人社員より更に多くの賃金を支払います。
ある農場では2人分の社員給与を1名の幹部社員に振り分けます。

当然財源が安定していなければ話になりませんが、畜産物は相場値引き取りが基本です。
鶏卵でも固定価格はありますが生涯一定ということはありません。

つまりどこかで、相場の下降がある時に収入の減少という影響を受けることになります。
でも人件費は安易に切り下げることはできません。
法令に違反するからです。

でも厳しいとなった時、経営者はどうするのでしょうか。
多くは間違いなく、欠員補充をしないということです。
雇用はコストになり支払いという出血を止める必要があるからです。
このような段階まで至る時多くは経営コンサルに相談して同じような回答をもらうはずです。

そして、既存労働者に対し次に行う削減に、諸手当の見直し又は廃止、残業時間の許可制という基本給を触らない法令違反にならない対策を次々打ち出すはずです。
でも手取りは確実に引き下げるという出血を止める方法を推進していきます。

この時点で更に人の離職が進み、限界人数に至ることもあるでしょう。

多くはこのようなところまで落ちぶれたときには廃業を選択するのですが、農場の多くは先代が築いた大切な名前を消すことはできない。
だから今は苦しいが踏ん張ってほしいと泣き落としをするはずです。
でもそうなった農場の多くは元には戻りません。

そのまま低空飛行してかろうじて延命してるだけで、返り咲きすることは見たことはありません。
返り咲いたと感じる時は、高相場に当たった年だけで、通常では赤字が、餌代が、人件費が、来月の支払いがと出費の重さを毎日痛感し、相場高の時にお酒を深く飲むように忘れ、また現実という年に戻り繰り返していき、延命しているということすら忘れていき毎日を過ごしていくというのが実情になるでしょう。

でも先代が、名前が、地元の期待がと理由をつけて細々延命していきます。
でも経験から返り咲くことはありません。
こうなっても、もがく姿は大変苦しいと思います。

では、どう考えるべきでしょうか。

人件費はコストであるという視点で見ると、どこまでいってもコストしか見ることはできません。
だから1円でも削減したいし無駄な物に支払いをしたくない。
でも人が働くことで家畜が成長し収入になる。
歩留まりの良い畜産物を作る方策を見つけ、実行し収益を上げるわけです。

ですから、コストと考えると一番安いのは人を雇用せず経営者のみで農場を切り盛りすべきです。
でも大変だから人を雇用するはずです。

この視点です。

では、農場にいる雇用者は皆さん全力で取り組みをしているのでしょうか。
高給取りの人ほど作業と言う力ではなく、頭を使う知力を使って何か貢献しているのでしょうか。
家畜や畜産物は餌を与えれば売り物になるということはありません。

確かに売れるでしょうが、歩留まり、等級といった収入ランクがあるはずです。

その高ランクにどのように生産を合わせていくのかという知力があり、そのために体力を使っているのでしょうか。
そもそも作業をする従事者と知力を使う管理者という明確な仕事分担があり賃金に差をつけて、期待値を高め企業に還元する。
その区分すらない農場もあります。
当然作業をする従事者に管理者も混ざり、ただ高い人材しかないという経営者の見立ての悪さもあり、これを改善せず賃金が高い、労働に見合う給与水準ではないと嘆いているところもありますし、そもそも気づいていないが月のトータル収支はなぜかマイナスになると首をかしげているだけのところも見ます。

一般的に人が多くなるほど、作業場率が下がります。
それは1人で出来る仕事を2人で行う、3人で行うという作業ムラが発生してしまうからです。
そのムラは、新規作業が増えない限り人の増加と比例してムラ無駄が生まれて人件費は今日お話し額必要です。

それはやむを得ない農場コストでしょうか。

時給が見直しされるとき、賢い農場ほどそのリターンのために出来ることを考えてその方策を作り実行します。
それは、削減よりも生産上昇を意識しているのです。

でもそのための知力がない時、多くは無駄なことに1日を費やし無駄を作りムラを作り「1日頑張った」と残念な農場に至ります。
でも生産量は変わらず人件費は上昇し、これを高騰と呼びます。

でも違うのです。

人は考えて動くことで新しい知見が生まれ、それをイノベーションと呼び新しい時代に合う製品を作ります。
そのための人材はコストでしょうか。

そう考えられないのであれば、コスト増だから人件費を上げることは経営にとても厳しいだけで、恐らく何も変わらずコスト増という出費だけを見て何かできる機会を見いだせないでしょう。

一つ残念な話をしておきましょう。
その農場は人件費を上げてとても苦労をしています。
そのため人件費を賄うためにも、作業者に効率化を求めたそうです。
その効率化のため何ができますか、と経営幹部に尋ねたところ、知識がないため「何が問題なのかわからない」「家畜が悪いだけだから、そうしないようにしよう」と言いました。

とても残念なことです。

その背景には家畜を飼育するという基本がなく、それがなくても年数が経過でき経営幹部になれたという残念な人事異動をしていた経営者の無知がありました。
今の飼育環境も自動化が進んだことで機械が家畜を育てると錯覚してしまうようになり、飼養管理技術はいらないという誤認をする農場も多くなりました。

作業者は畜糞を片付けすればよい、他は機械が自動で行うから不要という程度です。

そして家畜の経済的な改良も進み以前より歩留まり、等級上昇も期待できるようになっているのに、以前と同じで多少は良くなったが、他は以前よりだいぶ良くなったという違いに気づけない。

当然収入に差が生まれますが、その違いは横並びではないため気づくことはありません。
でもある日よその農場よりなんか少ない実入りのようだ。その違いは何だろうと気づきますが、その答えを出す人材はいません。
だって人材は畜糞を片つければよいという程度しか育てていないからです。

そしてコストは上昇し、数年に1回の好景気で収入は何とか安定していたのですが、飼料高騰、畜産低価格で実入りが悪くなり台所事情が悪くなりどうしようかと経営者が本気で悩み解決策を模索していた時の話です。

でもそれを統括する人材は気づく力もなく、解決策もなく、課題が見つけられない。
それで人件費をたくさん上げていて本当に良かったのでしょうか。

そしてこれから上昇する人件費上昇は本当に有意義なのでしょうか。

皆さんは人件費上昇はコストですか。
それともこれを機会に飛躍するためのスタートという意味でとらえることが出来ますか。

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